年をとれば体も老化してしまいます──。避けがたいとはいえ、なるべく遅らせたいところ。現代では、年齢とは別に体がどれくらい老化しているのか細胞レベルで知る方法がいろいろと発見されています。このほど海外研究から、メタボやうつ病など5つの要素が老化にいちばん関係するようだという報告がありました。アンチエイジングを考えるときに押さえておくべきポイントになりそうです。
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DNAやタンパク質で老化レベルがわかる
年齢は生まれてからどれくらい時間が経ったかを示していますが、体の年齢、つまり生物学的にどれくらい老化しているかを示すものとして、DNAやタンパク質など、分子レベルでさまざまな指標が発見されています。そして、それぞれの指標が体だけでなくメンタル面での健康と関連していることもわかっています。そうしたなかで、オランダと米国の研究グループは、これらの指標が互いに関連しているのか、同じ老化のレベルを示しているのかといった点について、初めて総合的に検証しました。
使用した指標は、染色体の末端にあって年齢とともに短くなる「テロメア」、DNAとRNAの化学的な変化、体内のタンパク質と代謝物質の変化という5種類。オランダのうつ病や不安症の研究に参加した3000人近くの血液サンプルから、それぞれの指標による老化のレベルを判定し、指標同士の関連性などに加えて、ライフスタイルや心身の病気といったさまざまな要素と老化レベルとの関連性について分析しました。
メンタルも老化に関連
こうして判明したのは、「男性であること」「高いBMI」「メタボ」「喫煙」「うつ病」という5つの要素が、生物学的な老化が進んでいる状態に最も関連したことです。老化の指標それぞれについては、同じような増加を示すといった関連性はあまり見られず、特定の要素とのつながり具合もさまざまでした。ただ、5つの指標すべてをまとめた複合スコアは、指標個々のスコアよりも老化に関わる要素と高い関連性が見られました。
これらの結果から研究グループは、生物学的な老化がわかるさまざまな指標は、同様の部分もあるが概して異なる老化レベルを示し、総合した結果が体の老化の状態を最もよく表すと思われると結論。体のいろいろなシステムが相互作用して、老化のレベルを高めていると考えられます。また、ライフスタイル要素のほかに、うつ病が複数の指標と関連したことから、メンタル面での健康と生物学的年齢との重要な関連性が浮かび上がった点も指摘しています。
<参考文献>
Male sex, BMI, smoking and depression all increase biological age
https://elifesciences.org/for-the-press/2adbe814/male-sex-bmi-smoking-and-depression-all-increase-biological-age
Jansen R, Han LK, Verhoeven JE, Aberg KA, van den Oord EC, Milaneschi Y, Penninx BW. An integrative study of five biological clocks in somatic and mental health. Elife. 2021 Feb 9;10:e59479. doi: 10.7554/eLife.59479. PMID: 33558008; PMCID: PMC7872513.
https://elifesciences.org/articles/59479
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33558008/