長引くマスク生活に加え、暑い季節は、汗、紫外線、エアコンでの乾燥など、肌トラブルが気になります。そこで意識したいのが「肌免疫」を上げること。肌にも体と同様に外敵から守るための免疫システムが備わり、美肌に一役買っているのです。肌トラブルと免疫の関係、肌免疫を上げる対策について、皮膚科医でココメディカルクリニック院長の泉さくら先生にうかがいました。
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肌あれ、にきび、アレルギー皮膚炎も、肌免疫の低下が影響
コロナ禍でも話題になっている体の免疫力。「ウイルスに感染しても、免疫がきちんと働けば、発症を抑えられる」と言ったりしますよね。そもそも免疫とは、体でどのような働きをしているのか、くわしく見ていきましょう。
「免疫は、細菌やウイルスなどの外敵が体内に入り込んだときに、体を防御するために働く機能です。免疫で大切な役割を担うのは血液中の白血球で、細菌やウイルスといった外敵が侵入すると、さまざまな免疫細胞が総力を挙げて撃退してくれます。さらに、一度侵入した外敵の情報を記憶し、特定の敵を退治する『抗体』を作ることで、同じ病原体が侵入したときには、すぐに撃退に動いてくれます」(泉先生)
インフルエンザや新型コロナといった変異が激しいウイルスは別として、基本的に同じ感染症に二度以上かからないのは、免疫のおかげというわけです。
「また、体は常に古い細胞と新しい細胞が入れ替わっていますが、そこで老廃物がたまらないように除去したり、傷ついた細胞を排除したりするのも免疫の働きです」
では、肌を守っている肌免疫とは、どのようなものなのでしょうか。
「私たちの皮膚にはさまざまな菌がいて、空気中にも塵(ちり)や花粉、PM2.5といった異物が漂っています。なかにはアレルギーを起こす物質もあります。こうした異物が肌に付着すると炎症を起こしたりしますが、異物を認識して、排除するのが肌免疫です。炎症を落ち着かせ、体の免疫と同様に、次に同じ異物がやって来たときに対処する働きもあります」
この肌免疫。頼もしいことに、「二段構え」で肌を異物から守ってくれます。
「第一段階は、肌表面にある『肌バリア』。適度な保湿で角質層がきれいに整っていれば、肌バリアが働き、外敵の侵入を防いでくれます【図1】。
ところが、乾燥や摩擦などで肌があれ、表皮の『肌バリア』がくずれてしまうと、異物が表皮をすり抜けてしまうことも【図2】。
そこで発動されるのが、肌に存在する『ランゲルハンス細胞』という免疫細胞。肌の奥に入り込んだ菌やウイルスといった異物を排除するために働き始めます。つまり、免疫がしっかり働いていれば、肌トラブルも防げるというわけです」
最近、肌あれが気になる、ニキビが出きやすいと感じることがあったら、肌免疫が落ちているのかもしれません。
「免疫力が低下すると、肌の上では、老廃物を除去するターンオーバーが乱れ、古い角質がたまって、肌はガサガサに。すると、肌のちょっとした傷からも菌が入りこんでニキビができやすくなったり、ふだんは何ともないアレルギー物質に反応して湿疹ができやすくなったりしてしまうのです」
泉先生のクリニックにも、新型コロナウイルスに感染後、体調は回復したものの、「肌があれた」といって来院する人も少なくないそうです。
夏場は紫外線が強くなりますが、「紫外線に当たり過ぎても免疫の働きが落ちてしまうため、特に夏は肌免疫の低下にも注意が必要」といいます。
発酵食品やビタミンACEなどをとり入れて免疫アップを
肌トラブル解消のために、まずは肌の保湿を心がけ、乾燥から守りましょう。そして、免疫力を上げていくことも大切です。そのために今日からでも始められるのが、食生活の見直しです。
第1のポイントは、腸内環境を整えること
「最初のポイントは“腸活”に効果的な食品をとって、腸内の環境を整えることです。なぜなら、免疫細胞の多くが腸に存在しているからです。便秘や下痢で腸内環境が乱れていると、いくらバランスのよい食事をとっていても、必要な栄養がきちんと吸収されなくなり、免疫細胞も活発に働くことができません。便秘がちの人は、便という老廃物がうまく排出できないことで、顔色が悪くなったり、肌あれの原因にもなります」
腸活に効いて免疫をアップさせる食品として、泉先生は「発酵食品がおすすめ」と話します。
「ヨーグルト、納豆、みそ、キムチなどの発酵食品がおすすめです。乳酸菌のエサとなるオリゴ糖をプラスすると、なおよいです。便秘対策には、食物繊維をとることも忘れずに。ヨーグルトを食べるなら食後がおすすめです。食前に食べると、胃酸によって乳酸菌が死んでしまうこともあるからです。胃の中に食べものが入った状態で食べると、元気なまま腸まで乳酸菌を届けることができます」
ちなみに、泉先生は、「ドリンクヨーグルトを箱買いして、家族で毎日飲んでいる」そうです。
第2のポイントは、抗酸化作用で免疫力を高める食材に注目すること
「抗酸化作用で免疫力を高めるビタミンACEやポリフェノールも積極的にとりたい栄養素です。ビタミンAは肌のターンオーバーを促すなど、美肌効果もあります。体重コントロールをしている人は油を避けがちですが、ビタミンEを含むアーモンドといったナッツ類でうまくとり入れるようにしましょう」。
ビタミンACE、ポリフェノールは、それぞれ次のような食品に多く含まれています。日々の食生活にとり入れていきましょう。
●ビタミンA:にんじん、レバー、卵黄など
●ビタミンC:キウイ、いちご、みかんなど
●ビタミンE:かぼちゃ、ほうれんそう、大豆、アーモンドなど
●ポリフェノール:緑茶、コーヒー、赤ワイン、チョコレートなど
「ただし、いくら体や肌によいといわれても、疲れて帰った日に料理をしたり、苦手な食べものを食べたりすることは、ストレスがたまってしまいます。ストレスは免疫の働きを低下させるという研究結果もあります。市販品をうまく活用するなど、自分がラクにできることで続けていきましょう」と泉先生はアドバイスします。
手軽においしく栄養素をチョイ足しできる商品4選
泉先生がオススメしていた、免疫力を高める効果のある栄養素を、手軽にとれる商品をご紹介します。
「明治プロビオヨーグルトR-1 ドリンクタイプ」(明治)
6000種類以上の中から選び抜かれた、強さひきだす乳酸菌1073R-1が腸内環境を整える一助に! 飲みやすいドリンクタイプ。
内容量112ml 1本当たりエネルギー76kcal 希望小売価格143円(税込)
https://www.meiji.co.jp/dairies/yogurt/meiji-r1/
「1日分の野菜 きっちり食物繊維」(伊藤園)
コップ1杯(180ml)当たり、厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量350g分を使用した野菜汁100%飲料。ビタミンCやビタミンA(β-カロテン)、食物繊維などが補充できます。
内容量330ml 1本当たりエネルギー102kcal 希望小売価格165円(税別)
https://www.itoen.jp/products/44522/
「VC-3000のど飴」(ノーベル製菓)
10粒入りのスティック1本で、ビタミンCが3000mgとれます。袋タイプは、マスカット味やピンクグレープフルーツ味も。
内容量10粒(43g) 10粒当たりエネルギー103kcal オープン価格
https://www.nobel.co.jp/vc3000/
「一週間分のロカボナッツ 30g×7袋入り」(デルタインターナショナル)
ビタミンEたっぷりのアーモンドやヘーゼルナッツがミックスされています。糖質をゆるやかに抑えながら素材のおいしさを楽しむことができるミックスナッツ。1日1個包装という手軽さも魅力です。
内容量1袋30g×7パック 1袋当たりエネルギー211kcal オープン価格
https://www.delta-i.co.jp/
取材・文/海老根祐子 イラスト/鳥居志帆 クロカワユカリ(肌免疫)