「着心地がよければ、素材がなんだって気にしない!」というプチプラ志向の10代、20代を経て「質のいいものを長く使いたい」という、本物志向の30代を横断。しかし、上質なものにこだわっていたら、あっという間に予算オーバー。それでもムリをして買ったのに、着た自分の姿には納得がいかない、似合うと思えないジレンマ…。本物を追求しても、似合う服、着たい服が見つからない状態から脱出するためにはどうしたらいいのか。今回は“大人になればなるほど、本物を身につけましょう”という、誰もが一度は目にしたことがある“おしゃれ定型文”が、服選び失敗を招いてしまう原因である理由と、大人にふさわしい本物とはなにかを、スタイリストの筆者がお話します。
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天然繊維に欠けていて、化学繊維にあるもの
夏ならコットンやリネン、冬ならウールやカシミヤ。それぞれ化学繊維等との混紡ではなく、100%に近い服であればあるほど上質とされ、総じて着心地がよく、通気性や保温性といった機能性も高いです。
これらに対し、ポリエステルやレーヨン、アクリルなどの化学繊維は、かつては通気性や保温性どちらも天然繊維より劣り、耐久性も悪く、扱いづらいということから、「天然繊維=本物=上質>化学繊維=偽物=粗悪」という公式ができ上がっていました。
ところが、科学繊維の進化は目まぐるしく、今では天然繊維に負けない通気性や保温性を誇るものが安価で手に入るようになり、耐久性も高く、家庭で気軽にホームクリーニングできる扱いやすさも十分に備えていることから、化学繊維=粗悪ではなくなったのです。
実際、某ファストファッションの防寒インナーをはじめ、革新的な化学繊維の恩恵を無意識のうちに誰もが受けていることでしょう。
天然繊維と比較すると、化学繊維自体アップデートの回数がすさまじく、日々革新的な繊維が誕生しています。体も心も変化の激しい大人世代にとって、化学繊維はまさにぴったりの素材。天然繊維にはなく、化学繊維にあるものとは“変化が激しい大人への適応力”なのです。
大人が失ったものを補ってくれるのが化学繊維
大人世代が天然繊維を着ることで、違和感を覚えることといえば“ほっこりして見える”、“野暮ったく見える”ことではないでしょうか。これは、年齢を重ねるごとに誰もが失う肌のツヤやハリ、別の記事でお話したおしゃれを楽しむ体力や気力、さらにはフレッシュさが影響するからです。
もちろん、すべての天然繊維が当てはまるわけではありませんし、値段が高い服や、ブランド服の天然繊維服が別格というわけでもありません。ただ、一般的な天然繊維と比較すると、化学繊維特有のツヤやハリは、大人世代が失ったツヤやハリを補うことで、天然繊維を着たときの違和感は感じられず、むしろ着る人をイキイキと、若々しく見せるのです。
これらに加えて化学繊維は、天然繊維よりも軽量でホームクリーニングができて、ノーアイロンで着用可能なものが多いことから、体力と気力を失いつつある大人世代にとって、気軽に着る機会を作りやすいのです。
純化学繊維、混紡に限らず、見た目も機能面も大人世代にとって万能なのが化学繊維を使った服。かつての本物志向に固執することなく選ぶ、革新的な1枚こそが大人世代の本物であり、これをあえて選択することが、大人の服選び成功へとつながるのです。
監修:高田空人衣