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24歳男性・外資系金融。条件はいいけど仕事が面白くない…。アルバイトでも希望の職種に転職するか迷っています。~私、ひとりでいてもイイですか?(37)~

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24歳男性・外資系金融。条件はいいけど仕事が面白くない…。アルバイトでも希望の職種に転職するか迷っています。~私、ひとりでいてもイイですか?(37)~

本企画は、ひとりでいるのが好きな人も、ひとりでいるのが寂しいと感じる人も、“おひとりさま生活”について思いのたけを語るインタビュー連載です。インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さん。
今回登場するのは、外資系金融に勤める24歳の男性。現在勤務する会社は大手で、待遇面は悪くはないけれど、アルバイトでも好きな職種に転職するかどうか迷い中なのだとか。「好きな仕事ができるならばアフターファイブなんて要りません」という20代のリアルに大宮さんが迫ります。

Writer : 大宮冬洋 (おおみや・とうよう) (フリーライター)

フリーライター。恋愛・結婚に関するインタビュー記事を得意とし、最近は「お見合いおじさん活動」も勝手に遂行中。35歳以上で結婚した「晩婚さん」を160人以上取材した実績を持つ。2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。近著に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)がある。

Contents 目次

親戚のコネばかり使おうと思いながらの就職活動。本当にひどい人間でした

24歳の自分に戻りたいと思ったことはあるだろうか。僕は1年間限定ならば戻りたい。あの頃にやってしまった数々の失敗や無礼を回避したいし、もっと上手に立ち回っておいしい思いをしたい気持ちもある。

でも、それでは「44歳の世間知を持った24歳」に過ぎない。大失敗をして少しは成長する機会を巧妙に避けてもいい人生は送れないだろう。
若さはバカさだ、と誰かが言っていた。世間知らずで生意気で試行錯誤や後悔をくり返す20代があるから、少しずつでも大人になれるのかもしれない。

外資系金融機関で働く藤井雅也さん(仮名、24歳)は就職活動あたりから世の中をなめていたと明かす。志望した会社の社長面接で「メチャクチャに叱られた」苦い思い出がある。
「親戚のコネばかり使おうと思っていて準備もせずにふざけたことばかり言っていました。本当にどうしようもない人間でしたね。当然、その会社は落とされて、紹介してくださった人に土下座して謝りました」

一生懸命にやった末の結果ではなく、手抜きや傲慢で招いた失敗。恥ずかしいし、自己嫌悪も募るし、長く尾を引いて後悔する。でも、それでいいじゃないか。若いのだから。以下、反省しながらもやっぱりちょっぴり生意気な藤井さんの話を聞いてほしい。

***藤井雅也さん(仮名、24歳)の話***

アクセサリー感覚で彼氏を選ぶ女性と同じだった僕。自分にない何かを求めていた

神奈川県の住宅地で育ちました。小中は公立で、高校から私立です。世間一般から見たら恵まれた中流家庭かもしれませんが、親戚の中では庶民的だと思います。母はいわゆる名家の出身でオーナー企業の経営者などが親戚にいます。父はメディア関係の個人事業主です。

学生の頃は、自分にあるようでない何かを求めていた気がします。つまりステータスです。ツテがあったので、芸能人の卵とか医学部生とか大使館員の娘などとお付き合いしてきました。アクセサリー感覚で彼氏を選ぶ女性がいますよね。それと同じです。自分に自信がなかったのだと思います。

テレビ局の記者だった祖父を尊敬しているので、就職活動は大手マスコミを何社か受けました。でも、真面目にやらなかったので箸にも棒にも掛からなかったです。大学を休学してヨーロッパ旅行をしたり、とある国のデモに参加したりしていました。

就職した今でも旅行が好きです。コロナで海外旅行はできないので、行けるときに国内を回っています。僕は大学で歴史を学びました。男鹿半島をバスで回って柳田国男的な世界観を感じたり、会津若松で白虎隊の悲劇を振り返ったり。逆に、「楽しまなきゃいけない」的な遊園地みたいなところは嫌いです。

新卒っぽくニコニコしながら会いに行くとお客さん受けはメチャクチャいい

卒業が1年遅れたので、今の会社での勤務経験はまだ1年と数か月です。年収は400万円程度。住宅手当などはありません。転職をくり返して収入を上げていく世界です。

僕はスカしているように見られるらしくて上司から注意されることがあります。でも、数字は上げているほうです。この仕事は人間関係が中心で、かつオジサンが仕切っています。新卒っぽくニコニコしながら会いに行く僕はお客さん受けがメチャクチャいいんです。
みんなゴルフをやっていますが、僕はやりません。でも、歴史や昔のアニメ、マンガの話は得意です。先日は50代のオジサンと楳図かずおの話で盛り上がりました。

最近はフルリモートなのでほとんど出社していません。やるべき作業は午前中に終えてしまって午後は散歩したりしています。僕は親戚つながりで都内の一等地を仕切っているようなオジサンとも仲がいいので、遊びに伺ってご先祖の話などを聞きながら情報をもらってきたりしています。それをストックしておくと会社でも重宝がられますから。

今の会社は大手に分類されるので、日系のファンドなどから早くも引き抜きを提示されています。転職したら年収は500万円から800万円ほどに上がるみたいです。でも、迷っています。この仕事はこなせちゃいますけど、もともと金融に興味がないのでやっていてつまらないからです。

春先から付き合い始めた彼女と半同棲中。かわいがる対象が欲しい

今年の春から付き合い始めた彼女がいます。僕の1歳下の日本語ペラペラな韓国人で、今では僕の家に入り浸っています。仕事は辞めたいそうです。そうすると在留ビザがなくなってしまいます。2人で困っているところですが、この大変な状況がコンテンツとして面白いと僕は密かに思っています。

出会いはマッチングアプリです。女優ののんに似ている外見に惹かれたのは事実ですが、以前のようなアクセサリー感覚はなくなりました。一緒にいて面白いかどうかが大事です。日中は仕事があってそれなりに疲れるので、ひとり暮らしの家にホッとできる相手がいるのは嬉しいです。
実家では3歳下の弟をメチャクチャかわいがっていたし、ペットも欲しいなと思っていました。僕はかわいがる対象が欲しいのかもしれません。
結婚は正直言ってまだ全然わかりません。でも、帰れるホームみたいな場所をいずれは築きたいです。そういう場所があれば伸び伸びと仕事できる気がします。

1日の大半を過ごす「仕事」を楽しみたい。アフターファイブなんて要りません

家族仲はいいほうですが、今は実家に顔を出したくありません。来月か再来月には今の会社を辞めて誘われているファンドに行くか、改めてマスコミを目指すかを決めます。家族からあれこれ詮索されたくないんです。祖父の元部下の方がテレビ関係で社長さんをしていて、某テレビ局で記者の丁稚奉公(でっちぼうこう)の口があると教えてくれました。アルバイトからのスタートです。

でも、その社長さんは僕の転職には反対だそうです。「いい会社で働いているのに、今から記者なんてやってどうするの。これからの時代は先細りの業界だし、正社員になれる保証もない」と言われました。
親心で言ってくれているのはわかります。でも、僕は1日の大半である仕事を楽しみたいんです。今の業務は面白くないし、出会う人も限られています。大宮さんもそうですが、こうやって多様な年齢やバックボーンの人たちに関わりながら、ひとつの事象を丹念に追うことができますよね。すごくうらやましいです。

好きな仕事ができるならばアフターファイブなんて要りません。だから迷います。こんなときに親から仕事のことをあれこれ聞かれたくありません。僕はきっとひねくれているんです…。

就職活動の際に使った証明写真。「そろそろ25歳になりますが、精神年齢は高校生のままです」(本人提供)

 

***大宮より藤井さんへ***

先細りのメディア業界? 組織人とフリーランサーでは働き方も先行きも異なります

転職は大いに迷うところですよね。20代のうちはトライアル&エラーでいいのだと思います。40代になってから「仕事がつまらない。就職先選びを間違えたかも」と気づくよりは絶対にいいですから。

ラクではない仕事の口を教えてくれて、なおかつ「親心」で転職に反対してくれる先達が周囲にいるなんて幸せなことですね。藤井さんのおじいさんは仕事ができるだけではなくて人格者でもあるのでしょう。
僕も藤井さんにはなんだかご縁というか共通点(生意気なところ(笑))を感じるので、別の角度で助言をさせてください。同じメディア関係者でも、大きな看板に守られた組織人と僕たちのようなフリーランサーでは働き方も暮らし方も異なる、ということです。

前者は基本的にはその会社の一員であるというステータスが重要です。もちろん、優秀な人もたくさんいますが、所属する会社と命運を共にせざるを得ません。より好条件の会社に転職できたりする人はごく一部です。藤井さんのおじいさんやその部下の方々は組織の中でも成功された方々なのでしょう。
後者の僕たちは違います。メディア企業から仕事をもらって働くことが大半ですが(この連載もそのひとつです)。どの組織からも守ってはもらえません。収入も低めかつ極めて不安定です。年齢を重ねてもアルバイトしている人も少なくありません。職人の要素はありつつも、基本的には芸能人と同じような働き方です。

だからこそ、「業界の先細り」とは距離を置くことができます。今まで培った技術や人脈を別のところに生かすのです。例えば、縁のある企業の広報仕事を請け負いながら、ジャーナリストとしての活動を続けられるかもしれません。
また、会社からの異動や転勤の命令はないので、共働きで家庭生活を維持することも比較的容易です。今は男性だけが稼いで家族を養うような時代ではなくなりました。ちなみに僕の妻は愛知県内で家業を継いでいて僕よりは高収入です。

高いステータスや収入がなくても、人は工夫しながら健康的に働いて暮らしていくことができる――。これが僕の実感です。だから、藤井さんもやりたいことをやってみればいいのだと思います。
結果として転職してもしなくてもいいので、落ち着いたらご連絡下さい。僕が実家のように親しくしているアジア食堂が都内にあるのでご馳走しますよ!

大宮冬洋さんによるインタビュー連載「私、ひとりでいてもイイですか?」は毎週日曜21時更新! 次回は8月1日(日)21時です。お楽しみに!

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