手っ取り早く痩せたいとき、多くの人が行う食事制限。ですが、そこには弊害が潜んでいることを忘れてはいけません。では、食事を極端に制限すると、体の中では一体どんなことが起こっているのでしょう? コンディショニング・トレーナーの桑原弘樹先生に教えていただききました。
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そもそも、脂肪が体につきやすいのはなぜ?
何もしないとすぐ増える脂肪、頑張って鍛えてもなかなか増えない筋肉。この違いは、どこにあるのでしょうか?
「人類が歩んできたおよそ500万年の歴史の中で、その大半は飢餓(きが)との戦いでした。そのため、私たちのDNAの中には、『飢えにどうやって立ち向かうか』という情報がインプットされています。十分な食料が手に入らなかった時代、エネルギーを大量に使い熱を生み出す筋肉よりも、エネルギーをたくわえる脂肪のほうが貴重な存在だったのです。『脂肪はつきやすく、筋肉はつきにくい』のは、そのころの名残。しかし、飽食の時代を迎えた現在には、合っていませんよね?」(桑原先生)
では、DNAに刻まれた飢えの情報とうまく付き合うためには、どのようなことを心がければ良いのでしょう?
「まず大切なのは『体に飢えを感じさせない』こと。激しいカロリー制限を行うことで、体に食料が入ってこない状態が続くと、脳は飢えを感じます。ダイエット中だからといって、必要以上に飢餓の情報を脳にインプットしてしまうと、脂肪を使おうとせず、余計に溜め込んでしまうことにつながります」(桑原先生)
頑張って食事制限をしているのになかなか成果が出ないという人は、脳が飢えを意識してしまっているのかもしれません。過剰なカロリー制限は控えたほうが良さそうです。とはいえ、飢餓を心配するあまり、過剰にカロリーをとりすぎるのもNG。余分なものは体に脂肪として溜め込まれてしまいます。足りすぎても、足らなすぎてもダメなのです。
糖質や脂質をとらないとどうなるか?
カロリー制限だけでなく、糖質制限や脂質制限も同じこと。1週間~1か月程度の短期間で行うのは良いですが、極端に制限することは避けましょう。
「糖質を制限するロカボダイエットが流行っていますが、その一番のメリットは抗糖化です。つまり体が糖化する(コゲる)のを防げる、ということ。通常、摂取した糖はエネルギーとして使われますが、余った糖は体内のたんぱく質と結びつきます。それが、人間の体温(36℃~37℃)と反応することで糖化が起こるのです。お肌がシワシワになるのも、糖化の表れ」(桑原先生)
ですが、糖質を全く摂取しないと、それはそれで弊害が起こります。体内にエネルギー源となる糖が無い場合、代わりに使われるのが「ケトン体」です。「ケトン体」はやがて「アセタール」という物質へと変化し、体内のたんぱく質と結びつきます。結果、糖質を摂取していなくても、体内では糖化が起こっていることになるのです。
一方、脂質を全く摂取しないとどうなるのでしょう?
「4年前に減量を行った際、1日に10g以上脂質をとらない生活を、半年ほど行っていました。そのときは、皮ふがボロボロの状態でしたね。もっともっと脂質をカットすると、どうなると思いますか? 実は、自分自身の力で脂肪を分解する能力が下がってしまうのです」(桑原先生)
脂質をとらない生活を続けると、6パックになるなど外見は良くなるそうですが、あまりに行き過ぎると、今度は内臓に溜まった脂肪は分解されにくくなり、逆に蓄積されてしまうのだとか。糖質をとっていないのに、糖化が起こる。脂質をとらないと、分解能力が下がる(体に脂肪が蓄積してしまう)。……なんとも不思議ですね。
短期間で成果が出るからといって、やみくもに極端な食事制限を行うのは危険です。みなさんも、気をつけましょう!
文/FYTTE編集部