日常生活で強いストレスになっている事柄を、急に何とかすることは難しいけれど、食生活や日常の習慣から腸内環境を整えることで、ストレスに強くなることはできる――。腸は、心、ストレス、お肌などに大きく関係していることが最近の研究でわかってきています。先日都内で開催されたゼスプリ・プレスセミナーでは、医師・大竹真一郎先生による腸と心を整える食事術についての講演と、管理栄養士・安中千絵先生によるキウイを使ったクッキングデモンストレーションが行われました。講演内容と、パーティシーズンにもぴったりな簡単キウイレシピをご紹介します。
Contents 目次
脳と腸は関係している
最初に「相互に作用し合う腸と脳 腸脳細菌相関〜脳とココロを整える食事術〜」と題してお話をしてくださったのは、大竹真一郎先生(おおたけ消化器内科クリニック院長)です。軽妙なトークが魅力で、テレビ番組にも多数出演、書籍も多数出版されている大竹先生。メディアで話をしたり本を書いたりしているのは、正しい医療情報を皆さんに伝えたいためと言います。
「健康にいい、悪いは簡単に二元論では語れません。ある人にとって正しい方法でも、ほかの人にとってはそうではない。これだけすればいい、これだけ食べればいい、という単純なものではないのです。なんのためにその方法をとるのか、目的とセットになっていることが重要です。
さて、脳と腸が関係するということは、昔から感覚的にわかっていました。腸(はらわた)が煮えくり返る、腹を立てる、腑に落ちない、などの言葉もあります。最近の研究でわかってきたのは脳と腸の関係は、脳からの一方通行ではないということ。腸からも、神経を伝わって脳に指令を出しています。
ストレスを感じると腸の動きが悪くなります。さらに腸内細菌が変化してしまい、悪玉菌が増えて腸内環境が悪くなる。するとますますストレスを感じやすくなるという悪循環になります。
心臓の動きなどを司る自律神経はコントロールできないけれど、腸内細菌と感情は関係していて、ここはコントロールできるところです。また、学校や会社がストレスでも、簡単に辞めることはできません。現実の社会におけるストレスの原因をなくすのは難しいけれど、腸内環境は改善できるのです。腸内環境がよくなれば、ストレスに強くなり、うつ病になりにくくなる、認知機能が改善するなどの効果も期待できます」(大竹先生)
腸内環境の改善に、キウイフルーツがおすすめ!
腸内環境を改善するために大切なことは以下の4つです。
腸内細菌は種類が豊富なほうがいいのですが、例えば健康にいいからと流行っている食材など同じものばかり食べていると、腸内はその食材が好きな菌ばかりになり、種類が減ってしまうそう。バランスのいい食事が大切です。
なかでも注目したいのが食物繊維。男性は全世代で、女性は若い世代ほど不足している人が多いと言います。
「食物繊維には、不溶性と水溶性の2種類があり、それぞれどんなバランスでとるかが大事です。いも、こんにゃく、玄米、キャベツ、レタスなどに多く含まれる不溶性食物繊維は水に溶けない性質があります。不溶性食物繊維には便の量を増やし、腸管の動きをよくするという効果がありますが、とりすぎると便が固くなり、腹痛や胃もたれの原因にもなります。
一方、わかめやひじきなどねばねば系の水溶性食物繊維は水に溶けない性質をもっています。水溶性食物繊維には、便をやわらかくし、滑りをよくしたり、腸内環境に大切な短鎖脂肪酸を生成する働きがあります。
2種の食物繊維がバランスよく含まれている食物のひとつが、キウイフルーツです。
もちろんキウイだけ食べていればいいというわけではありませんよ。いろんなものをバランスよくとっていく中で、どう正しく選ぶかという知識をもつようにしましょう」と大竹先生。
「FODMAP」って何? 低FODMAPが健康にいい理由
キウイフルーツをおすすめしたいもうひとつの理由が、“低FODMAP”であるということ。
「FODMAP(フォドマップ)とは小腸で吸収されにくく大腸で発酵しやすい糖質の総称で、これをとると菌が発酵してガスが作られやすくなります。その結果、お腹がはり便秘が起こることがあります。FODMAPが含まれる食材をとることで、お腹のはりや腹痛を起こしやすい人は、高FODMAPの食材を控えたほうがいいということになります」
普段の食生活でお腹にガスがたまりやすいなどの悩みがある方は、一度、FODMAPという観点から食生活を見直して、低FODMAPの食材を意識してみるといいかもしれません。
「下の図は、高FODMAPの食材と低FODMAPの食材の一例です。キウイは水溶性食物繊維が多いうえに、低FODMAP食品なので、お腹にトラブルのある方でも安心の食材だと言えます。
健康は自分自身の財産です。これだけ食べていれば大丈夫というものはないし、隣の○○さんがいいとすすめていたから、という理由だけで何も考えず自分の食べるものを選んではいけません。自分にとって必要かどうかという観点で選ぶようにしてください」と強調する大竹先生でした。
キウイで腸とココロを整える! 簡単・華やかクッキングレシピ3点
続いて「腸とココロを整える〜腸脳力レシピ」と題して、フリーの管理栄養士、フードコーディネーターとして活躍する安中千絵(あんなか・ちえ)先生によるクッキングデモンストレーションが行われました。
日本人の1日の食物繊維の摂取量は男女ともに2〜3g足りないと言われます。その点、キウイフルーツには1個当たり食物繊維が2〜3g含まれており、1日1個食べるだけで不足分が補えるのだとか。食物繊維が豊富で低FODMAPのキウイを使った、これからのクリスマスやパーティシーズンにもぴったりの見た目も華やか、簡単に作れる3品のレシピをご紹介します。
お腹にやさしいキウイとチーズの組み合わせ!「キウイとブッラータチーズのカプレーゼ」
【材料】2人分
・グリーンキウイ 2個
・きゅうり 1/2本
・ブッラータチーズ 1個
・バジルの葉 6枚
[ドレッシング]
・海塩 小さじ1/5
・バルサミコ酢 小さじ1
・しょうゆ 小さじ1/2
・オリーブオイル 小さじ2
【作り方】
1. キウイは皮をむき、縦8等分のくし切りにする。
2. きゅうりはピーラーで薄くむき、くるくると丸めておく。
3. お皿に水を切ったブッラータチーズ、キウイ、きゅうりを盛りバジルを飾り、塩、バルサミコ酢、しょうゆ、オリーブオイルを全体にふりかける。
●栄養(1人分)
エネルギー:192kcal たんぱく質:5.1g 脂質:14.3g 炭水化物:11.5g
食物繊維総量:2g ビタミンC:70mg
「ブッラータチーズは最近話題のチーズ。小さなスーパーなどでも手に入りやすくなっています。袋状のモッツァレラチーズの中に割いたモッツァレラチーズと生クリームが入っているもので、切ると中からクリーミーな中身が流れ出てくる、おいしいチーズです。これも低FODMAPの食材なのです。ブッラータとフルーツを一緒に食べるのが流行っていますが、キウイもものすごく合います。今日はキウイとブッラータチーズをお酒にも合い、前菜としてもおいしくいただけるサラダ仕立てにしました。白、黒、緑の色合いが美しい一品です」
甘さと酸味が特徴のグリーンキウイがスパイシーなタコスのアクセントに!「キウイのタコス」
【材料】2人分(4個)
・タコシェル 4つ
・牛ひき肉 150g
・グリーンキウイ 1個
・紫キャベツの葉 1枚
・サニーレタスの葉 2枚
・チェダーチーズシュレッド 20g
・チリパウダー 小さじ1/2
・塩 小さじ1/2
・ケチャップ 大さじ1
・ソース 小さじ1
・こしょう 少々
【作り方】
1. テフロンフライパンに牛ひき肉を入れ、中弱火で加熱する。色が半分くらい変わってきたら、塩、ケチャップ、ソース、チリパウダーを入れて炒め、仕上げにこしょうをふる。
2. キウイは小さないちょう切りに、キャベツ、サニーレタスはみじん切りにする。温めたタコシェルに、サニーレタス、キャベツ、ひき肉、チーズをはさみ、キウイをトッピングする。
●栄養(1人分)
エネルギー:347kcal たんぱく質:18.5g 脂質:20.9g 炭水化物:25.5g 食物繊維総量:2.7g ビタミンC:66mg
「タコスには普通アボカドを使いますが、アボカドはじつは高FODMAP。低FODMAPのキウイを利用することで、低カロリーでヘルシーになります。キウイは肉料理と相性がよく、タコスのひき肉にもさっぱりしてよく合います。サニーレタスは普通のレタスよりビタミンCが多く、紫キャベツもアントシアニンが含まれて栄養価が高いんですよ。今日は高FODMAPのニンニクや玉ねぎを使っていないので、ケチャップでうま味を足しています。こういうエスニックな料理にもキウイを合わせると、甘酸っぱさやさわやかさがアクセントになり、味が豊かになるのでおすすめです」
キウイの甘酸っぱさとかぼちゃの組み合わせが新鮮でさわやかな味わい!「キウイ入りかぼちゃサラダ」
【材料】2人分
・グリーンキウイ 1個
・かぼちゃ 正味300g
・バター 8g
・メープルシロップ 大さじ1
・塩 ひとつまみ
※かぼちゃによって水分量が少ない場合はアーモンドミルクで調整してください。
【作り方】
1. かぼちゃは丸ごとラップで包み、レンジ600Wで3分加熱する。
ミントは細かく切る。
2. かぼちゃが触れるくらいの熱さになったら、種とワタを取り除き、皮をむく。
3. ボウルに2のかぼちゃと、バター、メープルシロップを入れてマッシュする。水分量が足りない場合は、アーモンドミルクを入れて調整する。
4. 3のかぼちゃが完全に冷めたら、キウイをいちょう切りにして、かぼちゃと和える。
●栄養(1人分)
エネルギー:97kcal たんぱく質:1.4g 脂質:1.8g 炭水化物:21.8g 食物繊維総量:3.5g
ビタミンC:41mg
「かぼちゃをレンジでチンしてマッシュして、いちょう切りのキウイを混ぜるだけの簡単サラダ。かぼちゃも食物繊維が豊富で、さらにベータカロテンとビタミンEが豊富に入っています。ビタミンCたっぷりのキウイと一緒にとると、栄養的にもいい組み合わせです。あまり甘いのが好きではない方は、メープルシロップの代わりにアーモンドミルクを使ってもナッツの香りがついておすすめです。キウイを混ぜることで、味がまったりしすぎず酸味が効いたさわやかなかぼちゃサラダになります。アイスクリームディッシャーを使って丸く盛りつけ、キウイをトッピングすればかわいい仕上がりに!」
どれも簡単で、キウイのグリーンが美しく目を引く料理です。これからのパーティシーズンに、家族と一緒に作ってみてもいいかも。キウイでおいしく、楽しく体調管理してみてはいかがでしょうか。
取材・文/千葉明日香
《プロフィール》
大竹真一郎先生
医師。1968年、兵庫県生まれ。おおたけ消化器内科クリニック院長。日本内科学会総合内科専門医。日本消化器学会専門医。高校を中退後、大学入学資格検定に合格し、神戸大学医学部医学科を卒業。愛仁会高槻病院でスーパーローテート研修を行い、その後、消化器専門医として、けいゆう病院、辻中病院柏の葉、平塚胃腸病院クリニックなどで内視鏡検査業務を中心に研鑽に励む。2015年、東京・赤坂におおたけ消化器内科クリニックを開院。『腸の「吸収と排出」が健康の10割』(ワニブックス)など著書多数。
安中 千絵(管理栄養士)先生
管理栄養士。「美味しさ×健康×エビデンス」をモットーに、ヘルシー食品の商品企画開発アドバイス、レシピ開発など広く活動。著書に『おやつで痩せる』(PHP研究所)、『太らないのは、どっち!?』(青春出版社)など。