ストレス社会といわれる現代で増えているのが、20代、30代の女性の“更年期障害”。更年期のような、ほてりや冷え、疲労感など不調を感じる若い女性が増えています。こうした若年性更年期障害は、強いストレスからくる自律神経の不調とも関連していて、自律神経のケアも大切になってきます。今回は、順天堂大学医学部教授の小林弘幸先生の新著『結局、自律神経がすべて解決してくれる』からお伝えしていきましょう。
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自律神経と更年期障害
自律神経が乱れる大きな原因は、ストレス、不規則な生活習慣、加齢が3大要因です。自律神経は脳や内臓をコントロールしているので、精神的には不安、不眠、情緒不安定、イライラ、集中力の低下などがあり、身体的には頭痛、動悸、息切れ、めまい、肩こり、便秘、肌荒れ、疲れやすくなる、倦怠感、冷え、息苦しい、手足のしびれといった不調が現れます。
「この程度なら我慢できるというのではなく、これらの症状はサインだと考えてください。アラームが鳴っているのにそのまま放置しておけば、もっと深刻な症状を招く恐れが高くなります」と小林先生。
そして、40代後半以降の女性に起こる更年期障害も、ホットフラッシュや月経不順、動悸、不安感など、自律神経の不調と似たような症状が現れます。
「私はこうした典型的な更年期障害の症状が実際は自律神経失調症そのものであると考えています。更年期障害におけるさまざまな症状も、自律神経が乱れていると、より重たくなってしまうことがわかってきました」
若い女性の更年期のような不調に注意
更年期とされる時期は、平均的に閉経する年齢のプラスマイナス5歳、つまりは45〜55歳ごろと考えるのが一般的ですが、それ以下のより若い年齢の女性にも、更年期障害のような症状が増加しています。
「30代、あるいは20代でも女性ホルモン“エストロゲン”の量が減ってしまう例があります。女性ホルモンを分泌しているのは卵巣ですから、20代や30代の女性が、卵巣から出る女性ホルモンが減ってしまっているという状況は考えにくいのですが、同時に、自律神経との関係で読み解いていくと、説明がつくのではないかと考えられます」
若年性更年期障害とされる女性は、多くの場合、強いストレスを受けていて、 自律神経を乱されている状態にあるそうです。
ストレスで自律神経が乱れ、卵巣にも悪影響
「卵巣がストレスに弱い臓器であることはたしかです。したがって、ストレスによって女性ホルモンが減少することは起こりえます。一方で、女性ホルモンが減少したからといって、必ずしも“更年期障害”を起こすわけではありません。ということは、なんらかの理由で強いストレスを受けている若い女性のなかにも、更年期障害のような症状を訴える人もいれば、そうでもない人も存在しうると考えられます」
また、閉経前後の更年期では女性ホルモンの減少は誰にでも起こるのに、更年期障害とされる症状を強く訴える人もいればほとんど感じない人もいます。
「私はむしろ、強いストレスを受けていることによる“自律神経失調症”のケアをしてほしいと思います。なぜなら自律神経の乱れによって、卵巣も影響を受けるからです。ストレスを受けて自律神経が乱れることで女性ホルモンは減少しますし、“若年性更年期障害”として認識している症状も同時に起きている可能性があるということです」
自律神経をつかさどる脳の視床下部は、女性ホルモンの分泌にも関係しているため、自律神経が乱れると女性ホルモンの分泌も乱れやすくなるのです。
自律神経の不調による症状はどの世代にも起こりえます。ストレスや不規則な生活など、若いうちは無理が効くので、頑張り過ぎてしまうのも要注意ですね。若い世代の人で更年期と似たような症状があったら、まずは自律神経を整えるケアから始めてみてはいかがでしょう。
次回は自律神経とがんの関係について最新研究の情報をお伝えします。
文/庄司真紀
参考書籍
『結局、自律神経がすべて解決してくれる』(アスコム)