肌育成スペシャリストとして2万人以上をスキンケア・カウンセリングし、皮膚常在菌の働きに着目した「洗わない美容」で注目を集める川上愛子さん。
「美しい肌を保つには、皮脂や汗を養分にする皮膚常在菌にうまく働いてもらい、肌の弱酸性バリアをキープすることが大事」。そう教える川上さんが、美肌づくりにぜひ有効活用してほしいと話すのが毎晩の入浴です。
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お風呂にはいって、汗腺を鍛えよう!
「暑くなるこれからの季節はシャワーだけですませる人も増えると思いますが、入浴は血行をよくし、気持ちよく発汗して汗腺をきたえるチャンスです。汗は、美肌の要ともいうべき表皮ブドウ球菌のえさになり、汗に含まれる抗菌ペプチドという成分が悪玉菌を退治してくれます。美肌をつくるには、角層の下を健康にして、いい汗をどんどんかくのが効果的なんです。
39~40℃の湯船に15分程度浸かれば、不要になった一日の汚れ(角質)はふやけてきれいに流れ落ちるといわれています。肌の保湿に必要なバリアを失いすぎないように、湯船につかるのがおすすめです。石鹸やボディソープも毎日必ず必要なわけではないですよ」(川上さん)
「入浴=洗う」という概念を忘れよう
洗わないとなんだか落ち着かない、という人も、「毎日、全身をくまなく洗うのではなく、脇や股、一日靴をはきっぱなしだった足など、気になるところだけを弱酸性ソープで軽く洗うようにしてみては?」と川上さん。
「まず、『入浴=洗う』という概念を忘れるといいですね。気になる部分を洗うにしても、皮膚をこするナイロンタオルやスポンジは使わずに手で洗いましょう。私も週に1回、弱酸性ソープを使うくらいですが、必要な角質をとらないおかげで肌の調子はいい感じです。
湯船に浸かれば不要な汚れとともに常在菌もすべて流れてしまいますが、お風呂から上がると、毛穴の皮脂の中にいた菌が出てきて増殖し、30分もすれば元通りに。また弱酸性ベールで肌を守ってくれます。
ただし頭髪だけはシャンプーで洗ったほうがいいです。頭は皮脂腺の数が体の10倍以上あるうえ、湿度が高く菌が繁殖しやすいので、洗わないでいると皮脂が毛穴を詰まらせることに。それが原因で髪の毛が弱くなることもあるので、2日に1回は洗いましょう」(川上さん)
川上さん自身は、「人生で、シャワーだけで入浴をすませたことは、入院中以外、記憶にないかも」と話すほどのお風呂好き(!)。
「のぼせないように、湯船に浸かったり出たりしながら、トータルで1時間くらい入ります。肌が乾燥ぎみな日は、タオルの端を湯船につけながら顔に蒸しタオルをあてることも。蒸気で蒸すことで血行を促し、体の中から角質へ水分を届けることができます。
お風呂の中では本を読んだりスマホをいじったり、ストレッチもしていますね。ふだん、汗をかく習慣がない人は、お風呂に入ってもなかなか汗が出ず、のぼせてしまう場合もあると思います。そういう方はぬるめのお湯につかりながら、脚を片方ずつ曲げて前屈するなど、簡単なストレッチをするとじんわり汗が出てくるはずです」(川上さん)
入浴後の保湿は浴室内で
お風呂上がりも化粧水は使わないのが川上さんのスタイル。乳液やオイルは、どのタイミングでつけているのでしょうか。
「お風呂で肌が水に濡れたとき、潤った角層から水分が逃げるのを防ぐには、すぐに油分でフタをすることが大事。入浴後に保湿しないでいると、25分前後で肌がもとの状態以上に乾燥する過乾燥状態になります。
一番いいのは、入浴後、浴室から出る前にオイルや乳液で全身を保湿することです。乳液は油分プラス水分です。私も浴室の中で乳液やオイルを塗ることで、手間なく肌の潤いをキープしています」(川上さん)
入浴の効果を高める入浴剤は、炭酸ガスが出るタイプのものか、保湿効果のあるバスオイルがおすすめだそうです。
「炭酸系のものは、炭酸ガスがお湯に溶け込み、皮膚から二酸化炭素が浸透することで血管が拡張して血流が上がるという効果があります。発汗作用が高まるので、老廃物の排出も促進されます。
保湿成分がしっかり入ったバスオイルは、お湯に入れると乳化(=分散)する肌に優しいものが多いです。乳化しなくても、水+油で乳液に浸かっているようなもので、入浴しただけで肌に膜をつくり全身保湿してくれます。
日本酒風呂も美容効果が高いと言われますが、アルコールは殺菌・消毒効果があるので、飲用のものではなく必ず入浴剤として販売されているものを使いましょう」(川上さん)
洗わない入浴、化粧水はつけないなど、育菌の視点から「あたりまえ」を疑うことで女性たちを美肌に導いてきた川上さん。次回は、「これだけはやってはいけない、美肌から遠のく悪習慣」について伺います!
川上さんのスキンケア理論をもっとくわしく知りたい人は
「皮膚常在菌ビューティ!」
取材・文/浜野雪江