メタボや肥満は今や世界的な大問題。太りやすい体質であったり、生活習慣であったり、要因は人によってさまざまです。そんななか、海外研究において、肥満には明らかに異なる2つのタイプがあると報告されました。いわばよい肥満と悪い肥満があるようです。その決定的な差はなぜ生まれるのでしょうか。
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よい肥満なんてある?
肥満や代謝については、太りやすい体質といった親の影響が知られています。ですが、両親が太っているからといって、その子どもが必ずしも太っているわけではありません。いわば太りやすさを決める要因は複雑に存在しています。また、同じ肥満体型でも、健康的に年を重ねる人がいる一方で、何かの病気になってしまう人もいます。前者はよい肥満、後者は悪い肥満であるようにも見えます。何か違いがあるのでしょうか。
今回、米国、ドイツ、スペインなどの国際的な研究グループは、双子のデータも活用した分析によって、脂肪や筋肉など体組成の違いを含め、体型や代謝の情報、また体型を決める要因について詳しく調べました。
双子ですから、2人の遺伝子はほとんど同じです。それなのに2人の体型が異なる場合もあります。その理由は何であるのかを探ります。
まずは動物実験によって体型や新陳代謝の差が見られる原因についての研究を行いました。そのうえで、双子の体のサイズや脂肪の量などの違いが現れる原因を調べました。背景にある遺伝子の働きについても解析しています。
違いの大もとは意外にも偶然起きた変化
こうして確認されたのは、同じ遺伝子をもっている双子でも、太り方に差が現れることがあり、その太り方に2つのパターンがあることでした。
太り方の2つのパターンを比べると、どちらも脂肪の量が増えるのですが、ひとつのパターンは脂肪だけが増えます。これはいわばよい肥満です。ところが、もう一方のパターンでは、脂肪だけでなく筋肉の量も増えるほか、さらに体内の炎症反応が強まるという特徴がありました。これが悪い肥満といえそうなのです。
研究グループはこの2つ目の悪い肥満のパターンについて「炎症性の肥満」と呼んでいます。炎症というのは、腫れや赤み、痛みや熱の原因になる体の反応です。
動物実験でもよい肥満と悪い肥満の2つのパターンが見られることが確認されました。詳しく分析したところ、遺伝子の働きをオンオフするメカニズムがまったくの偶然から変化することで、よい・悪いの違いが現れることも判明しました。悪い肥満である「炎症性の肥満」になるのが偶然だというのは困ったことですが、これが糖尿病などの生活習慣病だけでなく、がんなどの病気のリスクにつながる可能性があります。
偶然からその後の肥満や病気のなりやすさに影響する可能性があるだけに要注意。もっとも肥満は運動などで解消できますから、フィットネスやダイエット、健康のいずれの観点からも気にしておくとよい最新研究かもしれません。たとえ炎症性の肥満になりやすかったとしても体質の改善を目指せるでしょう。
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https://www.nature.com/articles/s42255-022-00629-2