寝不足でイライラしてしまうとしたら要注意。睡眠は美容と健康だけでなく、メンタル面でも大切という研究結果が集まりつつあります。経験的に思い当たる人もいるでしょう。そんななか、睡眠時間が短いと本当に怒りっぽくなるという、実験に基づく報告がありました。いら立たしい状況に対して、感情的に順応できなくなるようです。
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2つの実験研究で調査
住宅企業のセキスイハイムグループである住環境研究所が江戸川大学睡眠研究所とともに2019年に行った調査によると、睡眠に不満をもっている人は38%。このうち9割は睡眠時間が足りていないと回答していました。少なくない人々が睡眠不足の問題を感じています。そうした睡眠不足による影響としてメンタル不調にも注目が集まっていますが、その詳細として「怒り」や「喜び」など個々の感情への影響まで調べた細かな研究はこれからです。
このたび米国、アイオワ州立大学などの研究グループは、怒りの感情への影響について報告しています。睡眠時間が短いと怒りが増幅されるかどうか、2つの実験研究で調べたのです。まず、約200人の大学生に1か月間、夜の睡眠や1日のストレス要因、怒りの感情を記録してもらい、日誌を分析しました。
その結果、睡眠時間がふだんより短かった日には、より多くの怒りの感情を抱くとわかりました。その半分は「眠くてつらい」という気持ちとはあまり関係なく、ストレス要因が増えるせいでした。午後になると、余計怒りを感じやすくなるという報告もありました。
同じ状況でも怒りやすくなる
次に、約150人の地域住民を対象に、半数にはふつうに眠ってもらい、半数には2晩にわたり睡眠時間をおよそ5時間短くしてもらって(いずれも自宅で)、その後にラボで不快な雑音を聞いてもらって、反応を比較するという実験をしました。その結果、よく寝ているグループは雑音に慣れ、怒りの感情は少なめでしたが、睡眠不足のグループはより強く、大きな怒りの反応を示し、いら立たしい状況に対する感情的な順応力の低下が見られました。その原因は眠気でした。
この結果から、「睡眠不足は怒りの感情を増幅し、時が経つにつれてフラストレーションを増大させる」と研究グループ。睡眠不足という状況で怒りなど個々の感情的反応とその制御について検討する必要があると指摘しています。睡眠不足が続いてイライラしているとしたら、やはり睡眠をとることがそうした気持ちの乱れをおさめる近道といえるかもしれません。
<参考文献>
「睡眠状況に関する実態調査」について─日常生活の乱れが睡眠へ悪影響を及ぼす
https://www.sekisuiheim.com/info/press/20190311.pdf
Study finds that sleep restriction amplifies anger
https://www.sleepmeeting.org/study-finds-that-sleep-restriction-amplifies-anger/
Sleep, Volume 43, Issue Supplement_1, April 2020, Page A105, https://doi.org/10.1093/sleep/zsaa056.274
https://academic.oup.com/sleep/article-abstract/43/Supplement_1/A105/5846752?redirectedFrom=fulltext