室内の空気にただよう汚染物質を減らすには、部屋の換気が大切。その重要性はコロナ禍で再認識されています。そんななか海外研究より、会社や学校の教室などのように、天井に空調がある場合、暖房を使ったときには空気が部屋の下まで届かず、空気がよどみがちと報告されました。換気を意識するとよさそうです。
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現実に近い状況で拡散具合を調査
新型コロナで換気の重要性がいわれていますが、冬に近づくにつれて外が寒いことからおっくうになりがち。そこは気をつけるとよいかもしれません。
天井に空調装置がある場合、意外と空気がよどむことが以前から知られていたそうですが、実際の会議室や教室になるべく近い形でリスクが初めて数値化されました。
米国エネルギー省に所属するカリフォルニア州ローレンス・バークレー国立研究所の研究グループは、8体の実験用の人体模型を使い、会議のように円形に並べた場合と、教室のように同じ方向を向けて数列に並べた場合の2つの状況で、人の口から出る“エアロゾル”の拡散具合を調べました。
エアロゾルは、吐く息に含まれる微細な(数μm、μは100万分の1)粒子で、大きな粒子が“飛沫”と呼ばれます。今回の研究では、空気で運ばれるこの微細な粒子に着目しています。エアロゾルの動きを調べるには、吐く息に含まれる二酸化炭素(CO2)の動きを調べればよいことが過去の研究でわかっているため、人体模型の口の位置からCO2を出すようにしました。そして、さまざまな位置の人体模型からCO2を排出するとともに、天井の空調装置から冷たい空気や暖かい空気を出して、室内に配置したセンサーでCO2の減り具合を測定しました。
冷たい空気や送風で十分に循環
ここからわかったのが、空調装置から暖かい空気が出ると、温度の異なる空気の層ができて室内の空気全体があまり循環せず、人体模型の頭の辺りの高さまできれいな空気が届かなくなってしまうことです。その結果、空気が十分に循環する場合に比べて、人体模型の辺りでCO2が5〜6倍の濃度で滞留するケースさえ見られました。冷たい空気や、送風だけの場合は、温度の異なる空気の層ができず、室内の空気はよく循環しました。また、ポータブルの空気清浄機を使うと(下から空気を吸い込んで、上から出す構造)、空気が十分に循環したうえ、きれいにろ過されました。
新型コロナウイルスの観点からいえば、天井から暖かい空気が出ている状況では、感染した人がいると、たとえ2m以上の距離をとっていても、その人の吐く息に含まれるエアロゾルに高い濃度でさらされる可能性があるということになります。ただし、研究グループは「だからといって感染リスクが上がるということではない。感染リスクは多様な要素が影響している」指摘。そのうえで換気がよくないと汚染物質が高濃度で滞留する場所ができることに注意をうながしています。
<参考文献>
Poorly Circulated Room Air Raises Potential Exposure to Contaminants by up to 6 Times
https://newscenter.lbl.gov/2021/09/22/poorly-circulated-room-air-raises-potential-exposure-to-contaminants-by-up-to-6-times/
Singer BC, Zhao H, Preble CV, Delp WW, Pantelic J, Sohn MD, Kirchstetter TW. Measured influence of overhead HVAC on exposure to airborne contaminants from simulated speaking in a meeting and a classroom. Indoor Air. 2021 Sep 3. doi: 10.1111/ina.12917. Epub ahead of print. PMID: 34477251.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ina.12917
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34477251/