歩くことは健康によいといわれますが、1日1万歩など高い目標を設定することにどれほど意味があるのでしょうか。今回、海外研究で1日に歩いた歩数と健康に対する効果の関係を分析した結果、1万歩という1日の歩数はウォーキングの効果が最も出やすい歩数であることがわかりました。
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英国の7万8500人を調査
ウォーキングを習慣づけている人は少ないないはず。「1日30分のエクササイズ」などほかの運動と比べてウォーキングはとり入れやすい運動であるのは想像に難くありません。体力に自信がない人でもウォーキングならば取り組みやすいでしょう。トラッカーなどで歩数を計測している人もいるでしょうが、どれくらい歩けばいいのかについては意外と詳しく聞くことは少ないかもしれません。従来なかなか根拠のある数字は出ていませんでした。
そこで今回、デンマークとオーストラリア、米国の研究グループは、歩数と健康の関係を調べるため、約50万人から遺伝情報や健康情報を集めた英国の「UKバイオバンク」の登録者のうち、7万8500人(40〜79歳、女性55%、白人97%)から正確なデータを得ました。データには活動を測定できるトラッカーを手首に1日24時間1週間装着してもらって、歩数や歩く速度などを客観的に測定した情報も含まれています。
そして、その後およそ7年間の病気(心臓および血管の病気、がん、認知症)や死亡の記録と照らし合わせて、得られたデータを分析しました。この種の研究としては、最大規模になるそうです。
歩く速さを気にかけるのも大切
こうしてわかったのは、1日の歩数が多いほどさまざまなリスクを低下させることができることです。具体的には、心臓および血管の病気、がんになるリスク、それらにより死亡するリスク、認知症になるリスクが低下していました。さらに、およそ1万歩でそれらの病気(心臓および血管の病気、がん、それらによる死亡)のリスクが1割程度低下することがわかり、認知症はほぼ半減となりました。ただ、1万歩程度が効果のピークで1万歩より多くても、それ以上リスクを下げる効果はほとんど見られませんでした。また、歩数に加えて歩く速度が速いほうが、リスクがより大きく下がることもわかりました。
今回、歩く速度は1分当たり40歩未満と40歩以上に分けて、また1日の30分間平均速度のうち最も高い速度について調べましたが、特にこの最大30分間平均速度が高いとすべてのリスクを下げる効果がありました。研究グループはとりわけ、何歩でも歩くことによって歩かないよりはリスクが下がるという点を指摘。1万歩を目標に歩くようにするとよさそうです。
<参考文献>
Pace as important as 10,000 steps for health, finds new research
https://www.sydney.edu.au/news-opinion/news/2022/09/13/pace-as-important-as-10-000-steps-for-health.html
Higher Step Counts Equal Better CV Health: UK Biobank
https://www.tctmd.com/news/higher-step-counts-equal-better-cv-health-uk-biobank
Del Pozo Cruz B, Ahmadi M, Naismith SL, Stamatakis E. Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia in 78 430 Adults Living in the UK. JAMA Neurol. 2022 Sep 6:e222672. doi: 10.1001/jamaneurol.2022.2672. Epub ahead of print. Erratum in: JAMA Neurol. 2022 Sep 9;: PMID: 36066874; PMCID: PMC9449869.
https://jamanetwork.com/journals/jamaneurology/fullarticle/2795819
Prospective Associations of Daily Step Counts and Intensity With Cancer and Cardiovascular Disease Incidence and Mortality and All-Cause Mortality
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2796058