一生止まることなく泳ぎ続ける回遊魚のカツオ。そのカツオを原料に、製品になるまで10以上の工程を4~6か月もかけてつくられるかつお節。このかつお節には、健康成分がギュっと濃縮されています。そこで、かつお節の専門店「にんべん」で研究開発をしている荻野目望さんに、かつお節と疲労回復の関係について伺いました。
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カツオが止まらずに泳ぎ続けられる理由とは?
まず、カツオの特長からみてみましょう。
一生泳ぎ続けるカツオは、エラフタが大きく動かないため、海水を取り入れるためには口を開けたまま泳ぐことにより強制的に海水をエラに送りこみます。「また、カツオが止まれない理由のひとつに、浮袋が未発達なため、止まると海水よりも比重が重くなり沈んでしまいます。
まず、カツオのさし身を見ると赤黒い血合筋があります。この筋肉はピンク色の普通筋に比べ、持久力のある赤筋と言われる筋肉でカツオには多く含まれているのがわかります。さらに、ずっと泳ぎ続けることは、カツオも疲れてしまうはずなのになぜだろう?と考えた研究者によって、「アンセリン」「カルノシン」という成分に疲労改善作用があることがわかりました。
「アンセリン」は、カツオのほか、長距離の回遊をするマグロやサケのほか、陸上動物では鳥に多く含まれています。とくに、渡り鳥は時に数百kmも休まずに飛ぶので、疲れるはずです。しかし翼を動かす要の胸の筋肉にこのアンセリンがしっかり含まれています。
カツオも一番アンセリンが多い部位は、一番動きの激しい尾びれの付け根にある筋肉になります。また、アンセリンとよく似たジペプチドで、同じく疲労改善物質のカルノシンは同じく大回遊を行っているうなぎや地球を半周するクジラにも多く含まれています」(荻野目望さん)
「最近の研究では、疲れは筋肉ではなく脳が認識するといわれています。アンセリンもカルノシンも脳には直接入れませんが、分解されて脳に入り、脳関門を通った後に再合成されアンセリンやカルノシンになります。そして、改善作用を行うわけです」
運動の疲れを残さないための、効果的なかつお節の食べ方
そんな疲労改善作用のある成分が豊富なカツオからつくられる「かつお節」が今、人間の疲労改善にも注目されています。
「運動をする前には、食事時に削りの状態のかつお節をたくさん食べましょう。かつお節は高タンパク質なので、体を動かす前にタンパク質をたくさんとることが大切です。ATPやグリコーゲンなどの初期のエネルギー源を消耗すると、替わりにエネルギーをつくる元となるのがタンパク質です。かつお節の場合、タンパク質のもととなるアミノ酸スコアが100と不足なく入っているので、優秀食材なのです。おすすめはおかかのおにぎり。リジンは人が合成できない必須アミノ酸なのですが、ご飯にはリジンが少なく、かつお節にはリジンが含まれているので、ご飯の足らない栄養素を補い、バランスがよくなるわけです」
また、水分補給にもだしがおすすめなのだとか。
「そして、運動中や運動後の水分補給にはだしを飲みましょう。急須やティーポット、コーヒードリッパーなどにかつお節を1パック入れ、熱湯を注いで1~2分待つだけで、一番だしがつくれます。温かくしても、冷たくしても栄養成分は変わりません。冷たくすると香り立ちが薄まるくらいの違いです。夏場は、だしを冷やすとスッキリさっぱりと飲めます」
カツオが本来もつパワーが、実は私たちの疲労も改善してくれるとは驚きですね。新たな運動時のドリンク、食べものとして「かつお節」をおおいに取り入れてみてはいかがでしょうか?
取材・文/奥沢ナツ