主にアスリートの間で広がりを見せている「コンプレッションウエア」。伸縮性の素材で体表面を着圧することで、運動パフォーマンスや筋力回復を向上させると考えられていますが、その効果については研究結果が一致していません。そんななか、これまでの研究をまとめて詳しく分析した結果が日本の東北大学を中心にした国際研究グループから世界に発信されています。その効果はいかに…?
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さまざまな要素が効果に影響
運動すれば大なり小なり一時的に筋肉が損傷して筋力が低下します。ふつうの人なら日にちを開けて回復を待てばいいのですが、連日のトレーニングや競技がある運動選手はなるべく早く筋肉を回復させる必要があります。そのため冷却療法などさまざまな方法がとられていて、コンプレッションウエアもそのひとつとして活用されています。
このウエア、運動パフォーマンスの向上効果については、おそらく運動のタイプや体のどこに装着するかなど多くの要素が影響するために、研究によって評価は割れているようです。一方で、これまで筋力回復効果については肯定的な結果が出ていました。
ただ、装着するのが運動中か運動後かなど、やはりさまざまな要素がかかわってくるため、今回、日本の東北大学をはじめとする国際的な研究グループは、コンプレッションウエアの筋力回復効果に関するこれまでの研究を集めて結果を分析(「メタ解析」と呼ばれる手法)してみました。ウエアを装着したグループと装着しないグループで比較した研究(19件)を対象としました。
装着しても、しなくても変わらず!
一連の研究で確認されたのが、運動中や運動後にコンプレッションウエアを着けても、運動後の筋力回復を助けないようだということです。
運動直後から96時間後までのいろいろな時点で、ウエアを着けたグループと着けないグループで筋力の違いは見られませんでした。また、運動のタイプや体のどこに装着するかを考慮に入れても、違いは見られませんでした。
研究グループによると、今回の分析結果は信頼できる内容と説明しています。運動が筋力に与えるダメージを軽くするという意味ではほかの方法を考える必要があるとしています。ウエアについてはさらなる進化が求められるのかもしれません。
<参考文献>
Do Compression Garments Facilitate Muscle Recovery After Exercise?
https://www.tohoku.ac.jp/en/press/do_compression_garments_facilitate_muscle_recoverey.html
Négyesi J, Hortobágyi T, Hill J, Granacher U, Nagatomi R. Can Compression Garments Reduce the Deleterious Effects of Physical Exercise on Muscle Strength? A Systematic Review and Meta-Analyses. Sports Med. 2022 Apr 27. doi: 10.1007/s40279-022-01681-4. Epub ahead of print. PMID: 35476183.
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-022-01681-4
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35476183/