ダイエットをきっかけにマラソンに取り組んだけれども、いつしか夢中になって、フルマラソンを目指している。そんな人もきっと多いのではないでしょうか。体重を減らせるし、フィットネスにもなるし、マラソンはいいことづくめですね。じつは、最近、そればかりではなく、「血管年齢」を若返らせる効果があるという研究結果が出てきているのです。アスリートでなくてもそうした効果が現れるというのがポイントです。
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アスリートの血管年齢が若いのはどうして?
若返るというのは血管のこと。研究グループによると、通常は年齢とともに血管は硬くなっていきます。健康な人であっても、こうして血管が硬くなることで病気になりやすくなっていきます。
これまでもアスリートだった人は、一般人より血管が硬くない、要するに血管年齢が若いとされてきました。長年のトレーニングのたまもので血管のしなやかさが保たれているというのです。
でも、一般の人はアスリートほどのトレーニングをするわけではありません。一般の人がダイエットや美容、フィットネスのためなどでマラソンに取り組んだ場合にはそうした血管年齢へのよい効果は現れるのでしょうか。
そこで今回、研究グループは、ランニング初心者であってもマラソンのトレーニングに取り組むことで動脈の硬化を軽くできるかどうかを調べました。
まず健康な男女139人を対象として、初めてマラソンを走る人向けのトレーニングプログラムを受けてもらいました。フルマラソンに出場するまでの6か月間に、毎週10~20kmを走るというメニューです。
トレーニング開始前とマラソン完走から2週間後に、心臓と血管の画像診断(MRIと超音波スキャン)のほか、体力検査、血圧と心拍数の測定を行い、心臓から伸びる一番太い血管である大動脈の生物学的な年齢を計算したのです。
体力や心拍数の改善より大きな効果
こうした試験の結果として、初マラソンに挑戦した人は、血管年齢が若返ることが確認されたのです。
まず、トレーニング開始前の測定では、やはり年齢の高い人ほど血管が硬くなっていました。
しかし、マラソン完走後に調べたところ、トレーニング前より大動脈の硬さが低下しており、血管年齢が若返っていたのです。おおよそ4歳ほど若返っていると計算されました。しかも、高齢の人、完走に時間がかかったような走るのがどちらかといえば苦手な人の方が、大動脈の硬さがより大きく低下することもわかりました。大動脈の硬さがどれほど低下するのかは、血圧の変化とは無関係でした。
イギリス心臓病支援基金の研究員で今回の研究論文の筆頭著者、アニッシュ・ブーバ博士は次のように述べています。「6か月間トレーニングを受けて、初めてのマラソンを完走した初心者ランナーで、大動脈年齢が4年若返り、収縮期血圧が4 mmHg下がりました。これは薬の効果に匹敵するもので、継続すれば生涯にわたり脳卒中のリスクがおよそ10%下がることになります」
「なにも一流アスリートでなくても、マラソンのメリットがあるのです。年配の人、ゆっくり走った人のほうが、効果が大きく現れたくらいですから」
フルマラソン前には、週に2時間足らず走っただけで効果が出たことになり、比較的、短いトレーニングで効果が出るのは、日々忙しい中でトレーニングにも興味がある人には朗報になります。
血管年齢が若くなると、もちろん全身の健康に直結してきますし、病気の撃退にもつながります。未経験の人もそんな効果をご褒美に、マラソンにチャレンジしてみてもいいかもしれません。
<参考文献>
Bhuva A et al. Training for a first-time marathon reverses vascular ageing. Presented during the Young Investigator Award session on Friday 3 May at 09:35 to 10:50 CEST in Sala Grande.
https://esc365.escardio.org/Congress/EuroCMR-2019/Young-Investigator-Award-session/191529-training-for-a-first-time-marathon-reverses-vascular-ageing