くり返す便秘や下痢、腹痛など、お腹のトラブルを抱える人が年々増えていると言います。お腹の不調には食事を中心とした腸活が主流ですが、腸のスペシャリストで医師の小林弘幸先生は30年にわたる実績から、「腸トラブルの解消には運動療法が必要不可欠」と話します。今回は新書『腸の名医が30年かけてたどり着いたお腹が弱い人のための30秒腸活』からお伝えしていきます。
Contents 目次
なぜ私のお腹は弱いの?
腸に現れるさまざまな不調。便秘や下痢のほかにも、以下のようなことはありませんか?
・トイレに時間がかかる
・お腹が張る
・いきまないと出ない。残便感がある
・突然やってくる腹痛に悩んでいる
・げっぷやおならが臭い気がする
・外食した後はお腹が痛くなりやすい
・ストレスを感じるとすぐ下痢になる
・肩こり、腰痛、冷え性。お腹を触ると冷たい
こうしたお腹のトラブルの原因に挙げられるのが、「自律神経の乱れ」です。
「自律神経のバランスが崩れて交感神経優位の状態が続くと、腸のぜん動運動などが適切に行われなくなり、便秘や下痢などが起こりやすくなります」
夜更かしや過度なストレスなど現代的な生活によって自律神経が乱されやすくなってしまうのです。
もう一つは「腸内環境の悪化」です。
「腸内にはおびただしい数の腸内細菌がいますが、ストレスや食生活の乱れなどが原因で腸内細菌のバランスが悪化し、有害菌が優勢になると有害菌から出る有害な物質によって腸のぜん動運動が鈍くなり、便秘になりやすくなります」
あるいは逆に、有害物質を早く排出しようとして、ぜん動運動が活発になりすぎると、下痢が起こりやすくなります。慢性化した腸トラブルは整腸剤や下剤を服用してもなかなか解消されません。 薬に頼らず、食事などの内側のケアに加えて「とにかく運動を行い、上体を動かしたりして、体の外側から刺激を与えることが大切」と先生。
運動療法の効果は海外の研究でも証明されています。
アメリカのイリノイ大学では「座りっぱなしの生活をしている人に、6週間、持久力を鍛える運動をしてもらい、糞便を検査して腸内環境の変化を調べる」という実験が行われました。
その結果、腸の健康に欠かせない腸内の短鎖脂肪酸の濃度が上がっていることがわかったのです。
毎朝やろう! 小林式30秒腸活
95%の患者さんが改善した先生考案の30秒腸活。「腸もみ呼吸法」と「全身のばし」の二つの動きを習慣化することで腸から健康に!
1.腸もみ呼吸法
深くゆっくりとした呼吸をし、自律神経を整えながら、腸をマッサージする「腸もみ呼吸法」。体の内側と外側から腸に刺激を与え、ぜん動運動と便の排出を促し、腸内フローラを活性化させます。
【腸をもみながら3秒鼻から吸って、6秒口から吐く】これを30秒くり返します。
(1) 脚を肩幅に開き、リラックスしてまっすぐに立ちます。両手ろっっ骨の下をつかむようにお腹の横に当てましょう。
(2) ゆっくり背中を反らしながら息を吸います。
(3)ゆっくり上体を前に倒しながら息を吐きます。
2.全身のばし
全身のばしは、体をのばしながら、左右と前に倒すだけ。背すじや腰がのび、血行がよくなり、自律神経のバランスが整います。
【上体を左右と前に倒す】これを30秒くり返します。
(1)脚を肩幅に開き、リラックスしてまっすぐに立ちます。
(2)手首を交差し、ひじを伸ばして、基本の姿勢を作ります。
(3)息を吐きながら上体を左に倒して、息を吸いながら戻る。
(4)息を吐きながら上体を右に倒して、息を吸いながら戻る。
(5)息を吐きながら状態を前に倒して、息を吸いながら戻る。
Point
上体は真横に倒すことを意識し、斜め前に倒れないようにしましょう。しっかりのびたと思ったら、上体を元の位置に戻します。
『30秒腸活』は自律神経が副交感神経から交感神経に切り替わる朝に行うのがポイント。毎朝実践することで自律神経の切り替えがスムーズに行われるようになり、お腹の状態がよくなっていきます。
文/庄司真紀
参考書籍/『腸の名医が30年かけてたどり着いたお腹が弱い人のための30秒腸活』
著者/小林弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
順天堂大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属医学研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学小児外科講師・助教授を歴任。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手などのパフォーマンス向上指導に関わる。順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した”腸のスペシャリスト”。『医者が考案した「長生きみそ汁」』 (アスコム刊)などの著書のほか、「世界一受けたい授業」(日本テレビ)や「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBSテレビ)などメディア出演も多数。