密閉、密集、密接の「3密」を避ける生活も定着してきました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の接触感染や飛沫感染を避けるため、ウイルスに接しないような生活の工夫が求められるようになっています。厄介なウイルスがどのようにうつるのかはまだわからない部分もありますが、英国の研究グループはウイルスが下水に含まれていると報告。トイレの衛生にも気をつけるとよいのかもしれません。
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ウイルスはどのようにうつる?
新型コロナウイルス感染症のパンデミックでは、人から人への感染をいかに減らすかに注意が向けられています。そうしたなかで感染源になり得ると注目されつつあるのが下水です。新型コロナウイルスに感染した人が、トイレからウイルスを下水へと排出している可能性があるからです。
最近までの研究から、実際に便のなかにも新型コロナウイルスが含まれているとわかってきました。たとえば中国の研究によると、新型コロナウイルス感染症においては呼吸器症状がなくなって、鼻やのどからウイルスが検出されなくなってからも、便のなかには33日間もウイルスが検出されていたと報告されているのです。
このたび英国の研究グループは最近の研究をまとめて分析し、便からのウイルス排出に注目して、下水から新型コロナウイルス感染症が広がることがあるのかについて解説しています。
トイレには要注意?
研究グループが指摘しているのは、やはり下水のなかのウイルスでも感染が広がる可能性があるということ。新型コロナウイルス感染症の患者は症状の現れないことも多いものの、こうした患者であってもウイルスを便に排出している可能性が高いよう。感染者がトイレで便を出し、そのまま下水のなかにウイルスがとどまってしまうこともあると指摘します。
さらに研究グループは従来のコロナウイルスの研究に基づいて、ウイルスは下水のなかでも14日間ほども感染性を保てる可能性があると推定します。これほど感染性が保たれるならば、下水が水滴になって空気中に漂うと、この水滴が粒子となって口から吸い込まれ、感染が起こる恐れもあるわけです。
研究グループは、下水のなかにどれくらいのウイルスが含まれているかの研究が急がれると説明します。今後も新型コロナウイルス感染症に注意し続ける必要がありそうですが、下水の扱いにも気をつけることになるかもしれません。実際、東京都など日本でも下水からのウイルスの調査が始まっていますが、身近なところでは、外出時にトイレの水を流すときにふたをするなど、気をつけることも大切になりそうです。
<参考文献>
Sewage poses potential COVID-19 transmission risk, experts warn
https://www.stir.ac.uk/news/2020/05/sewage-poses-potential-covid-19-transmission-risk-experts-warn/
Quilliam RS, Weidmann M, Moresco V, Purshouse H, O’Hara Z, Oliver DM. COVID-19: The environmental implications of shedding SARS-CoV-2 in human faeces [published online ahead of print, 2020 May 6]. Environ Int. 2020;140:105790. doi:10.1016/j.envint.2020.105790
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32388248/
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0160412020312873