長年、多くの科学者によって、ジョギングや水泳といった有酸素運動が脳によい影響を与えることが示されてきました。脳の神経細胞の発達を促してくれると考えられているのです。このたび、米国の研究グループが、ヨガも同じように脳にメリットをもたらすことを報告しています。記憶や感情によい影響があるようなのです。
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脳全体への影響は?
国内外で人気のヨガ。日本ではヨガ人口が770万人という調査結果も。インドを起源とし、心身の鍛錬の手段として始まったとされるヨガは、呼吸とポーズ、瞑想をあわせて行うことで、体を整え、心身を安定させます。近年では、そうしたヨガ特有の呼吸法や瞑想法が医学的にも注目を集めるようになっています。
ヨガの身体的、精神的な健康効果に関する研究報告が増えるなかで、米国のグループは、これまでに行われた研究結果を調査し、ヨガと脳の健康との関係を分析しました。研究論文を検証し、11の研究を選んでヨガの脳に及ぼす効果について調べたのです。11の研究のうち5件は、ヨガ初心者に10~24週間、週に1回以上のヨガ教室に通ってもらい、実験の前後での脳の状態を比べる研究。残りの6件では、定期的にヨガをやっている人と、そうでない人の脳の違いを測るという研究です。
ヨガの効果はどこにある?
こうしてわかったのは、ヨガでもジョギングやウオーキングなどの有酸素運動をした場合と同じように脳の発達が起きているということでした。まず、ヨガをすることで記憶力と関係している「海馬」が大きくなっているとわかりました。それは有酸素運動でみられる海馬の発達とほぼ同じ。海馬は年を重ねると縮んでいくと考えられており、認知症やアルツハイマー病を発症すると、最初に影響を受ける場所です。
感情をつかさどる「扁桃体」も、ヨガをする人のほうが、ヨガをやらない人に比べて大きくなる傾向が。加えて、ヨガをする人では計画や意思決定、マルチタスクに関係している「前頭前皮質」などが大きくなり、意識的な活動をしていないときに働く脳の神経回路(デフォルトモードネットワーク)が活性化される傾向も示されました。
さらに、ヨガをする人にみられた脳の変化が、認知テストなどの能力向上につながっていることも示されています。研究グループは「ヨガは感情を抑制して、ストレス、不安、うつ症状を軽減させており、それが脳の機能を向上させている」と推測しています。今後のヨガの脳へのメリットの解明に期待がもてそうです。
<参考文献>
セブン&アイ出版「日本のヨガマーケット調査2017」
Experts review evidence yoga is good for the brain
https://news.illinois.edu/view/6367/805069
Yoga Effects on Brain Health: A Systematic Review of the Current Literature
https://content.iospress.com/articles/brain-plasticity/bpl190084