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ワイキキの歴史的建造物をリノベーションしてオープンしたサスティナブル・アイランド・フレンチ『natuRe waikiki』(ナチュール・ワイキキ)
2020年3月に1回目のロックダウンをしたホノルル。コロナ禍にあって、ワイキキからも人が消え、目抜き通りであるカラカウア通りも車が減ったかわりに自転車で走行する人の姿が目につくこともありました。 そんなコロナ禍終盤の21年12月に新しいレストランがオープンしました。それがハワイ諸島の食材をふんだんに使用した、ハワイでしか味わえないフランス料理、“アイランド・フレンチ”が味わえるお店「natuRe waikiki」。エグゼクティブシェフの小川さんに話を聞きました。
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「naruRe waikiki」のRが大文字なのは、「再生(Regenalate)」への思いがあるから
東京で生まれ育った小川さんは、高校卒業後に調理師専門学校に通い、東京の二つ星レストランに就職。 その後、ニューヨーク、パリで5年ほどフランス料理に携わってきました。このような過程を経て、縁あってこのホノルルに初めて移ってきたときは、ハワイの人々のゆったりとした生活や大都会とは違う時間の流れ方に軽いカルチャーショック を受けたそう。ただサーフィンやハイキングをするなど、ハワイの自然に魅入られ、今ではハワイが大好きだと話します。
「『naruRe waikiki』のRが大文字なのは、ハワイにもともと存在した、あるべき状態や循環を『再生(Regenalate)』していきたいという想いを込めています。ハワイの自然は本当にすごい力があります。特に土には栄養だけでなくパワーがあり、ここで作る野菜は生き生きとして力があるんです」と小川さん。
2021年12月にnatuRe waikiki がオープンするまで、小川さんはフレンチレストランの「Paris Hawaii」でスーシェフ(副料理長)をしていました。その後オープンまでの間、ローカルの人との交流や自然を守っていく活動に参加する中で、このハワイの素晴らしい自然環境や伝統文化を将来に残していく上で料理人として何ができるかと考える時間があったことが、今となってはよかったnatuRe waikikiのコンセプト作りに生かされたと言います。
ハワイ州や多くの団体が地産地消を叫んでしばらく経ちますが、まだまだハワイは自給率が15%と低い状況です。フードマイルを削減するという地産地消に限らず、小川さんはこのハワイでサスティナブルについて以下の3つのとり組みもしているそうです。
1、同じ思いを持っているローカル農家から直接仕入れる有機、無農薬野菜を積極的に使用する。
2、ハワイの海に異常に繁殖している外来種の魚『タアペ』やモロカイ島やマウイ島で爆発的に増加し、自然被害をもたらしている『アクシス鹿』などを積極的に使用する。
3、ハワイ島の広大な牧草地で大切に育てられたグラスフェッドの牛肉を1頭まるごと購入し、さまざまな使い方をして捨てる部分を減らす。
1については、農薬や化学肥料による土壌や水質汚染を防ぐために、手間がかかっても有機、無農薬野菜を育て、ハワイの土壌を守っていきたいという農家と直接契約して野菜を注文しています。
2については、ハワイの海に昔食用として持ち込まれた外来種である「タアペ(Ta’apa)」が爆発的に増加したことによって、海の生態系のバランスがくずれ始めているという現状があります。サイズが小さく、さばく手間がかかるという面でハワイの人があまり好んで食べない魚を、丁寧にさばいてテイスティングメニューのひと皿にしています。またそのほかの魚を購入する際 も、網で大量に獲るのではなく、1本釣りをしている漁師さんから買うようにしているとのこと。
3については、家畜が地球温暖化の原因になっていると言われる現在、土壌がその温室効果ガスを吸収してくれるため、その心配がないグラスフェットで飼育された牛肉を使用。また、牛の一部のよいところだけ購入していく人たちも多く、フードロスの問題もあったそう。そのため、小川さんは1頭まるごと買い、煮込み、ひき肉、骨はソースや出汁にと、それらを余すことなく使う努力をしています。
そのほかにもお店から出る生ゴミは全てコンポストにしたり、ペーパータオルをやめエアードライヤーしたり、またキャンドルは廃油から作ったりと、さまざまな工夫をしています。そんなこともあってから、観光地として有名なワイキキにお店があるものの、地元のお客さんが多く利用していると言います。
現在、メニューは「レギュラーコース(6品)」と「ヴィーガンコース(6品)」の2種類。それ以外にアラカルトもあります。
例えばこちらは「ハワイ島産牛テンダーロインのキアヴェグリル かぶのエスプーマ」。
『ファーム・トゥ・テーブル』を表現したひと皿です。ハワイ島で育てられた牛肉のテンダーロインをキアベ(ハワイに生息する灌木の一種で肉をスモークするときなどに使われる)で焼き上げ、土に見立てた黒オリーブパウダー、ローストしたかぶとキャロットを添えて畑を表現しています。
こちらはマカダミアナッツチーズを詰めた「ケール・トルタリーニ バジル&ココナッツクリームソース」
オアフ産のケールを練りこんだ自家製パスタ生地で、ハワイ島産のマカダミアナッツから作られたチーズとインゲンをフィリングしたものです。
また、こちらはタアペのベニエ。
ヨスジフエダイ(Bluestripe Snapper) とも呼ばれるタアペをクリスピーなベニエに。オアフ産文旦(ぶんたん)の果実とケイパー、フレッシュハーブ、きのこから作られたタプナードソース、マイクロコリアンダーとモリンガパウダーで仕上げました。ネギのヴィーガンアイオリソースを添えて。
今後もハワイの食材ありきでメニューを考えていく方針は変えず、「Beyond the Farm to the Table (農場を超えてその先までも)」をレストランのコンセプトにして、大好きなハワイに恩返しがしたい、ハワイにリスペクト(尊敬)を持って、メニューを考えていきたいと語っていました。
店舗公式サイト:https://www.naturewaikiki.com/
取材・文/堀内章子
写真/natuRe waikiki