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除菌し過ぎはダメ!? 医師が懸念するアレルギー発症リスクの理由とその対策は?

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アルコール消毒する人

長引くパンデミックの影響から、新型コロナ以外のさまざまな病気のリスクが高まっているといわれます。メンタルヘルスや肥満などもそうですが、今後の急増が懸念されているのが、過度な除菌など衛生環境によるアレルギー疾患です。今回は、衛生環境とアレルギーの関連やアレルギーリスクを抑える方法について、赤坂ファミリークリニック院長、伊藤明子先生に教えていただきました。

監修 : 伊藤 明子

小児科医。赤坂ファミリークリニック院長。NPO 法人 Healthy Children, Healthy Lives 代表理事。東京大学医学部附属病院小児科医師。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策客員研究員。

Contents 目次

過度な除菌がアレルギーのリスクを高める!?

手洗い

小児期からの疾患予防を目的にトータルヘルスプロモーションの推進活動を行っている伊藤先生。

「感染対策として行ってきた手指の消毒やソーシャルディスタンスによって、菌やウイルスをできるだけ排除しようとした生活が続くと、免疫への影響によりアレルギーのリスクが上がる可能性が指摘されています」と話します。

よく知られるアレルギー疾患には、花粉症や鼻炎、ぜん息やアトピーなどがあります。新型コロナ以前から、近年の過度な衛生や抗生物質の多用によるアレルギーリスクが懸念されており、さらにここ数年のパンデミックが追い討ちをかけている状況。先生によると、流水や石けんでの手洗いがそれほど影響するわけではなく、徹底した消毒液の多用などがアレルギーリスクや免疫に影響するとのことです。

アレルギー発症の考え方のベースとなっているのは、衛生仮説という研究で、これは免疫細胞のバランスが崩れて、アレルギー体質になるというもの。
免疫細胞であるT細胞はヘルパーT細胞として働くなかでTh1とTh2に分化。Th1は細菌やウイルスなど感染に関連して働く細胞で、Th2はアレルギーに関係しています。この2つの細胞はシーソーのように拮抗していて、細菌やウイルスが少ない衛生的な環境にいるとTh1が抑制され、Th2が優位になることでアレルギー体質になるというとらえ方です。

アレルギーリスクを抑える食生活とは?

腸のイラストと野菜

こうしたなか、注目されているのが腸内細菌です。免疫バランスの調整に大きくかかわっているといわれているためです。

「腸管にはヒトの免疫細胞の約7割が存在しているといわれています。腸内には多様な微生物が存在していますが、この多様性が低いほど免疫バランスが悪いという報告が複数あります。腸内には1000種類の細菌が存在し、腸内細菌の多様性はアレルギー予防に重要な条件のひとつですが、そのなかでも特に注目されているのが、酪酸菌など短鎖脂肪酸を産生する菌です。酪酸菌は腸内で酪酸を作り出し、その結果過剰な免疫を抑制する制御性T細胞を増やすことを示唆する研究成果が報告※されています」(※Nature 10.1038/nature12721. 2013)

アレルギー抑制には腸内細菌の多様性が大切で、そのなかでも短鎖脂肪酸がカギとなります。そのうえで伊藤先生は腸内細菌の多様性を獲得するには、「短鎖脂肪酸を産生する発酵性食物繊維の摂取が重要」だと話します。

「腸内で発酵しやすい食物繊維を発酵性食物繊維といい、これを多く含む食品を摂取することで腸内細菌の多様性が増し、先ほどの酪酸菌を含む短鎖脂肪酸が増えることがわかっています。日本人の食物繊維の平均摂取量は1日15gですが、推奨されている摂取基準は18 g。足りない食物繊維を発酵性食物繊維で補うには穀類がオススメです。発酵性食物繊維には、β-グルカン、ペクチン、イヌリン、オリゴフルクトースなどがありますが、代表的な存在は、小麦ブラン(小麦ふすま)や小麦全粒粉に含まれるアラビノキシランです。腸の奥で発酵し、短鎖脂肪酸の産生を行うことがわかっています」

そのほか発酵性食物繊維を豊富に含む食品には、押麦、大麦、ブロッコリー、にんじん、キウイフルーツ、ゆで大豆、蒸し大豆、きな粉、調整豆乳、ごぼう、チコリ、玉ねぎ、小麦全粒粉、小麦ブランシリアル、玄米ごはん(炊いたもの)、発芽玄米などが挙げられます。

発酵性食物繊維が豊富! 伊藤先生考案レシピ

発酵性食物繊維を豊富にとれる伊藤先生考案のレシピを2つご紹介しましょう。

具だくさん食物繊維たっぷり豚汁

具だくさん食物繊維たっぷり豚汁

【材料 2人分】(分量はお好みで)
具材……<豚ロース肉、ごぼう、さといも、にんじん、きのこ(しいたけ、しめじ) 、こんにゃく、薄揚げ、絹ごし豆腐、ねぎ>
みそ
かつおだし
オリーブオイル……大さじ1

【作り方】
(1)豚肉、野菜をひと口大に切る。
(2)鍋を中火で熱しオリーブオイルを引き、豚肉を加熱して、野菜、きのこ、こんにゃく、薄上げも入れる。
(3)水 600 ml(分量外)を加え、だしを入れて15 分から 20 分煮る。
(4)みそを溶いて、さいの目切りにした豆腐とねぎを入れる。

発酵性食物繊維である根菜類をたっぷりと、発酵食品の代表でもあるみそとともに食べられる、これからの季節には重宝する豚汁。一度作ったら3日ほどはもつそう。(毎日しっかり加熱し、冷まして、気温が25℃以上の暑い日は冷蔵庫保管)

オートミールとシーチキンボール

オートミールとシーチキンボール

【材料 2人分】
オートミール……30g (大さじ5)
シーチキン……70g (小缶1個)
卵……1個
玉ねぎ(大)……1/4 個 (※小の場合は1/2個)
黒こしょう……適宜
オリーブオイル……大さじ1

【作り方】
(1)ボウルに卵を割り入れてほぐす。
(2)オートミールとシーチキンを入れる。
(3)みじん切りにした玉ねぎもボウルに入れ、よくこねてまぜて5分ほどおく。
(4)こしょうをふる。
(5)ボウルの具をひと口大に丸める。
(6)フライパンを中火に熱してオリーブオイルを引いて、(5)を焼く。
(7)お好みのソースでいただく。

「オートミールはβグルカンを含む発酵性食物繊維。シーチキンを加えて、ミートボール風に仕上げました。もちもちした食感でとても簡単でおやつにも最適です」

発酵性食物繊維は腸内細菌の多様性を増やし、アレルギーリスクを抑えてくれる作用もあることがわかりました。食事のなかで意識して摂取していきたいですね。

文/庄司真紀

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