身近な人間関係ほど人間関係がうまくいかない……。このように感じたことのある人は多いのではないでしょうか。そばにいる時間が長ければ、なおさらよい関係でいたいものですが、なかなか理想通りにはいかないように思います。では、どうすればよい距離感でつきあうことができるのでしょうか。著書累計220万部のビジネスコンサルタントで、外資系教育会社時代に世界142カ国中2位の成績を納めた女性営業のカリスマ、和田裕美さんにうかがいました。
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パートナーなら「わかってくれる」!?
身近なパートナーとの関係。身近だからこそ「わかってほしい」「わかってくれるはず」という気持ちになりやすく、その分、モヤモヤ、イライラしてしまうことも多いのでは? 「パートナーなんだから」と期待する気持ちもわかりますが、やはり違う人間なんだっていう認識は大事ですね。
たとえば、家族やパートナーのために、いつもよりていねいにだしをとってみそ汁を作ったとします。作ったほうとしては、「今日のみそ汁、なんか違うね」のひと言を期待しますよね? でも、相手は「うまい」のひと言も言わず、ささっと食事終了、となると、作り手はがっかりするし、腹も立つかもしれません。場合によっては相手につんけんして、不穏な空気が流れてしまったり(笑)
でも、人によって味覚も違うし、だしをとるのに手間がかかることを知らない人もいます。相手は量さえ多ければいいという価値観の持ち主かもしれません。相手は自分とは違う。それを理解する必要があるんですね。
さらにいえば、身近な人を褒められない人は多いものです。ですから、逆にあなたはパートナーのことを褒めるようにしましょう。何かしてくれたときに、「助かったわ、ありがとう」とひとこと言うだけで、相手はとてもハッピーになれるし、あなたのために何かしたいという気持ちになりますよ!
価値観は本当にさまざま。言葉にして確認を!
価値基準って本当に人によって違います。たとえばおつき合いをしていて、あなたは毎日、電話したいし、ラインなんかもせめてその日のうちに返信がほしい、デートは最低でも週に2回はしたいと思っているのに、彼のほうは全然マメじゃなくて、既読スルーは当たり前、月に2回も会えればいいほう……。「いったい私って?」「彼はつき合っているつもりはないのかな?」なんてモヤモヤすることもあるかもしれません。
でも、じつは、「既読スルーの中でたまに返事をする」「月に2回会う」というペースでも十分、連絡をとっていると思っている人も、案外いるものです。ですから、相手との間にすれ違いを感じたら、ひとりでモヤモヤせずに、きちんと言葉にして相手に確認してみる必要があります。
この場合だったら、「つき合う」ということについて、相手はどのように定義しているのかを聞き、自分はどんなふうに連絡をとりあい、どのくらいの頻度で会いたいのか、ということを相手に伝えたほうがいいということです。
あるいは夫婦で、あなたは性別による役割分担にはこだわらず「人間として、お互いがどのように生活するのが心地よいか」という基準で物事を判断していきたいと思っているのに、パートナーは「男は仕事、女は家庭」という考えを強くもっていた場合はどうしたらいいでしょう。仕事をするにしても家事を分担するにしても、意見がまったく合わないですよね。この場合も、2人でどんな風に役割を分担していけばうまく生活が回っていくのかを確かめ合う必要があります。
このようなときに思い出してほしいのが「折り合いポイント」という言葉です。
「折り合いポイント」を見出していく
カップルでも夫婦でも、違う価値観をもつ人間どうし。お互いの価値基準をすり合わせ、その中でお互いが譲れないものと折り合えるものを、対話によってしっかり理解し合いたいもの。その上で見出され、生まれてくるのが「折り合いポイント」です。
たとえば自分は本当は毎日、パートナーに掃除をしてもらいたいけど、パートナーは週に1度、やるかやらないかのペース。それなら折り合いポイントは週3日だな、とか、自分は毎週、会いたいけれど、彼はそういうタイプではないことがわかったし、だいたい仕事が忙しすぎて頻繁にデートできないみたいだから、デートは月に2回くらいかな、とか。そうやって折り合えるポイントを少しずつ増やしていくのです。
身近な関係ほど、お互いに察してくれることを期待しがちですが、当たり前の前提として価値基準の違いがあるので、言葉でコミュニケーションをとっていかないと、「こんなにわかりあえていなかったなんて!」と驚くようなことが、気がついたら起こってしまうかもしれません。
価値観のすり合わせは日常生活の中でできる
価値観のすり合わせ、コミュニケーション、というと、何か大変なことのように感じるかもしれませんが、これは日常生活の中でもできることなんですよ!
たとえばあなたが朝から風邪ぎみで体調が悪くて仕事を休んだ日。それを知っているはずのパートナーが夜、手ぶらで帰ってきて、家にご飯があると思っている様子だったら、「買いものぐらいしてきてくれたらいいのに……」と思うかもしれません。その気持ちはよくわかるのですが、そこで怒って気分がさらに悪くなっていては、不満が募るだけですよね。
でも、「今日は具合悪くてご飯作ってないから食べてくるか買ってくるかしてね。あと、私の分、コンビニでうどんかなんか買ってきてくれない?」と連絡すれば、コミュニケーションが成り立ちますし、パートナーはあなたの状態を理解できます。次にあなたの具合が悪くなったときは「うどんか何か買ってこようか?」のひと言がもらえるかもしれません。
あなたがいつもご飯を用意していたとして、「相手が自分の代わりにご飯を作る」というところまではいかなくても、あなたのコミュニケーションによって、少なくとも相手はあなたの具合の悪さを気遣い、相手の好きなものを用意しようとしてくれようとする、という折り合いポイントまで到達することができるのです。
相手の態度にイライラして、その気持ちが態度に出そうなときも、そういうときこそ「折り合いポイント」を見つけるチャンス! きちんと言葉にして理解を深めていけば、関係がよくなってラクになっていくと思いますよ!
取材・文/寺田千恵
参考書籍
『人の心を動かす話し方』(廣済堂出版)