近年、「糖質制限」などで血糖値にも注目が集まっています。血糖値の上昇を抑えたり安定させたりすることは、健康だけでなくダイエットにもうれしい作用が。
そこで今回は「納豆」に注目してみました。以前から「納豆が血糖値を抑える」といわれていましたが、それを裏づける研究発表があると聞き、さっそく取材に行ってきました。
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醤油、味噌、納豆の数値を比較!
その研究発表会は、6月8日に東京農業大学で開催された「第86回醤油研究発表会」。
春と秋、年に2回行われている研究発表会で、参加者は大学の教授などの研究者、醤油メーカーの技術者など専門家たち。ここで研究者たちが醤油の最新の研究結果を持ち寄り、さまざまな情報交換が行われています。
その中で、東京農業大学の舘博教授・辻聡助教らのグループから「麹菌DPP Ⅳを用いた発酵食品中の糖尿病予防成分の検索」という研究内容が発表されました。
その内容は、醤油、味噌、納豆といった醸造食品の中の血糖値上昇を抑える働きを持つペプチド「DPP Ⅳ阻害物質」の有無を検証するというものでした。
「DPP Ⅳ」は、活性が強くなりすぎるとインスリンの分泌を阻害する酵素で、このDPP Ⅳを阻害することによってインスリンの分泌がよくなり、血糖値の上昇も抑えられます。DPP Ⅳを抑える「DPP Ⅳ阻害物質」は、近年、2型糖尿病の治療薬としても使用されています。
発表では、醤油、味噌、納豆それぞれのDPP Ⅳ阻害活性の測定と比較の研究結果を公表。
研究結果として、醤油、味噌、納豆それぞれにDPP Ⅳ阻害活性が認められたものの、醤油と味噌は食塩の影響が強く、測定が困難。納豆は、高いDPP Ⅳ阻害率を示したことが発表されました。
さらに教授にお話を聞いてみました!
研究会の終了後、舘博教授と辻聡助教にお話を聞いてみました。
舘教授は、もともと醤油や味噌のDPP Ⅳ阻害活性について研究をされていたのですが、納豆にも可能性を感じて研究を進めたのだといいます。
「学会の発表でも説明しましたが、醤油や味噌は食塩がたくさん含まれていて、今の技術では分析が難しいんです。そこで、同じ発酵食品の納豆にもDPP Ⅳ阻害活性があるだろう、ということで納豆にも研究を広げたんです。自身の研究結果から、最近は糖尿病予防のために週に1回ほどですが納豆を食べるようにしています」(舘教授)
納豆は大豆でつくられているので、大豆もいいのでは? という気もするのですが、大豆と納豆では違うのだそうです。
「大豆より納豆のほうが、血糖値が上がりにくいんです。はじめは『食物繊維の働きでは?』と考えていたのですが、それだけではないということがわかりました。血糖値の上昇を抑制するペプチドが含まれていることがわかったんです」(辻助教)
「納豆は、微生物が大豆を分解してくれているので、低分子になっていて、吸収しやすいんです。発酵食品はブラックボックスと思っている人が多いかもしれませんが、微生物がいろいろな働きをしているんですよ。1つだけはっきりしているのは、とても複雑だということ」と舘教授。
納豆にどれくらいの効果があるのか興味がそそられますが、もっと詳しく研究していく必要があるのだそう。
これからの研究の成果にも期待が高まりますが、今回の研究発表からも納豆は健康にいい効果がありそうです。いままで納豆をあまり食べていなかったという人も普段の食事に取り入れてみては?
取材・文/小高希久恵