ここ最近、「膣若返り手術」や「デザイナー・ヴァギナ」という言葉をよく耳にするという人も多いのではないでしょうか。これは今非常に需要が高まっている女性器の形成手術のこと。しかし大陰唇の肥大が原因で女性器の機能的な問題に悩んでいる女性にとって、このような呼び方は問題の深刻さを軽んじていると思うようです。大陰唇形成手術は多くの女性の人生を変える、まさに「救世主」と米国からも報告されています。
Contents 目次
なぜ女性器の手術を受けるのか?
大陰唇とはあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、女性器の一番外側にある一対の皮膚の膨らみをいいます。そしてその大陰唇の肥大を切除し、形を整える手術が大陰唇形成手術です。大陰唇が肥大する原因には先天的なものから、外因性ホルモン、慢性的な刺激、出産、加齢、外部の物理的な要因によって起こるものまであります。その症状には、引きつり、感染、女性器の衛生状態の悪化、性交痛、運動中の痛み、衣類の擦れなどが挙げられます。
このような悩みをもつ女性は多く、米国形成外科学会の報告によると2019年に行われた大陰唇形成手術の数は1万1000件にも上るそうです。その一方で、手術に対し否定的な議論も根強くあり、また手術後の成果を詳しく調べた研究も報告数が限られているのが現状。
そこでこのたび米国カリフォルニア州の形成外科医の研究グループは、大陰唇形成手術を受けた女性62人を対象に、症状がどのように改善したのか詳しく調べました。2016~2017年に、大陰唇肥大で治療を受ける女性62人(平均年齢33歳)にアンケートに回答してもらい手術前の症状を確認。2019年に再度アンケートに回答してもらっています。
コンプレックスとさようなら!
こうしてアンケートの回答からわかったのは、女性全員が手術前には大陰唇の肥大でよくみられる症状のうち必ずどれかひとつがあることでした。
最も多かったのが「見た目が気になる」で93.5%の回答率。そのほかには、セックス中に引きつった感覚がある(66.1%)、衣類の不快感(58.1%)が続きました。また大陰唇の肥大がコンプレックスとなり自信がなくなっていることなども挙げられており、全体として1人当たり平均6.5個の症状が見られました。ほとんど(82.2%)が「トリム切除法」と呼ばれる、肥大部分を切除・縫合して大陰唇の形を整える手術を受け、残り(17.7%)は「エッジ切除法」と呼ばれる大陰唇の厚みを縮小させる手術を受けていました。
手術後には、62人中58人(93.5%)が、手術前の症状がまったくなくなっていました。女性のほぼ全員(93%)がコンプレックスがあり人目を気にしていましたが、手術後にはその数もわずか6.5%まで減少。セックス中に引きつるような感覚があったり、自分の魅力に疑問を感じていたりした女性(各66.1%)も、手術後にはどちらも目覚ましく改善が見られていました。また、女性の半数以上(64.5%)が、自己肯定感やパートナーとの関係にマイナスの影響が出ていると回答していましたが、手術後には自己肯定感のマイナスを感じる人は1.6%だけに。パートナーとの関係への影響に関してはまったく無くなっていたのです。
衣類の不快感も同様に、衣類着用時のねじれ(58.1%から3.2%)、きつめの衣類を着用したときの不快感(56.5%から4.8%)、衣類の選択肢の限定(54.8%から3.2%)、体にフィットしたスポーツウエア着用時の見た目(46.8%から1.6%)に対するマイナス面がそれぞれ改善していました。水着に関しても女性の38.7%が水着から見えてしまうことを気にしていたのに対し、手術後には1.6%まで改善していました。
今回の研究では、大陰唇形成手術は精神的にも身体的にもプラス効果が大幅に見られたと研究グループは指摘。「この手術によって女性の生活の質が劇的に改善することが明らかになった」と説明し、大陰唇形成手術の積極的な実施を推奨しています。日本でも行われている治療ですが、悩みがある人は参考にするとよいかもしれません。
<参考文献>
New Study Explores Symptomatology, Quality of Life Before and After Labiaplasty
https://www.plasticsurgery.org/news/press-releases/new-study-explores-symptomatology-quality-of-life-before-and-after-labiaplasty
Sorice-Virk S, Li AY, Canales FL, Furnas HJ. Comparison of Patient Symptomatology before and after Labiaplasty. Plast Reconstr Surg. 2020 Sep;146(3):526-536. doi: 10.1097/PRS.0000000000007081. PMID: 32842103.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32842103/