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日本人の多くはじつは太りやすい!?︎ 最新研究が解き明かす“肥満になりやすい遺伝子”を抑える方法とは

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肥満体質 

外見だけでなく、病気のかかりやすさや職業の適性も“遺伝子”が関わっているということが、近年の研究から解き明かされつつあります。たとえば、“脂肪ため込み遺伝子”は白人の8%に対して、日本人の34%がもっているなど、体質もそのひとつ。今回は、遺伝子を研究する医学博士の一石英一郎先生の書籍『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』からお伝えしていきます。

Contents 目次

日本人の多くがもつ「飢餓遺伝子」

遺伝子

カツ丼や牛丼など日本人にとっては高脂肪食も海外の人にはヘルシーな食事といわれるということがありますが、それもこの遺伝子が関係しているかもしれません。それは、太りやすさに関係する「飢餓遺伝子」です。

「日本人はこの飢餓遺伝子を高い割合でもっています。四季に恵まれた日本は山の幸も海の幸も豊富ですが、歴史上、日本人が長くお腹を空かせていたことは間違いありません。江戸時代にくり返された大飢饉(だいききん)や、女子の身売りや欠食児童が出て小作争議を招いた昭和初期の大凶作は、日本の歴史上では比較的最近の話です。だから日本人は、飢餓遺伝子をもつようになり、そのおかげで生き延びてきたのでしょう」(一石先生)

飢餓遺伝子は、「倹約遺伝子」「省エネ遺伝子」ともいわれ、100種類以上あると考えられています。エネルギーを消費せずに内臓脂肪としてため込んだり、脂肪を燃焼させにくくしたりする働きがあります。

「たとえば脂肪を燃えにくくする“脂肪ため込み(β3AR)遺伝子”をもつ人は、もたない人よりも1日あたりの基礎代謝量(標準的な男性で1500、女性で1100kcalくらい)が200kcal低く、そのぶん脂肪がたまってお腹まわりが太りやすいのです。この遺伝子をもつ白人が8%に対して、日本人の34%がもっています。なお、冷え性はこの遺伝子の変異が引き起こすとされています」

それだけではなく、安静時の新陳代謝が進みにくい「PPARγ」は、欧米人の6割に対して日本人の92%がもっており、また糖質の細胞とり込みに関係する活性型インシュリンを調節し糖質を吸収しやすくする「カルパイン10」は、日本人の95%がもっています。

脂肪分解に関係する「β2AR」をもつ人は脂肪を分解しやすいのですが、日本人では16%に変異が見られ、脂肪が分解されにくい体質となっています。さらに脂肪燃焼に関係する「UCP-1」の働きが悪い人は、基礎代謝量として100kcalが毎日燃えずに余ってしまい、脂肪の貯金となって、太ももやヒップなどが太りやすくなります。この「UCP-1」は、日本人の25%が変異しているとされます。

「飢餓の時代にはありがたい存在であったこれらの飢餓遺伝子も、飽食の時代にはデメリットが大きくなり、予備軍も含めると2000万人ともいう糖尿病につながるほか、最近では、肥満症はがんになりやすいという研究報告もあります。ただし、研究では、ガリガリにやせた人より“小太り”の人のほうが長生きします。標準体重をややオーバーするくらいのほうが、代謝がよいのです。七福神も女性の弁財天(弁天様)を含めてみんな小太りの神様として、絵に描かれたり彫像になったりしています。適度の小太りであれば、あまり気にする必要はなさそうです」

和食が日本人の遺伝子を鍛える!?︎

和食 

日本人は肥満になりやすい遺伝子をもちながらも、世界的に見ると肥満率はとても低く抑えられており、肥満率の低さが世界一の長寿である要因に挙げられています。

「長寿のカギはその地域のライフスタイル、なかでも食習慣が重要で、毎日食べる栄養素やミネラル・ビタミンが、細胞内でいろいろな遺伝子を活性化させたり、逆に眠らせたりして、長寿プログラムが起動するのではないかと私は想定しています」と一石先生。

「日本人が昔から食べてきた和食には遺伝子を鍛える効果をもつものがたくさんあります。日本人は気に病みがちな遺伝子や肥満になりやすい遺伝子をもっていますし、心臓病やがんなどにもなりやすい体質があります。にもかかわらず日本人は『健康寿命』が世界一長いのです。ということは、もともともっている遺伝子にもまして、後天的な環境が寿命を押し上げている可能性が高いといえるでしょう。そのひとつが和食で、和食を中心とした食生活が日本人の遺伝子を鍛え上げたと考えてよいと思います」

長寿の背景には食事のほかに後天的なものとして医療制度や衛生環境などもあります。最新の遺伝子研究では、このように後天的な努力で遺伝子を活発にして才能を引き出したり、逆に食事などで遺伝子を抑えておくことで病気や肥満を防いだりできるということがわかってきました。

日本にある食材は1万2000種といわれ、世界一を誇ります。日本人が昔から食べてきた基本の和食は、飢餓の遺伝子を抑えておいてくれる可能性を秘めています。

文/庄司真紀

参考書籍/
『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』(アスコム)『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』(アスコム)

著者/
一石 英一郎一石 英一郎
いちいし・えいいちろう 1965年生まれ。兵庫県出身。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学/予防医学センター教授。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。世界の著名ながん研究者が名を連ねる米国癌学会(AACR)の正会員(ActiveMember)。DNAチップ技術を世界でほぼ初めて臨床医学に応用し、論文を発表。人工透析患者の血液の遺伝子レベルでの評価法を開発し、国際特許を取得。長年にわたり、遺伝子の研究を行っている。

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