
40代になると、そろそろ気になるのが更年期です。女性ホルモンが急激に減少することで、気になる症状を経験する人もいます。これから更年期を迎えるプレ更年期世代が知っておきたい「更年期症状のホント」について、産婦人科医でイーク表参道副院長の高尾美穂先生に聞きました。
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自律神経の乱れが、更年期症状の原因!?
更年期とは、閉経をはさんで前後5年間の合計10年間のこと。日本女性の閉経年齢は平均50.5歳。つまり、45~55歳に更年期を迎える人が多いということになります。
更年期のわかりやすいサインは月経の変化です。毎月あった月経が飛び飛びになったり、周期が短くなったりします。それと同時に、更年期の女性の6割は、体にさまざまな不調――いわゆる更年期症状を経験するといいます。更年期症状の主な原因は、エストロゲンの急減による自律神経の乱れです。
今回は、自律神経のアンバランスによる更年期症状について、みていきます。主な症状は、次の通りです。
■主な更年期症状
<自律神経の乱れによる症状>
●のぼせ、ほてり、多量の発汗(ホットフラッシュ)
●めまい、耳鳴り
●動悸、胸がしめつけられるような感じ
●便秘、お腹の張り
●頭痛など
老化した卵巣が指令に応えないことで、脳がパニックに!
なぜ、更年期には自律神経の乱れが起るのでしょうか。まず覚えておきたいのは、更年期のさまざまな症状は、女性ホルモンの中でもエストロゲンの影響が大きいということです。
「エストロゲンは、脳から指令を受けて卵巣から分泌されますが、卵巣の機能が低下してくると、脳から「エストロゲンを出せ」という指令が出ても、それに応えてエストロゲンを分泌できるときと、できないときが出てきます。更年期に、エストロゲンの分泌量が下降線をたどりながらも乱高下しているのはそのためです。エストロゲンを出すように卵巣に指令を出している脳の視床下部は、この指令と応答のアンバランスに混乱してしまいます。視床下部では自律神経をコントロールしているため、呼吸や心拍、体温調節、代謝といった、体を微調整する働きも影響を受け、のぼせ・ほてり・多汗、動悸、めまいなどのさまざまな不調が出てくるのです」
月経が小さな嵐なら、更年期は大きな嵐!?
女性ホルモンのアップダウンは更年期にのみ経験するものではなく、私たちはすでに月経周期の中で経験しています。毎月のように体調の変化を経験している人もいるかもしれません。
「エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が下がり始める月経前に、便秘、乳房の張り、イライラ、うつうつなど心身に変調を感じるPMSの症状が出る人もいることでしょう。月経が小さな嵐だとすると、更年期は大きな嵐といえばイメージしやすいかもしれません。
そもそもエストロゲンが乱高下する時期は、不調が出やすいのです。産後に不調を感じるのもエストロゲンが急減することが関係しています。更年期という嵐が通り過ぎ、エストロゲンがほとんど分泌されなくなって変化がなくなると、それに振り回されることもなくなり、体調は安定していきます」
プレ更年期世代のつらい症状は、ストレス?
ところで、プレ更年期に自律神経症状が表れたら、更年期のはじまりと考えてもよいのでしょうか。高尾先生は「平均的な更年期の年齢よりも若い女性が、月経は順調なのに更年期に起こりうる自律神経症状がみられた場合は、視床下部への強いストレスで自律神経がうまく働かなくなっていることが考えられます」と話します。
また、「ストレスを抱えたまま更年期に突入すると、更年期症状が出やすくなります。今のうちからストレスコントロールを身につけておきたいですね」と高尾先生はアドバイスします。
一方で、更年期はさまざまな病気が発症しやすい年代です。なかには更年期症状と似た症状が出る病気もあるため、不調をすべて「更年期のせい」と決めつけてしまうのは要注意です。
「たとえば、動悸は甲状腺機能亢進症という病気でも起こります。また、めまいはメニエール病の主な症状です。『更年期かも』と病院にかかったとしても、まず、こうした病気がないかどうか必要な検査が行われ、異常がなければ更年期症状と診断されます」
高尾先生は、「40代は自分の健康を棚卸しする時期」と話し、健康診断の機会があれば、「飛びついてでも受けて」とアドバイス。会社や自治体などの健康診断を積極的に活用したいですね。
取材・文/海老根 祐子 イラスト/クロカワユカリ