野菜や果物などに含まれる食物繊維は腸のなかで腸内細菌の栄養源になったり、便の容積を高めたりするなどして、腸の健康につながるとされます。こうしたメリットがある食物繊維ですが、このほど海外の研究から、がんの放射線治療の効果を高めるうえで食物繊維の摂取が影響するとの報告がありました。がんはますます身近な病気になっているだけに、その治療効果を考えるときに参考にするとよいかもしれません。
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食物繊維を摂取するとよい?
がんは日本でもかかる人が増えている病気です。その治療法は複数の選択肢があり、なかでも体にメスを入れずに治療する放射線治療は重要度が高まっているとされます。がんの放射線治療を受けたときに問題になるひとつは、腸のがんであれば、腸内に炎症を起こしやすいことがあります。というのも、腸の細胞は分裂が活発なので、放射線の影響を受けやすいと考えられているのです。
腸への影響から、骨盤内に収まる臓器のがんに放射線を受けた場合に、食物繊維をあまりとらないほうがよいという考え方がありました。食物繊維は健康上の利点が知られている一方、放射線治療の期間中は食物繊維の含有量が少ない食事のほうが、下痢などの胃腸症状を防げると考えられていたからです。しかし、これは根拠がないと考えられるようになっており、最近、食物繊維の豊富な食事をとると、むしろ放射線による腸内の炎症が鎮められると見直されてきています。
このたびスウェーデンのヨーテボリ大学、ルンド大学のほか、南オーストラリア大学の研究グループが、腸など骨盤内に収まる臓器のがんに対する放射線治療においてオートミールを摂取することの効果を検証しています。がん患者にとってよいと考えられている食品のひとつとしてオートミールのような食物繊維の豊富なものがあるため、実際のところ食物繊維豊富なオートミールを摂取することで、放射線療法の効果にどう影響するかについて、動物実験によって調べたのです。
食物繊維で炎症が静まる
その結果、食物繊維を豊富に含むオートミールを食べることで、放射線により引き起こされる炎症を抑えることが動物実験により確認されたのです。食物繊維をとらないほうがよいといわれたこともあるのに反し、むしろ炎症が少なくなるというメリットが確認されたことになります。
研究グループによると、こうした炎症を鎮めることで、がん治療の効果自体を高めるかはさらなる検討が必要だといいます。ただし、放射線治療の大きな副作用として腸の炎症があるので、食物繊維をとることで好ましい効果がありそうとのこと。こうした病気を経験して治療を受けている人は医療従事者と相談しながら、オートミールなどをとることも考えるとよいかもしれません。
<参考文献>
High-fibre diet, low level inflammation: sidestepping the effects of radiation
https://www.unisa.edu.au/Media-Centre/Releases/2020/high-fibre-diet-low-level-inflammation–sidestepping-the-effects-of-radiation/
Patel P, Malipatlolla DK, Devarakonda S, Bull C, Rascón A, Nyman M, Stringer A, Tremaroli V, Steineck G, Sjöberg F. Dietary Oat Bran Reduces Systemic Inflammation in Mice Subjected to Pelvic Irradiation. Nutrients. 2020 Jul 22;12(8):2172. doi: 10.3390/nu12082172. PMID: 32707913; PMCID: PMC7468988.
https://www.mdpi.com/2072-6643/12/8/2172
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32707913/