「セレブリフト」を発売したのは、今からおよそ3年ほど前の2015年の秋。商品企画は、若手が担当したそう。そのチームの中の一人、入社して今年で6年目になる我妻ひとみさんに開発秘話を聞きます。
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開発期間4年!「セレブリフト」はどのようにして生まれたのか?
——ツインバード工業といえば、ライフスタイル系のプロダクトのイメージが強いという人はきっと多いのではないでしょうか
我妻:これまでは、結婚式の引き出物などギフトカタログに掲載されるような、低価格ゾーンの製品がメインでしたが、最近では機能やデザインにこだわった製品を多く作っています
——そんなツインバード工業からビューティギアが登場しました!
我妻:同じ分野だけに留まっていてはいけないと考えていたことも一つにあります。社内では、若い人たちの新しいアイデアを出していきたい、と考え始めていました。その初期のころのものが「セレブリフト」でした。当時、明確なこれというものはなく、何か面白いものを作りたいねぇ、というくらいだったと思います。
——それでも、ビューティアイテムは作りたいと思われていたのですか?
我妻:そうではありませんでした(笑)。女性の美しさのためなどの情緒的なアイテムを作ろうとは考えておらず、最初は健康器具を考えていたりしていましたし、実際にそこからスタートしています。しかし、そういったものではなかなか難しいのではないか、と考えるようになり、軌道修正をくり返した末にでき上がったものが「セレブリフト」です。
——そんな経緯もあって開発に4年もの時間がかかったのですね
我妻:考え方のベースになったのが、男性をターゲットにしたもみほぐし機です。育毛や、シャンプー時に用いることでより頭皮の汚れを落とす、「モミダッシュ」という商品です。しかしこれは、約10年も前=2008年ごろの商品で、そのころはこれと同じような考え方で3商品ほどデビューさせていました。どれもヒットし、私たちも手応えを感じました。このヘルスケアアイテムをヒットさせた経験は次なるものを作ろうという気持ちにさせてくれましたし、技術や防水機能なども蓄積していったことが大きかったのです。紆余曲折を含めたすべてがひとつになり、きっかけも重なって「セレブリフト」は誕生するに至れました。
——時代性もあるのではないでしょうか
我妻:ビューティギアブームを感じていたことも大いにあります。さらに、第一次ヘッドスパのブームがあり、“洗う”より“もむ”という考え方にシフトしていったのを憶えています。これが、最初の、きっかけでした。
——4年もの年月は長いと思います。ほかの商品も同じくらいの時間をかけてらっしゃるのですか?
我妻:いいえ、かけません。開発期間の面から見ても「セレブリフト」は弊社にとって大事な商品です。何より、美容家電を提案するという経験がこれまでのツインバード工業の歴史の中であまりないことだったというのもあります。
——ビューティアイテムを作ることをどのように考えられましたか
我妻:一般的な家電の場合は、目標となる使用法を想定した上で開発を進めていくのに対し、美容家電はそうではないと考えました。美しくなるためのものに対して、どんな目的で使用するのか? を想定することに難儀しましたし、もっとも苦労したように思います。なかなか着地点が定まらない中で出会ったヘッドスパ美容の第一人者である山本幸恵先生に監修のご相談を申し上げることにしました。山本先生の手技を再現することを目標にしたいと思ったのです。
——なぜ山本先生だったのでしょう?
我妻:いろいろなタイプの技術者がいらっしゃいますが、とりわけ山本先生はヘッドスパの力を信じていらっしゃるように思えました。それでどうしても山本先生のお力をいただきたいと考えたのです。ヘッドスパすることで気持ちが安らぐなど、ひと言で美容を語ることのできないと思えるほどの手技をお持ちだと感じました。
山本先生には、例えば、なぜ頭をマッサージすると気持ちがいいのか? などといった根本的なところから参加していただきました。ゼロから加わっていただくことで、山本先生の手技だけではなく、スピリチュアルなところも含めた「セレブリフト」にしたいと思い、開発しました。山本先生は美容家ですが、モノづくりにも関心をお持ちでもありました。それも山本先生にお願いしたいと思った一因ですし、私たちにとってそんな山本先生の存在が大変に心強かったです。
——そんな技術面だけでなくデザイン面でもとてもこだわられたそうですね
我妻:デザインの修正は7回ほど重ねました。40代以上の人を想定したデザインだったのですが、発売してみると若い人にも高い関心を寄せていただいていることがわかりました。年齢というよりも頭皮にも美容意識を持つべきだと気づいておられる人に多くの支持をいただいています。
——近年注目されているパーツというのもあるのかしら? と想像したりします
我妻:1万円を切る価格帯のものが大半を占めるツインバード工業としては、決して安い商品ではありません。この値段にしたときも、こんなに高いの? という声が社内ではたくさんありました。それでもヒット商品にまで成長できたのは、トレンドも一つにありますし、美容には制限はなく、意識や関心、情熱は年齢層などでは図りしれないのだろうと感じています。
たくさんの人に使ってもらえることに作るよろこびを感じるという我妻さん。「セレブリフト」はツインバード工業にとっても大事に育てていきたい商品だと言います。新たな美容家電が生まれる日も近いのかもしれません。
取材協力/我妻ひとみ Hitomi WAGATSUMA
ツインバード工業株式会社
開発生産本部 プロダクトディレクション部 リーダー
取材・文/渡部玲