菜食については研究が進んでいて、心臓や血管の病気や生活習慣病を防いで健康によいとされる一方、ビタミンB12など一部の栄養素が不足する心配が指摘されています。そんななか、菜食中心の人、特にヴィーガンの人は、肉を食べる人に比べてある問題が起こりやすいとの報告が。カルシウムとたんぱく質が関係するようです。
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5万5000人の追跡データ
ダイエットでも、美容でも、何を食べるかは大問題。そうしたなかで話題に上ることが多いのが、肉や魚、卵、乳製品などの動物性たんぱく質を食べずに、菜食主義を徹底するヴィーガンかもしれません。野菜や果物などは健康によいとされますから、体によい影響があるようにも映ります。でも、本当に健康に悪影響がないのか不安視する声もあります。
今回の報告は、英国オックスフォード大学などの研究グループから。食事と病気との関連性を調べている英国の追跡調査のデータを使って、分析の結果を報告しています。注目したのは、食事と骨折リスクとの関連性です。この追跡調査からは、以前に別の分析研究で、ヴィーガンの人で脳卒中が増える可能性を示す結果が得られています。
このたび、研究グループは調査参加者のうち約5万5000人のデータを分析。肉を食べていた人が約3万人、菜食でも魚は食べるペスカタリアンが約8000人、卵や乳製品は食べるベジタリアンが約1万5000人、ヴィーガンが約2000人でした。18年の追跡期間中に、4000件近い骨折が発生していました。
「バランスよい食事」の必要性
こうして今回明らかになったのが、肉を食べていた人に比べて、ペスカタリアンも含めた菜食の人は骨折のリスクが高かったことです。なかでも特にリスクが高かったのがヴィーガンの人。とりわけ骨盤と大腿骨のつけ根部分に当たる股関節(大腿骨頸部)の骨折リスクが、肉を食べていた人の2.3倍だったほか、脚や脊椎の骨折リスクも高いという結果でした。
ただ、骨折リスクに関係するとされるBMIとカルシウムおよびたんぱく質の摂取量を計算に入れて分析すると、肉を食べていた人とのリスクの差が少し小さくなりました。菜食の人でもたんぱく質やカルシウムを工夫して摂取できていればリスクは低くできることになります。
この結果から、平均的にヴィーガンの人はBMIが低く、骨の健康に必要なカルシウムおよびたんぱく質の摂取量が少ない点を研究グループは指摘。「菜食には健康によい効果がたくさんあるので、不足する栄養素を補ってバランスのとれた食事になるよう気をつけることが大切」と注意を促しています。
今回のデータはほとんどの対象者の人種が白人で、性別は4分の3が女性であるため、人種、民族や性別による違いをさらに調べる必要があるそうです。
<参考文献>
Vegans, vegetarians and pescetarians may be at higher risk of bone fractures than meat eaters
https://www.biomedcentral.com/about/press-centre/science-press-releases/23-11-20
Tong TYN, Appleby PN, Armstrong MEG, Fensom GK, Knuppel A, Papier K, Perez-Cornago A, Travis RC, Key TJ. Vegetarian and vegan diets and risks of total and site-specific fractures: results from the prospective EPIC-Oxford study. BMC Med. 2020 Nov 23;18(1):353. doi: 10.1186/s12916-020-01815-3. PMID: 33222682; PMCID: PMC7682057.
https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-020-01815-3
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33222682/