ゴールデンウィークが明けたころから現れる心身の不調、五月病。新年度の環境の変化などが原因となって、何となく体調がすぐれない、やる気が出ない、眠れない、食欲がないなどの症状が現れることで知られています。一方、心療内科医の姫野友美先生は、6月から7月にかけて起こる心身の不調に注目。こうした心身の不調の改善には、睡眠や運動、食事といった生活習慣の見直しとともに、胃の健康を保つことが大切だと言います。姫野先生のお話と、心の不調を診察するドクターへのアンケートから胃の健康を保ち、心も元気にするヒントを探ります。
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新生活の反動で心の不調に陥ってしまう人が急増する6月
新年度が始まると、「五月病」という言葉を耳にする機会が多くなりますね。新生活が始まってひと息つくゴールデンウィーク明けごろから心身に不調を感じる人が現れるため、さまざまな注意喚起や五月病対策が行われています。その効果もあるのでしょうか、姫野先生は、現代人は5月までは乗り切れるようになったと感じているそうです。
一方で、姫野先生が院長を務めるひめのともみクリニックでは、以前より、6月から7月にかけて心身の不調を抱える患者さんが急増する傾向にあったとのこと。「4月から新生活が始まって、5月まではなんとか乗り切れたものの、その間、多くのエネルギーを消費し、さらに湿気の多い梅雨時期も重なって、6月以降に急速に心身の不調に陥ってしまうケースが増えるのです。私はこの症状を『ジューン・シック・シンドローム』と名づけ、注意を呼びかけています」(姫野先生)
また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、姫野先生のクリニックでは心の不調を訴える患者さんが増えているそうです。全国の医師(心療内科医、精神科医、内科医)1,000人を対象にしたアンケート調査(以下、アンケート)でも、9割以上の医師が心の不調を抱える患者さんはコロナ禍で増加傾向だと回答しました。さらに、心の不調を抱える患者さんの性別・年代も複数回答で尋ねたところ、30代女性、40代女性、20代女性の順に患者さんが多いという傾向が明らかに。
「30~40代女性は子育て世代であり、学校の休校や夫のリモートワークなどで子どもの世話や家事の負担も増大した結果、自分の時間がほとんどなくなり、家族内の不協和音が生じ、心の不調を引き起こした人が多いのではないでしょうか。
アンケートからは、心の不調を抱えた人は『どうせ』『だめだ』『むり』『でも』『だって』などネガティブな言葉が口癖となっていることもわかっています。これは、心の不調を抱えていると、何をするにも思考パターンがマイナス思考に陥りやすい傾向にあるからだと考えられます」
新型コロナウイルス感染拡大後、増加傾向にあり、また6月という時期に急増すると言われる心の不調。どのようにセルフケアを行っていけばよいのでしょうか。
心の不調の改善に胃の健康が重要であると考える医師が9割
じつはアンケートによると、こうした心の不調の改善に胃の健康が重要であると考える医師は9割以上という結果が出ています。昔から胃の調子が悪いと心理的に不調をきたしやすいことが知られていますが、心と胃は自律神経を介して密接につながっていると言われているそうです。「脳内には自律神経の中枢があり、胃や腸などの内臓諸器官は自律神経の支配を受けているのです。このため、心の不調によって自律神経のバランスがくずれると、胃の消化機能がうまく働かなくなり、胃もたれや胃痛など、さまざまな症状が現れます。一方で、胃の調子がよいと、脳内で『ドーパミン』という神経伝達物質の分泌が促されます。ドーパミンには、意欲の向上、集中力アップ、ポジティブ思考などの作用があり、心や体によい影響を与えるといわれています」
心の不調改善には、胃の健康も重要なのですね!
だから、“胃”を整えよう! 心の疲れをケアする食事法
アンケートによると、心の不調に陥らないために避けたほうがよいと思う習慣については、食事に関連する項目が上位を占めました(n=1000人。上のデータは全12項目中、上位5番目までを抜粋)。心の健康を保つためには、日々の正しい食習慣が大切だと医師が考えていることがわかります。
なお、心の不調改善におすすめの食材として上位に挙がったのは、次の通りでした。
1位 ヨーグルト(32.2%)
2位 納豆(22.3%)
3位 高カカオチョコレート(20.0%)
4位 オリーブオイル(19.8%)
5位 ナッツ(19.8%)
6位 豆腐(19.4%)
7位 野菜(19.3%)
「心の不調を改善するには『睡眠』『運動』『食事』の生活習慣を見直すことが大切です。とくに食事では、たんぱく質をしっかりとること。たんぱく質は、ドーパミンやセロトニンなど自律神経を整える脳内神経伝達物質の原料になります。朝8時から9時までに朝食をとることも大切です。ストレス対抗ホルモンであるコルチゾールは、朝8時頃にピークを迎えますので、このタイミングで朝食をとって体の代謝を上げることで、ホルモンと代謝のリズムが一致して、1日の生活をスムーズに始めることができます。
おすすめは『朝スープ』です。スープは、胃が温まり、消化もよく、簡単に作れるので忙しい朝にピッタリです。さらに、スープに野菜や卵を入れて具だくさんにすれば、栄養もしっかり補給することができます。特に、卵には良質なたんぱく質をはじめ、ビタミンやミネラルなど豊富な栄養素が含まれています」(姫野先生)
「『ジューン・シック・シンドローム』を防ぐためには、生活全般をあれもこれもとがんばりすぎず、また、十分な栄養をとることが大切」と姫野先生。姫野先生のお話やアンケートを参考に生活習慣を見つめ直し、なるべく十分な睡眠をとって体を休め、適切な運動を生活にとり入れたいですね。手軽なおすすめ食材のひとつであるヨーグルトの中には、LG21乳酸菌と呼ばれる、自律神経のバランスを整え、胃の運動機能を高めてくれる乳酸菌を含むものもあるようです。さまざまな食材をじょうずにとり入れながら、胃を健康に保つ食習慣を身につけて自律神経のバランスを整え、梅雨や夏場に備えて心にも体にもエネルギーをチャージしていきましょう!
文/寺田千恵 イラスト/ヤマグチカヨ クロカワユカリ(アンケート内カット)