汗をかくと、金属が触れた部分にかゆみ、湿疹などの症状が出ることがあります。ネックレスで首がかゆい、腕時計で手首に湿疹が……こんなことがあったら、それは金属が原因のアレルギー性接触皮膚炎かもしれません。金属のほか、衣類、めがね、化粧品など、日常で使う多くのもので、アレルギー性接触皮膚炎は起こります。埼玉県済生会川口総合病院皮膚科主任部長の高山かおる先生に、その原因について伺いました。
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汗をかいた後の「金属かぶれ」に注意
「ネックレスやピアスなどの金属製のアクセサリー、腕時計などで、皮膚が赤くなって、かゆみや湿疹が出るのは、金属によるアレルギー性接触皮膚炎が考えられます」と高山先生。
これは、いわゆる“金属アレルギー”“金属かぶれ”のひとつです。時間の経過とともに、赤み、湿疹、腫れなどが広がり、原因の物質が触れていない場所にも症状が出ることがあります。
夏場に金属かぶれを起こしやすいのは、汗に触れてイオン化した金属が、皮膚の中に入り込むため。その一部を、免疫担当の細胞が “アレルゲン(アレルギーの原因物質)”とみなし、アレルギー反応が起きてしまうのです。
「皮膚が健康であれば、角質層のバリア機能が働いて、かぶれは起こりにくいのですが、乾燥や傷などでバリアが壊れてしまうと、異物が侵入しやすい状態になり、アレルギーも起こりやすくなります」(高山先生)
金属などに対して、アレルギー反応を獲得することを「感作」といいます。一度、特定の物質で感作が成立した場合、その物質を身につけたりすると、必ず症状が出るようになってしまいます。
「感作が成立するには、ある程度の時間がかかります。感作が成立しないように、夏場はアレルギーが起こりやすいアクセサリーなどを長時間、身につけないことが予防になります」(高山先生)
金属かぶれの原因になりやすいのは、ニッケル、金、クロム、コバルト、パラジウム、水銀などです。
「アクセサリーなどのメッキによく使われるのがニッケルで、これで金属かぶれを起こす人が多いですね。デニムの金属ボタンやベルトバックルにも使われ、夏場はこれらが肌に触れることで、下腹部にかぶれを起こすケースもあります」(高山先生)
また、パラジウムはニッケルとの交叉性があり、ニッケルにかぶれる人はパラジウムにもかぶれます。めがねフレームや腕時計などに使われています。
化粧品、靴、メガネなどでも接触皮膚炎を起こす
アレルギー性接触皮膚炎を起こすのは、金属だけではありません。
「うるしなどの植物、日常的に使うものに含まれる化学物質などでも起こり、ゴム製品、化粧品、香水、毛染め、接着剤など、原因となる物質はさまざま。近年では、染毛剤によるアレルギー性接触皮膚炎が問題になっています」(高山先生)。
意外なところでは、メガネのセルの着色剤、靴に使われる接着剤、スニーカーなどで足の甲がかぶれるケースも。新しい靴で突然、発症することもあります。
また、強い刺激や毒性によって起こる接触皮膚炎もあり、「刺激性接触皮膚炎」といいます。赤み、かゆみ、湿疹などが出ます。
「もともと皮膚にトラブルを起こす性質を持った物質が原因となり、誰にでも起こります」と高山先生。山芋などの植物、洗剤、シャンプーなどに使われる界面活性剤、ドライクリーニング溶剤、毛虫の毛、昆虫の毒などが原因となります。
体のかゆみや湿疹が、日々、使っているものが影響していることも。接触皮膚炎を起こしやすいものをまとめました。下図をチェックしてみましょう。
接触皮膚炎になってしまった場合の対処法については、次回に続きます。
取材・文/海老根祐子