まもなく暑い夏がやってきますが、夏じゃなくても年中汗が止まらないという人はいませんか? 手汗がすごくて人と気軽に握手ができなかったり、足汗がひどくて、サンダルがはけなかったり。汗ジミが目立つグレーの服を着るなんてもってのほか。汗をかきやすい人にとっては、こういった何気ない日常のシーンで“汗が原因で困る“ことは、とても深刻な悩みなんですよね。そこで今回は、池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長・藤本智子先生に、実態と最新治療法を教えていただきました。
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あなたは当てはまる? 「原発性局所多汗症」診断
「原発性局所多汗症」とは、手のひらや顔、頭部、わき、足の裏が、日常生活で困るほど汗の量が多くなる病気のことです。
具体的には、原因不明の過剰な発汗(手のひらや顔、頭部、わき、足の裏)が6か月以上持続して認められ、以下の6項目のうち、2項目以上を満たす場合です。
・発症が25歳以下
・両側もしくは左右対称
・家族歴がある
・睡眠中は発汗症状がみられない
・週に1回以上、多汗のエピソードがある
・日常生活に支障をきたす
ここで大事なことは、汗の量がどれくらい出るかではなく、汗が出ることでどれだけ日常に支障を感じているかがポイントになります。
汗の悩みを解決に導く! 最新治療法
藤本先生のお話しによると、日本は世界でも多汗に悩んでいる人が多いというのに、なかなか病院に行かない、行っても通院を続けられない。そもそも何科に行ったらいいのかわからないという人が多い傾向が見られると言います。その理由には、病院に行くレベルのことなのか自分で判断ができなかったり、意を決して病院に行っても受診時はあまり発汗していない状態であることが挙げられるそう。また、治療ができるということ自体の認識の低さも見られます。
その反面、調査結果によるとわき汗(多汗症)の治療をしたいという人は6割以上いることから、治療意欲が高いことは明らかです。ぜひ悩んでいる人には治療を受けてほしいと思います。
「治療に関して、自分のわきを医師に、とくに異性の医師に見せることに抵抗があるという声もありますが、必ずしも見せる必要はありません。どんな場面で汗が出て、どんな汗ジミなのかといった問診をメインに行いますので、安心して受診してもらえたらと思います」(藤本先生)
最新の治療法のひとつとして、保険適用の治療薬「外用抗コリン薬※」があります。2020年に世界に先駆けて日本で承認・販売された保険適用の塗り薬で、副作用のリスクが低く、刺激が少ないところが特徴です。
※現在、腋窩(えきか)のみ使用可能
多汗の悩み解消には手術が必要と言われるのでは…と、つい病院へ相談に行くことをためらっている人もいるかもしれませんが、塗り薬での治療から始められるとわかればハードルもグッと下がるのではないでしょうか。
また、多汗症に悩む人にとっては、なるべく汗を抑えたいものですよね。ところが藤本先生によると、基本的に汗を抑えようとして、汗をかかない生活をするのはおすすめできないとのこと。
なぜなら、汗をかかない生活=体がなまけてしまうから。発汗は筋トレと同じで、やればやるほど、汗のコントロールができるようになるため、運動を積極的に行ったり、お風呂に入って汗を出すといった“汗活”をすることがおすすめだそうです。
日常生活に支障をきたすほどわき汗・多汗にお困りの方は、ためらわず受診をしてみてくださいね。
【取材協力】
池袋西口ふくろう皮膚科クリニック 院長 藤本智子先生
科研製薬株式会社 NPO法人多汗症サポートグループ
【参考】
腋窩多汗症の患者意識調査
取材・文/高田空人衣