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CATEGORY : フィットネス |ストレッチ

ヨガとは違う! 心と身体をほぐして自分を大切にする新トレンド「ゆるらムーヴ」の癒し習慣

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渕上さん

コロナ禍以降、セルフケアやご自愛というワードが飛び交い、日本でも着実に根づいた“セルフラブ”の考え方。仕事に家事、趣味にと忙しく日々を過ごしている人が多い現代で、心身を労り大切にしていく考え方をとり入れたメソッド「セルフコンパッション(自分を慈しむ)×フィットネス」が新たなトレンドになると予想。そこでFYTTE「ヘルスケアトレンド2025」では、“ご自愛フィットネス”というキーワードを掲げました。
今回は、身体を通して心を癒す、新しい形の心身相関療法「ローゼンメソッド」を日本で広げる活動をされている渕上久美埜さんに「身体と心、自分自身を大切にしていること」について教えてもらいました。

Contents 目次

ある人との衝撃的な出会い&直感的に「ローゼンメソッド」を学ぶ

渕上さんのプロフィール画像

早速ですが、渕上久美埜さんってどんな人?ということで、プロフィール・経歴をご紹介します。これまでどんなことをしてきたなど経験を交えて、今回教えていただく「ローゼンメソッド」について。出会いとなったきっかけや、メソッドの資格をとろうと思った理由などを教えていただきました。

渕上 久美埜(ふちがみ くみの)
東京で舞台俳優として活動していた私は、本場の演劇を学ぼうとニューヨークへ渡米。acting schoolに通いながら、日系テレビ番組制作会社でスタジオ業務を担当し、日本人俳優や監督たちとオフオフ・ブロードウェイで数々の舞台公演を制作してきました。

12年のニューヨーク生活を経て、今度はドラマセラピーに興味を持ち、サンフランシスコの大学院CIIS(カリフォルニア統合学研究所)に進学しました。

人生の転機は2008年。大学の週末ワークショップで、ローゼンメソッドの創始者マリオン・ローゼンに出会いました。当時93歳だったマリオンの存在感は圧倒的で、「この人から学びたい!」と直感で決めました。

その春、宿泊型のワークショップに参加し、幸運にもマリオンの施術を実際に体験。そこで出会った講師陣の中でも、とくにモントレー校の校長ジェーン・マレックのムーヴメントワークに衝撃を受けました。
その秋からモントレー校でムーヴメント講師の勉強を始め、3年後にローゼンメソッド認定ムーヴメント講師の資格を取得。ちょうどその年に起きた東日本大震災の映像を見て、日本に帰ることを決意しました。

2012年の冬、石巻に5週間滞在して、被災者の方々にローゼン・ムーヴメントをお届けしました。やわらかい音楽と動きで心と身体をほぐすこのメソッドは、高齢者の方々にもすばらしい効果があることを実感。帰京後は東京の高齢者施設でクラスを担当したり、都内や地方でワークショップを開催するなどして、ローゼンメソッドを日本に広める活動を本格的に始めました。

2015年に神奈川県西湘地区に移住し、小田原を中心に活動。帰国後も定期的にカリフォルニアに通い続け、2019年春にはローゼンメソッド・ボディワーカーの資格も取得しました。

コロナ禍ではZoomを活用してムーヴメントクラスを継続。2025年にようやくリアルでの合宿を開催し、「ゆるらムーヴ」として実践できる人材を育てる活動をスタートさせています。

「ローゼンメソッド」とは? ムーヴメントで身体と心をケアする方法

ボディワーク

FYTTE:ローゼンメソッドとはどのようなメソッドなのでしょうか? 理論をはじめ、心身のストレスをリリースしたり、やわらかい音楽で身体をほぐす方法について教えてください。

渕上さん:ローゼンメソッドは、ドイツ出身の理学療法士マリオン・ローゼンが、カリフォルニア・バークレーで50年に渡り育み伝えてきた、身体を通して心を癒す、新しい形の心身相関療法です。ローゼンメソッドには、ボディワーク(触診治療)とムーヴメント(軽いダンス、体操)の2つの形があります。

「心と身体はつながっている」という考えをベースに、ストレスやトラウマで固くなった筋肉をやわらげていきます。

じつは、心の痛みを十分に感じきれなかった感情は、身体に残ってしまうんです。その感情は筋肉のこわばりや謎の痛みとなって現れます。ガマンを重ねたり、ショックなできごとがあったりすると、肩や首、腰がガチガチになってしまうのも、そのためです。

心が窮屈だと呼吸も浅くなるし、身体も固くなって血流も悪くなります。ムーヴメントでは、人に合わせるのをやめて、自分の身体と心に素直に動く時間を大切にします。

つまり、ローゼンメソッドは、固まってしまった身体を温めながらゆるめて、筋肉に封印された感情を解放するワーク、身体のこわばりを防ぐためのセルフケアワークです。

FYTTE:過去のトラウマやストレスによって固まってしまった心身をケアしてほぐすローゼンメソッドは現代人にとても必要なワークだと思います。似たような方法にヨガがありますが、2つのメソッドの違いを教えてください。

渕上さん:ムーヴメントによって心がおだやかに安定し、呼吸が深くなり、リラックスしていくという点では、一見ヨガと似ているように思えます。
ヨガとの決定的な違いは、「形にこだわらないこと」。自分の身体がいちばん気持ちいい・心地よいと感じる動きを見つけて、身体の声に従って動くことです。
講師の動きとは違う動きになったり、周りの生徒や音楽のテンポとずれてしまったりすることも多いのですが、全然OK! それを許して受け入れていくクラスです。

ヨガは、どうしても「正しいポーズ」をとろうとがんばってしまうことがありますよね。周囲から見て自分だけできていないと、自分の可動域を無視してがんばろうとしてしまうため、ケガをすることもあります。でもそれって、心も身体も緊張して固くなっている状態なのです。
ローゼン・ムーヴメントでは、「正しく」できているかどうかは問題ではなく、「気持ちよく・心地よく」動けていることがいちばん大事なのです。

ローゼンメソッド・ムーヴメントで「ご自愛ケア」

渕上さんのゆるらムーヴ

FYTTE:続いて、具体的なやり方を教えてください。また、ローゼンメソッド・ムーヴメントの代表的なワーク(動き)があれば教えてください。

渕上さん:ローゼンメソッド・ムーヴメントには、大きく分けて4つのパートがあります。以下のステップを順番に実施することで、最終的に深いリラクゼーション状態を体感していきます。 

1.ウォームアップ
関節や筋肉を温めて、その後のストレッチで筋肉が十分に伸びるための準備を整えます。
まずは身体の中心から始まる動きにゆだねていきます。型にはまった動きではなく、自分の身体が動きたいように動き、腕や肩を大きく広げていきます。肩甲骨をゆっくりほぐす動きで、胸がラクに開くようになり、肺に空気が入りやすくなります。 

2.ストレッチ 
ゆったりとした音楽に合わせて、瞑想的なストレッチを行います。頭で呼吸をしなきゃと思うのではなくて、身体が伸びることで自然に呼吸が深くなるのを味わいます。

3.ステップ・ダンス 
骨盤、脚、足まわりの筋肉や関節をほぐし、呼吸をよりラクにするための軽やかな動きで代謝を促進します。音楽によって身体が自然に動き出す本能を大切にして、ポーズや見た目を気にせず心のままに踊ります。 

4.寝ころび・リラクゼーション
最後は床やマット(ベッドの上)に横になって呼吸を整え、重力に身体を委ねて脱力し、深くリラクゼーション。背中や首の緊張を手放し、ゆっくりゆらす動きで日ごろがんばっている筋肉を休ませます。

ポイントは、きちんとしたポーズではなく、自分が心地よい範囲で、自分のタイミングで動いていきます。「他人と違っていい」「気持ちよさを追求しよう」という気持ちで、自分の内面に意識を向けながら動いていきます。まずは自分を大事にすることを身体で覚え、習慣にしていきます。

FYTTE:効果や体感は? 渕上さんはどのように変わりましたか? また、どんな人におすすめでしょうか。

渕上さん:効果の感じ方は、人それぞれの感受性の差によります。がんばりすぎるクセがついている人は、まず自分の身体の声を聞く練習から始まります。センサーが磨かれてくると、小さな変化にも気づけるようになります。

私自身は、入院していたときにベッドでやってみたら、固まった関節や弱った筋肉がおどろくほど動き出しました。そして、これまで「自分の声を大事にしてこなかった」ということにあらためて気がつきました。

健康な人はもちろん、運動不足の人、体調を崩した人、メンタルが疲れている人、妊娠中もしくは産後の人でも安全にお試しいただけます。一般のエクササイズやダンスクラスでハードルが高いと感じる人にこそ、おすすめしたいです。

また、ムーヴメントは、理学療法をベースにしていますので、リハビリとして利用することも可能です。少し疲れたハードワーカーの人や、ちょっとスローダウンしたい、自分を見つめ直したいと感じている人たちにも、ぜひやってみていただきたいワークです。

FYTTE読者のみなさんへのメッセージ・お伝えしたいこと

FYTTE:最後にこの記事を読んでいる読者へのメッセージがあればぜひ、お願いします!

渕上さん:日本ではまだなじみのない「ムーヴメント」という概念。これはがんばるエクササイズとは違って、自分のペースで、体調や心の状態に正直に動く「自分なりのフィットネス」のこと。まさに「ご自愛」や「セルフケア」と重なる考え方です。

自分の身体をいたわりながら、子どもに話しかけるようにやさしく動く。そうするとハッピーな気持ちが生まれて、それがまた身体を癒してくれる。そんな素敵な循環を、ぜひ体験してみてくださいね。

【渕上 久美埜/ふちがみ くみの】
■ローゼンゆるらムーヴHP https://rosenmove.jp/
■国際ローゼン・インスティテュート https://roseninstitute.net/
■ゆるらムーヴメントの入門書『動きで目覚める、癒しのボディセラピー』Amazon Kindle版、8月にペーパーバック版を出版 https://www.amazon.co.jp/dp/B0FGPWKJ7Z

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