今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でこれまでの常識がすっかり変わったと実感した人も多かったでしょう。ふだんの生活でも人と会う機会が減ったという人も多いかもしれません。一方で、こうした変化のなかで孤独感が強まっているとしたら問題にもなりそう。海外の研究では、特に若いころの孤独はその後のメンタルの病気につながる可能性があると報告されています。
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孤独を感じるとどのような問題がある?
孤独は健康の問題として問題視されています。日本では高齢者の孤独死の問題としてとらえられることがよくありますが、もっと若い年齢層でも影響はあるようです。2015年の米国から報告された研究によると、社会的に孤立をしたり、孤独感を感じたり、一人暮らしであったりすることは、死亡率をそれぞれ30%近く高めると示されています。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で人と会う機会が減っており、こうした孤独の問題が出やすい状況になっている可能性もあります。
米国バス大学の研究グループは子ども時代から青年期の孤独がその後のメンタルに悪影響を及ぼすのではないかと考え、今後に備える意味から過去の研究を分析しました。60以上の研究を対象として、孤独と将来のうつ病との関連を調べたのです。
うつ病の可能性が高くなる
分析から判明したのは、子どもから青年期に孤独を経験すると、将来、うつ病になる可能性が3倍にも高まるということです。孤独を経験した影響は9年間にわたって続くそう。問題になるのは、全然人に会わなかった、少しは人と会っていた、コミュニケーションはとれていたといった「孤独の程度」よりも、「孤独を感じていた期間」がどれくらい長かったかでした。
外出自粛の要請が解かれて徐々に日常をとり戻していますが、これまで長く自宅に閉じこもるような生活で孤独感に悩まされていた人もいるでしょう。今回の研究は子どもや青年期での影響を調べたものですが、日本でも真っ先に休校が進められたこともあり、同じように悪影響を受けた子どもは少なくないかもしれません。大人でも、慣れない生活が続いて精神的に落ち込んだと感じる人はいることでしょう。問題を感じたようなときには、カウンセリングを受けるなど対応を考えてもよいかもしれません。
<参考文献>
Holt-Lunstad J, Smith TB, Baker M, Harris T, Stephenson D. Loneliness and social isolation as risk factors for mortality: a meta-analytic review. Perspect Psychol Sci. 2015;10(2):227-237. doi:10.1177/1745691614568352
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25910392/
Loades ME, Chatburn E, Higson-Sweeney N, et al. Rapid Systematic Review: The Impact of Social Isolation and Loneliness on the Mental Health of Children and Adolescents in the Context of COVID-19 [published online ahead of print, 2020 Jun 3]. J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2020;S0890-8567(20)30337-3. doi:10.1016/j.jaac.2020.05.009
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32504808/
Impact of children’s loneliness today could manifest in depression for years to come
https://www.bath.ac.uk/announcements/impact-of-childrens-loneliness-today-could-manifest-in-depression-for-years-to-come/