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4年後を見据え、女性のライフプラン…どう両立する? 五輪メダリスト・小松原組に聞く<スポーツとフェムケア 後編>
生理やPMSなど女性特有の不調をケアするサービスやアイテムを指す「フェムケア」(フェムテック)がいま注目されていますが、生理の不調に悩むのはトップアスリートも例外ではありません。そこで、北京五輪でフィギュアスケート・アイスダンスの日本代表として活躍、団体戦銅メダルを獲得した小松原美里選手と小松原尊選手に「スポーツとフェムケア」をテーマにインタビュー。後編は今後の目標や、競技を続けていくうえで美里選手が注目しているフェムケア、そして小松原家が描くライフプランについてお聞きしました!
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お互いを尊重し、ひとりの時間も大切に
――公私ともにパートナーのお二人。競技のパートナーとしてお互いを尊重した関係性が印象的でしたが、プライベートではどのように過ごしていますか?
美里さん:リンクではスイッチが入っているので、アイスダンスのことで議論するのはもちろん、意見を言い合って喧嘩もしますよ(笑)。でも、プライベートではスイッチをオフにして、お互いに仲良くゆったりとしていますね。
結婚した最初のころは「ずっと二人でいっしょにいなくちゃ」と思っていましたが、四六時中一緒だったら誰でも疲れますよね。ひとりで過ごしたいときもありますし、自分のスペースがほしいときもあります。そんなときは「ひとりになりたい」って、伝えています。
尊さん:美里と結婚して6年目。いまは「あ、そういう気分なのね」ってすぐに理解できます。だから、ぼくも音楽を聴いてひとりで歩いたりして、ひとりの時間をもつことを大切にしています。自分の感覚を感じたり、自分を取り戻したりするという感じですね。
いま、興味があるのは「卵子凍結」という選択
――お二人の今後の目標は?
美里さん:4年後の五輪出場が大きな目標ですが、私たちはこれまでいろいろな壁もありましたし、ケガもあったので、まずは1年1年を健康に過ごすことを大切にしたいですね。あとは、私はいま29歳なんですが、フィギュアスケートでは私たちよりも上の世代が少ないんです。年齢的な前例は日本に少ないので、私たちがよい例になればと思っています。
そして、4年後を見据えたとき、私がいますごく関心があるのが「卵子凍結」なんです。
――女性の場合、仕事と妊娠・出産といったライフプランに悩む人も少なくありません。アスリートは特に競技との兼ね合いというテーマに向き合うことになると思いますが、そのことが「卵子凍結」への興味につながったのでしょうか?
美里さん:以前、卵子凍結をしたマラソン選手の記事を見たことがあったんです。そのなかで「凍結をしたことで、さらに競技に集中できた」と話していて、興味をもちました。女性アスリートの場合、大会のストレスなどで生理が止まってしまうことがあるので、私も将来のことを考えると不安がありました。だから、競技とライフプランのことを考えたとき、卵子凍結を試すのも選択肢のひとつだと思って、セミナーにも参加して情報を集めています。
尊さん:自分たちの不安を少しでも軽くしたり、競技に集中したりするために、さまざまな選択肢をもつのはいいことだと思いますね。
後輩のためにも、声を上げていきたい
――最近、話題の「フェムケア」(生理など女性特有の不調をケアするアイテムやサービス)もいろいろありますが、美里さんが注目しているものはありますか?
美里さん:気になっているフェムケアといえば、低用量ピルです。海外の選手は生理対策にピルを使うのが当たり前で、私も「やってみたら」ってすすめられたことがあります。興味はあったものの、そのときは五輪を控えていたこともあり、新しいことに取り組むのは難しい面がありました。いまだったらタイミング的にもそろそろ試してみてもいいかなと思っているので、JISS(国立スポーツ科学センター)にも相談して、自分に合ったブランドを探したいと考えているところです。
卵子凍結もそうですし、ピルもそう。こうした選択肢を増やしていくことで、自分の競技生活がラクになることにつながるし、その方法が見つかれば、後輩も助かりますよね。フィギュアの選手は私たちより若い子ばかりです。だから、自分たちが声を上げていかないと、という想いもあります。そのためにも、私自身、アスリートの生理のこともフェムケアのことも、もっといろいろ知りたいし、アンテナを伸ばして積極的に情報を収集していきたいですね。
<Profile>
●小松原 美里
こまつばら みさと
1992年生まれ。岡山県出身。2016年に尊選手とアイスダンスのカップルを結成し、2017年に結婚。2021-22シーズン全日本選手権を制し、五輪代表に選出。
●小松原 尊
こまつばら たける(ティム・コレト)
1991年生まれ。アメリカ合衆国出身。シングルスケーターとしてキャリアをスタートし、2013年にアイスダンスに転向。2020年11月に日本国籍と日本名を取得。
取材・文/馬渕綾子 撮影/我妻慶一