免疫系や炎症反応において大切だと注目されているミネラルのひとつが亜鉛です。多くの呼吸器系ウイルスに対する抵抗力をもつうえで重要と考えられています。このたび、過去の研究を分析した結果、亜鉛は風邪やインフルエンザのような症状をたしかに防いで、かかっても症状を軽くする可能性があると報告されました。
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亜鉛は感染症予防に効果的?
亜鉛が呼吸器系ウイルスに対しての抵抗力を示すことが過去の研究から示されてきました。こうしたなか、今回オーストラリアの西シドニー大学などの研究グループは、亜鉛をとるグループととらないグループに分けて、急性のウイルス性呼吸器感染症の予防および治療効果を比較した研究をデータベースから収集。こうした結果をまとめて分析してみました。
28件の研究(合計参加者数は亜鉛欠乏症ではない成人約5500人)が集まり、亜鉛のとり方としてはトローチやシロップなどの経口タイプと、スプレーやジェルなどの経鼻タイプが見られました。これらの研究が行われた時点では、新型コロナウイルス感染症に関する研究結果はまだ出ていなかったため、分析には含まれませんでした。
症状の持続期間も短縮
一連の分析で確認されたのが、亜鉛をとっているとウイルス性呼吸器感染症にかかるリスクが低くなることです。一般的に風邪といわれる軽症から中位の症状が現れるリスクは32%低下しました。さらに発熱といったインフルエンザのような症状が出てやや重症になるリスクは87%低下していました。亜鉛のとり方や処方が違っても、結果に影響はありませんでした。
また亜鉛をとっていると、とっていないグループに比べて、感染症にかかっても症状が続く期間が2日ほど短くなり、ピーク時(3日目)の症状も軽くなるとわかりました。吐き気のほか、口腔内や鼻の炎症などの軽い副作用はあるものの、銅欠乏症や嗅覚がなくなるといった重い副作用は見られませんでした。
亜鉛はもともと不足している人に限らず、ウイルス性呼吸器系感染症の予防や治療に効果があるという科学的根拠が見られると研究グループは結論づけ、抗生物質を不適切に使うよりもよい治療法になるかもしれないと指摘しています。
ただ、研究グループによると、風邪を引き起こすヒトライノウイルスに参加者をわざわざ感染させた研究では、統計的にたしかな効果が出ていないという結果もあるそうで、亜鉛のとり方や処方による違いについてはまだ詳しく調べる必要もあるようです。
<参考文献>
Zinc shown to prevent symptoms and shorten duration of common cold and flu-like illnesses
https://www.westernsydney.edu.au/nicm/news/zinc_shown_to_prevent_symptoms_and_shorten_duration_of_common_cold_and_flu-like_illnesses/_nocache
Hunter J, Arentz S, Goldenberg J, Yang G, Beardsley J, Myers SP, Mertz D, Leeder S. Zinc for the prevention or treatment of acute viral respiratory tract infections in adults: a rapid systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ Open. 2021 Nov 2;11(11):e047474. doi: 10.1136/bmjopen-2020-047474. PMID: 34728441.
https://bmjopen.bmj.com/content/11/11/e047474