「新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、眠れない、疲れが取れない、食欲がないなどの症状を訴える人がふえています。こうした症状は自律神経の乱れも原因のひとつです。そこで自律神経のバランスを整える方法として注目されるのが、腸活です。コロナ禍に負けない体になるために、『女性の自律神経の乱れは腸で整える』(PHP)等の著書を持つ小林メディカルクリニック東京院長の小林暁子先生に、自律神経の乱れを腸から整える方法について伺いました。
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腸の働きがよくなれば、副交感神経が高まる
ストレスなどで乱れた自律神経のバランスを整えるには、どうしたらよいのでしょうか。小林先生は、スバリ「腸を整えることで、自律神経も整う」と話します。まず、腸のしくみと働きについて、小林先生が解説します。
「腸は、口から肛門まで続く消化管の一部で、大きく小腸と大腸に分かれます。小腸は、胃から続く器官で、胃で消化しなかったものを消化し、体に必要な栄養素を吸収します。大腸は、小腸で栄養素が吸収された消化物から水分を吸収し、便にしながら直腸へ送る“ぜん動運動”を起こします。そして、直腸に便がたまると拡張して、便意が脳に伝えられます。すると、直腸が収縮。便が押し出され、排便が行われます。この一連の働きがスムーズであれば、体に必要な栄養素がきちんと吸収され、不要な毒素は排出され、健康を保つことができます」
※腸の働きについて、さらに詳しく知りたいときは、こちらをチェック。
では、自律神経と腸は、どのような関わりがあるのでしょうか。
「本来、交感神経が優位になると、臓器は活発に動きます。しかし、胃や腸は副交感神経の働きで収縮します。つまり、リラックスした状態でこそ、胃や腸の働きは活発になるのです。ストレスで便秘になることがあるのは、交感神経が過剰に優位になり、副交感神経の働きが低下してしまうからです。腸の働きをよくするには、副交感神経を高めるようにすればいいのですが、逆に、腸の働きがよくなれば、副交感神経の働きも高まっていくともいえるのです」
なるほど。腸内環境を整えることで、副交感神経が優位になり、相対的にストレスなどで高ぶった交感神経が鎮まるというわけですね。
腸内細菌のバランスがよいと、自律神経バランスも整う
「腸内環境を整えるには、腸内細菌のバランスがカギになります。腸内には、多様な菌が存在していますが、働きによって善玉菌と悪玉菌と日和見菌に分かれています。日和見菌と悪玉菌も共存しつつ、善玉菌が優勢な状態が、腸内環境としてはベストです。
「悪玉菌が増えて腸内細菌のバランスが崩れると、栄養素の吸収が悪くなり、吸収されなかった栄養素が腸に残ります。それが腐敗して毒素を出し、腸内細菌のバランスをさらに悪化させ、血液を汚していきます。この汚れた血液によって、肝臓や心臓、腎臓などの臓器を傷つけ、これらの臓器をコントロールしている自律神経のバランスもくずれてしまいます。逆に、腸内細菌のバランスが整っていれば、血液がきれいになり、自律神経のバランスも整います」
また、便秘の解消も必須です。
「便秘の解消には、食物繊維がおすすめです。腸のぜん動運動を促し、善玉菌を増やす働きもします。さらに、ヨーグルト、チーズ、ぬか漬け、キムチといった発酵食品も積極的にとりたいですね」
※便秘解消と食物繊維などのとり方について、くわしくはこちらを参考に。
自律神経のバランスを整えるセルフメンテも習慣に
便秘を改善するなど腸内環境を整えながら、自律神経のセルフメンテナンスも行ってきましょう。
小林先生がおすすめする自律神経メンテを紹介します。
【朝の自律神経メンテ】
●朝起きたら、コップ1杯の水を飲む。
●カーテンを開けて、朝日を浴びる。
●朝食をとる。
●ゆっくりできる時間をもつ。
●意識して、深い呼吸を行う。
●口角を上げて、「笑顔」を作る。
「朝の寝起きは、睡眠中に優位だった副交感神経から、交感神経優位の状態に切り替わる時間帯です。自律神経のバランスを整えるには、このスイッチがスムーズに行われることが大切。早寝早起きを習慣づけ、朝型の体内リズムを安定させるようにしましょう。出勤前に時間の余裕ができれば、ゆっくり朝食をとったり、お茶を飲んだりすることもできます。それによって気持ちが落ち着き、排便も促されます。また、朝からゆううつなときは、にっこりと笑顔になってみましょう。表情筋の変化が脳の視床下部を刺激して、副交感神経の数値が高くなることが、実験でわかっています」
【夜の自律神経のメンテ】
●夕食は就寝の3時間前までに済ませる。
●寝る前のスマートフォンや飲酒は避ける。
●運動をするなら、ストレッチやウォーキングなど軽い運動で血流をよくする程度に。激しい運動はしない。
●ぬるめのお湯で入浴する。
●心が落ち着くことをする。
「夜は、スムーズに眠れるように副交感神経を上げておくことが大事です。食事中は交感神経が優位になるので、遅い夕食や夜食はNGです。軽いストレッチやぬるめのお湯で入浴したりして、リラックスしながら過ごしましょう」
次回は、自律神経を整えるための、腸タイプ別の便秘解消エクササイズを紹介します。
取材・文/海老根 裕子