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以前は買い物依存症気味だったと告白する中田さん。洋服は売るほどあるそうです(本人提供)
新型コロナの影響で、人と会う機会がめっきり減った今日。みなさんは、ひとりでいることが気楽でいいと感じますか? それとも寂しいと感じますか? なかには、「今はひとりでいいけど、一生ひとりでいるのはイヤ」なんて人もいるかもしれません。本企画はそんな“おひとりさま”生活を送る独身女性のリアルに迫るインタビュー連載です。
インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さん。今回登場するのは、海外旅行とフィギュアスケート観戦が趣味のキャリアウーマン。コロナの影響で外出を自粛しているうちに、出費が減ったのだとか。そんなアラフォー女性のリアルに迫ります。
出社は月1回だけのテレワーク生活。ストレスが10分の1になりました
コロナ禍がきっかけでテレワークを経験した人は少なくないと思う。僕はフリーライターなので執筆活動はもともと愛知県の自宅か東京都の仕事場でのひとり作業だ。仕事先とのやり取りもメールか電話で済ませることが多い。
今年の春以降はインタビュー取材までオンラインになってしまった。本連載のインタビューも今のところすべてZoomである。お互いに自室にいながら顔を合わせて話が聞けるので効率はいい。雑音が入りにくいので、テーマに集中できるという面もある。
ただし、個人的には寂しい。オンラインでは雑談がしにくいからだ。リアルで打ち合わせや取材をする場合は、相手の都合も聞いてよさそうな飲食店を探すところから始める。
その店のサービスや食事を相手と共有することで、思いがけない方向に話が展開することもある。意気投合した場合は、仕事は早々に終わらせて雑談タイムに突入。純粋に楽しいし、インタビュー時には出てこなかったエピソードを追加で聞けたり、新しい企画案が頭に浮かんだりもする。そういうことはオンラインではできない。
つい愚痴になってしまった。孤独に弱い僕とは真逆の女性がいる。東京都内で大手メーカーの総合職として働いている中田利津子さん(仮名、45歳)だ。コロナ以降、仕事はほぼ完全にテレワーク。月に1回、捺印関係で出社する程度らしい。都内の主要駅にすら行かず、自宅および自宅周辺でひとり暮らしを完結させ、ストレスは10分の1になったと語る。いったいどんな生活と心境になのだろうか。
***中田利津子さん(仮名、45歳)***
年収700万円で貯金はほぼゼロ。年間200万円をフィギュアスケート観戦に費やした日々
コロナへの反応は人それぞれでしたよね。私はどちらかと言えば過剰なほうで、山手線に乗ることにもリスクを感じてしまいます。10年前から働いている勤め先はあまり好きではないので、そのためにリスクを冒したくはありません。今後、出社を求められることがあったら生きるすべを考え直すかもしれません。
大学を卒業してから30代で転職するまではそれなりに仕事に打ち込んでいました。でも、転職先を間違えてしまったように思います。私のバックグラウンドも考慮せずに業務をアサインして、引継ぎをしないような会社です。私は“要らない社員”、ということなのかもしれませんね。ほかに生きるすべがないので働いていますが、別に稼げる方法があるならすぐにでも辞めたいと思っています。
会社自体が好きではないので、片道1時間もかけて満員電車で出社していた頃はつらかったです。ストレス解消のために買い物ばかりしていました。やけ酒することも多かったです(苦笑)。
趣味は海外旅行とフィギュアスケート観戦です。フィギュアスケート観戦は、年4回ぐらいは海外遠征をしていました。フィギュアのチケットは1日分で2万円ぐらいします。場所によってはホテル代も高いので、年間200万円ぐらいかけていました。年収700万円ぐらいですが貯金はほとんどありません。
でも、いまは出社ストレスがなくなり、海外にも行けないので、出費は激減しましたね。洋服は買わないし、メイクもしません。オンライン会議は画面をオフにして出席しています。
ひとり遊びが得意なひとりっ子。他人と一緒にいるとすごく気疲れしてしまう
コロナで他人と会いにくい状況になって、私はひとりでいることが好きなのだと改めて気づきました。ひとりっ子として育ったのでひとり遊びは得意ですし、他人と一緒にいるとすごく気疲れしてしまうんです。
私はすごくわがままです。海外旅行をしたとき、「この小路を歩いてみたいな」と思ったらその通りにしたくなります。でも、連れがいると「この人は行きたくないかも…」と気になります。相手が何を考えているのかも感じ取ってしまうほうなので、疲れてしまうんだと思います。
自分ひとりならば自己責任でどこにでも行けるし、勝手なことができます。ひとり旅で困るのは食事ぐらいでしょうか。いろいろな料理を食べるには大人数のほうがいいので。でも、できればお店に現地集合して現地解散したいです。
出かける予定を立てているときはすごく楽しみでも、前日になって行きたくなくなることはありませんか? 私はあります。身勝手なんですね…。
以前は飲み会や女子会もそれなりにありました。でも、ふと我に返ると「時間の無駄遣いをしているな」と思うことも。コロナでひとりの時間が激増したのは本当にありがたいし、充実しています。
唯一、気を使わずに一緒に過ごせた母の他界。表現できないほどの絶望と不安を感じた
起床は朝5時半ぐらいです。ネットをチェックしたり、あつ森(ネットゲームの『あつまれどうぶつの森』)をやったり。あつ森は始めたばかりだけど早くもハマっています(笑)。ランクアップしていく感覚が面白いです。仕事は9時から17時まで。その後は夕食を作って食べて、YouTubeを見ながらストレッチやダンスストレッチをしたり。いろんな動画があるので便利ですよね。インスタライブでのダンスダイエットに参加したこともあります。それからあつ森をやって寝ます。ストレスないのでよく眠れますよ。
こんな私が唯一、気を使わないで一緒に過ごせたのが8年前に他界した母でした。ずっと2人で暮らしていて、すごく近しい人だったので、亡くなるときの悲しみと絶望と不安はとても言い表せません。
あの頃はひとりになることが不安すぎて、必死で婚活をしました。でも、母からは「あなたは絶対に結婚には向いていない。結婚しても多分不幸になる」と言われていたんです。母が言っていた意味が今になって少しわかります。将来、ずっと独身なのかはわかりませんが、今はひとりで何の不足もありません。
社会人としてのコミュニケーション能力はあるつもりだし、気疲れするほど気を使うほうなので、周囲からは人畜無害な人だと思われています。でも、ズカズカとこちらの領域に踏み込んで来るような人は苦手です。あるとき一気に嫌になって縁を切ってしまうことがあります。嫌になるポイントが自分でもいまだにわかりません。いきなり縁を切ったりして迷惑をかけたくないので、他人とあまり関わらないようにしているのかもしれません。

***大宮より中田さんへ***
世の中には3種類の人間がいる。リーダー、フォロワー、そしてひとり好き
海外旅行のときに「食事以外はずっとひとりでいたい」と中田さんが断言したとき、自分とのあまりの違いに驚きました。僕は「トイレ以外はずっと誰かといたい」と思っているからです。
そもそもひとり旅が好きではありません。空港まで行く電車の中で寂しくて不安になってしまいます。信頼できて相性もいい同伴者がいるならば、その人のリーダーシップに全面的に従い、荷物を多めに持つなどの役割に徹します。結婚前は、4歳年下の弟に韓国とポルトガルに連れて行ってもらいました。現在は、元商社マンの妻がリーダーです。ちなみに幼い頃は2歳年上の兄の背中にくっつくようにして遊んでいました。
世の中にはリーダーとフォロワーの2種類がいると思っていました。僕は明らかに後者です。働き方は個人事業主ですけど、それも会社員生活を挫折した結果に過ぎません。新卒の頃、温かい雰囲気の会社に入って尊敬できる上司や先輩に可愛がってもらっていたら、今頃は課長ぐらいになって好きな部長の下で楽しく働いていたかも、と夢想することがあります。
中田さんのお話を聞いて、人間には「第3の種類」が存在することを知りました。対人関係を前提とするリーダーやフォロワーとは根本的に異なり、ひとりでいることに居心地のよさを覚える人です。一人娘として母親と強い絆で結ばれていたという生い立ちと環境も影響しているのだと思います。
人と無理に関わって不機嫌でいるよりも、ひとりきりでもご機嫌に生きていく
この第3の人間(第3のビールみたいな言い方ですみません)の形成には、孤独に強いというよりもマニア体質であることが大きいのではないでしょうか。僕にはハマっている趣味はありません。あえて言えば映画鑑賞ですけど、1日2本以上は観られないし、古今東西の映画に詳しいわけでもない。映画を観るときぐらいはひとりでも寂しくない、程度の趣味です。
一方の中田さんはフィギュアスケートの観戦のためにひとりで海外に行ってしまうほどのハマり方です。カメラも好きだけど撮った写真は誰にも見せたくないそうですね。承認欲求はまったくない、と中田さんは言い切ります。「自分が楽しければいいという自己満足型。身勝手」と自嘲しますが、誰かに迷惑をかけているわけではありませんよね。なんだかうらやましいような生き方です。
人は虎ではないのでひとりきりでは生きていけません。旅行だってあつ森だって、誰かが働いてくれているから楽しめるんですよね。でも、人間関係の距離は居心地のよさを自分なりに追求していいと僕も思います。その結果として、健康に朗らかに過ごせることが一番です。好きでもない人と無理に関わって不機嫌でいるよりも、ひとりきりでもご機嫌に生きていく。それも素敵な大人の生き方だなと中田さんと話した後に感じています。
★出演者大募集!★
取材にご協力いただける方を募集します。「大宮さんに話を聞いてもらいたい!」「いまモヤモヤしているので話すことで頭を整理して何かヒントを得たい」「楽しいおひとりさまライフについて語りたい!」などなんでもOK! ご応募お待ちしております♪
<応募条件>
①現在、独身であること
②あごからウエストあたりまでのお写真をご提供いただけること
③Zoomなどのオンラインツールでお話を聞けること
④1時間程度の取材時間をいただけること
※顔写真やプロフィールなど、個人が特定される情報は掲載いたしません
<応募方法>
応募はコチラから! → fytte@one-publishing.co.jp
※上記リンクよりうまく飛べない場合は、メール:fytte@one-publishing.co.jp までご応募ください。
※取材をお願いする方には、編集部より直接ご連絡させていただきます。
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大宮冬洋 (おおみや・とうよう)
フリーライター。恋愛・結婚に関するインタビュー記事を得意とし、最近は「お見合いおじさん活動」も勝手に遂行中。35歳以上で結婚した「晩婚さん」を160人以上取材した実績を持つ。2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。近著に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)がある。
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