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風邪になると新型コロナに強くなる? あらかじめもっている免疫がカギに。米国の研究報告
新型コロナウイルス感染症の感染を防ぐために重要な免疫機能。ウイルスが体に侵入しても、体内の免疫機能が有効であれば抵抗力が発揮され病気の悪化を防ぐことができると考えられます。海外の研究によると、一般的な風邪の経験が免疫機能に影響し、新型コロナウイルス感染症から身を守る可能性もあると報告されました。イヤな風邪ですが、思わぬ福音になるのかもしれません。
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冬の風邪で体が守られる?
冬になると発熱やのどの痛み、鼻水、くしゃみなどの症状が出てきて、風邪を疑うことも珍しくはありません。ただ今シーズンは新型コロナウイルス感染症の問題があって、風邪にも例年以上に敏感になってしまいます。いずれにせよ風邪をひくのは避けたい気持ちにはなりますが、風邪のおかげで新型コロナウイルス感染症から体が守られる可能性があるとすれば事情はやや変わるのかもしれません。というのも、コロナウイルスには複数の種類があって、風邪の原因になるタイプのコロナウイルスもあります。風邪を起こすコロナウイルスにかかった経験が意味をもつ可能性があるというのです。
米国ロチェスター大学医療センターの感染症専門家は、軽度から中等度の症状を示した新型コロナウイルス感染症から回復した26人、また6年前から10年前に採取された21人の健康な人の血液を比べて、「メモリーB細胞」という免疫機能を保つ免疫細胞の存在のほか、新型コロナウイルスを含めたコロナウイルスへの対抗力につながる、病原体の検出や破壊をする「抗体」というタンパク質 のレベルを調べました。
過去の風邪の経験も関係
ここから見えてきたのが、風邪にかかった経験によって、新型コロナウイルス感染症から身を守る効果につながる可能性があるということです。
というのは、風邪の原因になるコロナウイルスと新型コロナウイルスとの間には、スパイクタンパク質の部品になる「S2」というタンパク質に共通点があり、風邪のときにこのS2を破壊する免疫を獲得しているようだと判明しました。新型コロナウイルスに感染したときに、この免疫機能が生かされる可能性があると見られました。
さらに、新型コロナウイルス感染症にかかって回復した人では、免疫機能につながる「メモリーB細胞」が導き出されると初めて示されました。新型コロナウイルス感染症に一度かかると、次にはかかりづらくする免疫を強める働きがあると考えられたのです。
あらかじめ備わっている免疫と新しく作られる免疫の合わせ技によりコロナウイルスに強くなる可能性があるという結果です。今後の新型コロナウイルス感染症の対策を考えるうえでこうした研究が役立ってくる可能性もありそうです。
<参考文献>
Can the Common Cold Help Protect You from COVID-19?
https://www.urmc.rochester.edu/news/story/can-the-common-cold-help-protect-you-from-covid-19
Nguyen-Contant P, Embong AK, Kanagaiah P, Chaves FA, Yang H, Branche AR, Topham DJ, Sangster MY. S Protein-Reactive IgG and Memory B Cell Production after Human SARS-CoV-2 Infection Includes Broad Reactivity to the S2 Subunit. mBio. 2020 Sep 25;11(5):e01991-20. doi: 10.1128/mBio.01991-20. PMID: 32978311; PMCID: PMC7520599.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32978311/
https://mbio.asm.org/content/11/5/e01991-20