Share
-
お気に入り
34
40代になると、そろそろ気になるのが更年期です。女性ホルモンが急激に減少することで、気になる症状を経験する人もいます。これから更年期を迎えるプレ更年期世代が知っておきたい「更年期症状のホント」について、産婦人科医でイーク表参道副院長の高尾美穂先生に聞きました。
- 監修
- 高尾 美穂
エストロゲンの急減が更年期症状の原因
更年期には、卵巣の機能が低下することで、エストロゲンという女性ホルモンの分泌が急激に減少します。脳の視床下部がエストロゲンを出すように指令を出しますが、だんだんと機能が下がってきている卵巣は、それに応えられなくなるからです。指令と応答のアンバランスに視床下部がパニックを起こしてしまい、視床下部の大切な働きのひとつである自律神経もその影響を受けます。そのために、のぼせ・ほてり・多汗、めまい、動悸といった自律神経の働きがうまくいかなくなることによる不調が出ることがあります。これが、いわゆる更年期症状ですが、さらに、「エストロゲンそのものの急減も、更年期症状の原因になります」と高尾先生は話します。
エストロゲンって、どんなホルモン?
そもそも、エストロゲンとはどのようなホルモンなのでしょうか。
「エストロゲンは女性ホルモンのひとつで、月経周期をつくり、妊娠・出産に関わるだけではなく女性の美容と健康も守っています。たとえば、LDLコレステロールを減らして高脂血症を防ぐ、血管をしなやかに保ち、動脈硬化、高血圧などを予防する、脳の機能を維持する、骨を丈夫にするといった働きがあります。さらにはコラーゲンや水分を保持することで、皮膚や粘膜にうるおいをもたらします」
エストロゲンの急減による更年期症状には、次のようなものがあります。
<エストロゲンの急減による不調>
●肌の乾燥、肌あれ
●髪がパサつく、薄毛になる
●ドライアイ、ドライマウス、ドライノーズ
●デリケートゾーンのかゆみ、性交痛
●骨密度や筋力が低下する
●手指のしびれ、関節痛、指のこわばり
●不眠、気分の落ち込み、イライラなど気分の変調
更年期症状の特徴としては、「体のさまざまなところでうるおいがなくなり、乾燥が気になり始めます。美容面では肌の弾力やつやがなくなり、肌あれを起こしやすくなります。また、ドライアイやドライマウスが気になったり、性交痛を感じる人も少なくありません」
閉経後には、血管リスクなどにも意識を向けて
エストロゲンは脳、血管、骨、筋肉、内臓などさまざまな場所で大切な働きをしているため、分泌されなくなっていくことで、全身にも影響が出てきます。
たとえば、気づきやすい症状としては、次のようなものがあります。
●筋力が低下する、それに伴う尿もれ
●手指のしびれ、関節痛
●指のこわばりなど
さらには、「LDLコレステロールが増えることで、高脂血症になりやすくなります。血管がしなやかさを失っていくことで動脈硬化を起こしやすくなり、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。閉経を境に、高血圧になる人も多いです。骨密度も低下するので骨折しやすくなったりもします。
気をつけたいのは、こうした体の内側で起こる変化は、早い段階で自覚しにくいということです。たとえば骨密度の低下は、転んだ拍子に骨折して初めてわかるという具合です。その中でも、比較的わかりやすいのが筋力の低下です。特に女性の場合は尿もれが気になったら、骨盤底筋がゆるんでいるサイン。ほかの筋肉も筋力が落ち始めていると考えていただきたいです」
血圧やLDLコレステロール値など、健康診断を受ければその変化が数値で確認できることもあります。会社や自治体で行われる健康診断を積極的に受けて、定期的に健康の状態をチェックしましょう。
また、LDLコレステロールの増加や動脈硬化、高血圧などは、生活習慣とも密接に関連しているもの。脂肪分や塩分をとり過ぎない食生活や適度な運動も大事です。更年期になってから生活習慣を変えていくのは大変。プレ更年期の今のうちから、病気のリスクになるような習慣を改善していきましょう。
取材・文/海老根 祐子 イラスト/クロカワユカリ
-
-
高尾 美穂
産婦人科医・医学博士・スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック「イーク表参道」副院長。文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバー。長年ヨガを愛好し多くのヨガインストラクターを指導。YouTube「高尾美穂からのリアルボイス」では毎日、女性のお悩みに答え、楽に生きられる考え方を配信している。
Share
Share
-
お気に入り
34