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睡眠に関するその知識は思い込み!? 最新情報をもとにドクターが解説!
新型コロナウイルスの流行が長期化する中、リモートワークなどで睡眠リズムを崩したり、睡眠不足になったりしがち。巷には睡眠に「いい」「悪い」という情報がたくさんあるので参考にしたいけれど、その情報って本当なの? そこで、現役医師たちが健康な体づくりのポイントを解説した書籍『臨床経験豊富な100人の専門医が教える! 健康 医学 ~本当はカラダに良いこと 本当はカラダに悪いこと』の編者で現役医師の梅岡比俊先生にインタビュー。
「睡眠にいい」といわれていることをピックアップし、最新の情報に基づく見解を語ってもらいました。
Contents 目次
その情報、本当は「睡眠にいいの?悪いの?」教えて!
Q:お風呂から出てホカホカのうちに寝たほうがいい?
答えは × 90分前に入浴して入眠スイッチを入れて
「人間には、脳の温度「深部体温」と、体表面の温度「皮膚温度」があります。そして、深部体温には急激に下がると眠くなるという“睡眠スイッチ”の役割があります。深部体温を急激に下げるのに効果的なのが入浴です。
例えば、40度のお風呂に15分入ると深部体温は0.5度上がり、90分かけて元に戻ります。ですから、寝る90分前に入浴をすませると、ベッドに入るころに深部体温が下がってスムーズに入眠できるというわけです」(梅岡先生)
Q:美容のためには夜10時~午前2時は寝たほうがいい?
答えは △ 深夜2時~3時は深く眠ることが大切
「肌にいい成長ホルモンが多く分泌されるのが夜10時~午前2時ということで、その時間は寝ていたほうがいいといわれていますよね。一方で、成長ホルモンがまとめて分泌されるのは睡眠の最初の3時間で、人間の体内時計の活動期と休息気が重なり合うのが午前3時だからという理由で『睡眠の最初の3時間に午前3時が含まれるようにするといい』という説もあります。
体のバイオリズムから考えると、夜中の2時~3時あたりにしっかり睡眠をとるといいというのは確かで、この2つの説はどちらも一理あります。そのため僕の中でも、どちらがいいのかは答えが出ていません。ただ、現代の生活で必ず夜10時に寝るというのは現実的ではないし、『10時に寝なければ!』と固執するとストレスとなり不眠につながるなんていうことも。自分の生活を考えて、うまくとり入れることが大切です」
Q:冷え性の人は靴下をはいて寝たほうがいい?
答えは × 手足の放熱を妨げると入眠準備ができません
「人間の体は、寝るとき、手足から熱を放出して、深部体温を下げることで眠りにつきやすい状態になります。ところが靴下をはいたまま寝ると、手足から熱が発散されないので深部体温が下がらず、入眠の準備ができなくなってしまうわけです。どうしても足が冷えてつらいという場合は、そのままはき続けないで、ある程度温まったら脱ぐようにするといいですね。
ただ、医学的にどうであれ、自分が快適に寝られることのほうが重要です。靴下をはいたほうが寝やすいのかそうでないのか、自分で試してみて、快適なほうを選ぶのがいいと思いますね」
Q:眠れないときは、いったんベッドから離れたほうがいい?
答えは ○ ベッドを出て、「眠れない」ということを忘れて
「これについても『ムリに寝ようとしないで、いったんベッドから離れて違うことをしてみるのがいい』という説と、『眠れなくても疲れがとれるので、ベッドで横になっていたほうがいい』という説があります。
僕は、現代人には前者のほうが合っているのではないかと思っています。それは、眠れない状態のままベッドにいると『眠れない、眠れない』とあせりを感じて、余計に眠れなくなってしまうからです。ただし、これも人それぞれ。両方やってみて、自分に合うほうをとり入れてください。睡眠を学ぶとき『寝られなくて死んだ人はいない』という話をよく聞かされます。ずっと寝られない人はいないということです。『眠れない』ということを気にしすぎないようにする、というのも効果的だと思いますよ」
Q:寝る前に水分をとったほうがいい?
答えは ○ 失われる水分を補って。飲むなら水がおすすめ
「睡眠中は呼気や汗によって体内から約500mlもの水分が失われます。とくに暑い季節は脱水の恐れもあるので、水分補給は大切です。就寝中にトイレに起きるのがイヤだから寝る前に水分をとらないようにしているという人もいると思いますが、睡眠を妨げない程度に水分補給したほうがいいですね。また、よく「寝る前にホットミルクを飲むとよく眠れる」といわれますが、僕は、睡眠中に胃腸に負担がかかるのではないかと思っています。寝る前に飲むなら水がおすすめです」
参考資料
『臨床経験豊富な100人の専門医が教える! 健康 医学 ~本当はカラダに良いこと 本当はカラダに悪いこと』
取材・文/小高 希久恵