カロリーを制限するダイエットをすると、結局、体重が元通りになってしまうのはありがちな結末。こうしたリバウンドがどうして起こるのか、いろいろと研究されてきましたが、このたび海外研究により、脳内で空腹を伝える神経信号がダイエット中に強くなることが確認されました。この食欲増強を防ぐことができれば、リバウンドの憂き目に遭わずに済むかもしれません。
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リバウンドの秘密は脳にアリ
ダイエットに成功しても、かえって食欲が増して、ダイエット前よりも食べる物がおいしく感じるという経験をした人も多いでしょう。その秘密は脳にあることがはっきりしてきます。
ダイエット後に体重が戻ることが多いのは、空腹を感じる脳内信号が増幅されるためであることが研究により明らかになっています。この現象には、ホルモンや自律神経をコントロールするいわば“司令塔”になっている脳の視床下部が影響しています。カロリー制限によって体重コントロールに関係する神経系の信号が変化し、これが体重のリバウンドにつながると考えられています。しかし、このような変化がどのようにリバウンドを起こすのかは明らかになっていません。
そこで今回、ドイツと米国の研究グループは、空腹感をコントロールする「AgRP」と呼ばれる神経細胞群に注目しました。研究グループは、リバウンドがなぜ起こるのかを詳しく知るために、カロリーを制限したときに、これらの神経細胞群がどのように変化するのか、動物実験を行いました。
ダイエット後もしぶとく残る神経の変化
こうして研究で確認されたのが、ダイエットの影響で、体重が元に戻るまで神経細胞群の変化が保たれる可能性があるということです。
具体的には、空腹感をコントロールする神経細胞群「AgRP」を刺激している神経回路のひとつがダイエット中に影響を受けて、活動が活発になり、空腹感が増すと考えられたのです。この変化はダイエット後も長く続き、失った体重が元に戻るまで神経活動の高まりは保たれました。
また、研究グループは、AgRPへの刺激を止めることで、ダイエット後のリバウンドを防ぐことにも成功しました。この結果は、ダイエットの成功にすぐに生かせるわけではありませんが、リバウンド阻止のカギを握る発見になりそうです。もっとも、それだけリバウンドの克服は難しいといえるのかもしれません。
<参考文献>
Dieting: brain amplifies signal of hunger synapses
https://www.mpg.de/20048019/0322-neur-dieting-brain-amplifies-signal-of-hunger-synapses-153735-x
Grzelka K, Wilhelms H, Dodt S, Dreisow ML, Madara JC, Walker SJ, Wu C, Wang D, Lowell BB, Fenselau H. A synaptic amplifier of hunger for regaining body weight in the hypothalamus. Cell Metab. 2023 Mar 16:S1550-4131(23)00080-3. doi: 10.1016/j.cmet.2023.03.002. Epub ahead of print. PMID: 36965483.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1550413123000803