「お風呂の入り方」は、とくに学校で教えてもらうわけではなく、親の入り方などを見様見真似で覚え、自分の好きなように入っている人がほとんどでは? そこで、『お風呂研究20年、3万人を調査した医者が考案 最高の入浴法』の著者で医学博士の早坂信哉さんに、間違った入浴法についてお話を伺いました。
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「シャワーだけ」なんてもったいない⁉
疲れた日は浴槽にお湯を張るのも面倒なため、シャワーだけで済ますという人も少なくないはず。しかし、それではあまりにももったいないと早坂さんは言います。
「シャワーには清浄作用はありますが、じつはお湯に浸かるよりも疲労回復などその健康効果は低いです。『どうしても時間がない』『お湯を張る気力がない』という場合は、シャワーに足湯を取り入れましょう。体や頭を洗うときに椅子に座り、お湯をためた洗面器などに足を入れておくだけ。洗面器がない場合は、浴槽に足首くらいまで湯を張るのもおすすめです。これでただシャワーを浴びるよりもずっと疲れが取れやすくなります」
足湯の温度は、少し熱めの43℃くらいがいいそう。そこに炭酸系の入浴剤を入れれば、より体が温まり、血液の流れもよくなります。簡単にできるだけに、すぐ試してみては?
「半身浴」にはほとんど健康効果はない⁉
ブームにもなった「半身浴」。みぞおちあたりまでぬるめのお湯に長く浸かることで、ダイエットや美肌などの効果があるといわれていますが、「半身浴」ならではの健康効果はないといいます。
「そもそも半身浴では、入浴に重要な『温熱作用』の効果が半減してしまいます。全身でしっかりとお湯に浸かったほうが体は温まり、血流も断然よくなります。また、むくみ解消にもつながる『静水圧作用』も全身浴のほうが強く働きます。さらに、体をリラックスさせる『浮力作用』も半身浴では半減してしまいます。つまり、半身浴は文字通り、すべての入浴効果が全身浴の半分になるのです」
体の半分だけしか浸かっていないから、その分半身浴は全身浴よりも長く入っていられるだけ。お風呂場でのんびり過ごしたい人や、全身浴では息苦しく感じる人、心臓や肺に疾患がある人などには半身浴はいいですが、基本的に全身浴のほうが賢明です。
お風呂で汗をかいても「ダイエット効果」は得られない⁉
「半身浴」や、熱いお風呂に浸かって汗を流せば、ダイエットにつながると思っていませんか? じつはお風呂で流した汗には、あまりダイエット効果がないそう。
「私はお風呂でかく汗を『受け身の汗』と呼んで、運動で流す汗とは区別しています。運動のときは、体を動かして自分の脂肪を燃焼させ、結果的に体温が上がり、汗を出して体温を下げようとします。一方、お風呂の場合、脂肪を燃焼させているわけではなく、お湯から熱をもらって体温が上がります。なので『受け身の汗』なのです。
実際に、国が発表している身体活動の強さ(メッツ)を見ると、安静時が1とすると入浴は1.5。散歩が3.5なので、入浴は散歩の半分弱の強さの活動ということになります。つまり、入浴だけでどんどんやせる、ということにはならないということです。
ただし、間接的にダイエットにつながる効果はあります。
たとえば、胃や腸が食べ物を消費するには血液が必要ですが、お湯に浸かると、体が温まり、皮膚表面の血液が分散します。すると、胃や腸の働きが抑制され、食欲を抑える効果があるのです。
また、食後に血糖値が高すぎると脂肪になって体に蓄積されやすくなりますが、食後の入浴には高血糖になるのを防ぐ効果が報告されています。
とはいえ、お風呂上がりに体重が0.5㎏ほど急に減った場合は、それは汗が出て脱水状態になっただけ。きちんと水分補給をしましょう」
参考書籍
『お風呂研究20年、3万人を調査した医者が考案 最高の入浴法』
文/奥沢ナツ