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生理やPMS、女性の不調にどう向き合う? これからの働く女性のフェムケアは「対話」と「見える化」がカギ!
2022年に引き続き、2023年もFYTTEが注目するテーマに“フェムケア”(女性特有の不調をケアするモノやサービス)があります。これまでにも女性特有の不調をとりまく課題やケアなど、さまざまな話題を取り上げてきましたが、今回は女性が健康的に長く働ける社会のためのモデルケースづくりを目指す「Will Conscious Marunouchi」プロジェクトから、働く女性が毎日をよりよく過ごすためのヒントをお届けします!
Contents 目次
正しい知識を身につけてケアの選択肢を増やす
働く女性が自分らしく生きられるよう食やライフスタイルを整え、バランスのとれた健康な体づくりを呼びかけるウェルネスイベント「Will Conscious Marunouchi 2022 まるのうち保健室~私と向き合う時間~」。
オープニングのトークセッションでは、生理とスポーツをテーマにした「1252プロジェクト」に取り組む、競泳元日本代表の伊藤華英さんと元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬俊朗さんたちが登壇し、“自分らしく”あるためにひとりとみんなができること」をテーマに女性の不調との向き合い方やひとりひとりがパフォーマンスを発揮できる環境づくりなどについて語り合いました。
2008年の北京オリンピックなどに出場し、競泳選手として第一線で活躍していた伊藤さんですが、じつは現役時代、生理やPMS(月経前症候群)の不調にかなり悩んだといいます。
「当時はまだPMSという言葉もそれほど知られておらず、女性特有の症状に対する知識もなくて、周囲からのケアもほとんどありませんでした。今でこそピルをのむ人は増えていますが、選手だった頃は生理痛がひどくても、アスリートなのでそもそも薬をのむこと自体がドーピングになるのではないかと思っていたくらいです」(伊藤さん)
オリンピックの日程が生理期間とかぶってしまうことがわかり、病院で処方された中用量ピルを始めて服用。しかしそれが原因で体重が4キロも増えてしまったそう。
「競泳は体重に左右される種目ではありませんが、ピルの副作用や、中用量のほかに低用量ピルがあるという知識がなかったことで、体のコンディションを整えられず後悔しました。女性のみなさんには、生理やピルについてもっと知ってもらい、いろいろな選択肢があるということを伝えたい」とメッセージを寄せました。
近年は生理痛緩和などのためにピルの服用も増えてきていますが、働く女性の医療課題に取り組む株式会社ファムメディコの佐々木彩華さんによると、「生理痛で病院に行ったら怒られるのではないか」「生理痛はガマンして当たり前」と回答する女性も多いそう。神奈川県立保健福祉大学イノベーション政策研究センターの岡本真澄さんは『働く女性ウェルネス白書 2022』の調査結果をもとに、生理痛が重い人ほど仕事のパフォーマンスが低い傾向にあると指摘しました。
対話を大切にし、お互いを認め合う関係づくりを
生理やPMSの不調は痛みだけでなく、イライラしたり注意散漫になったりと感情を伴う症状が現れる場合もあり、自分でうまくコントロールができないことも。だからこそ、職場などでは周囲の理解も必要です。
ひとりひとりがベストパフォーマンスを発揮するための理想の環境について、元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬さんは「自分自身の経験からも周囲の支えというのは大事な観点だと思う。毎日どんなに練習がしんどくても気軽に話せる仲間がいることで気持ちがラクになったり、監督に怒られたときも『頑張ろう』と声をかけてもらえたりすることでモチベーションが維持できることがたくさんありました。仕事のためのコミュニケーションという姿勢より、物事を成し遂げるための人と人とのコミュニケーションととらえることが大事。上司との関係においても自分が思っていることを素直に伝え、お互いに認め合うような関係性をつくることが大切」と呼びかけました。
“見える化”がコミュニケーションのきっかけに
「Will Conscious Marunouchi」プロジェクトでは新たに女性の健康課題を“見える化”する「働く女性 健康スコア」をスタート。今後のアクションにつなげることを目的にしています。
この“見える化”について、廣瀬さんは「女性特有の症状は男性である自分が経験することはできないけれど、実態を数字で“見える化”すると男性も具体的に状況を把握することができます。自分が会社の上司だと想像したとき、女性の不調に気づいても自分から声がけすることは難しいかもしれない。でもそこにファクトやデータがあるとコミュニケーションのきっかけになり、お互いに歩み寄ることができると思います」と感想。
伊藤さんは「生理周期や基礎体温を記録したりして自分の体の変化を数値化して知ることで、体調のコンディションをコントロールしようという意識につながることが多い。感情も紙に書き出すといまこう思っていて、これが嫌だったんだと整理することができ、自分との対話ができます。心身のコンディションを客観的に見えるようにすることは、次の行動を変えるきっかけにもなります」とアドバイスしていました。
【登壇者】
伊藤華英さん(スポーツ科学博⼠/競泳元⽇本代表/⼀般社団法⼈スポーツを⽌めるな理事/1252プロジェクトリーダー
廣瀬俊朗さん(株式会社HiRAKU代表取締役/元ラグビー⽇本代表キャプテン/⼀般社団法⼈スポーツを⽌めるな共同代表理事)
佐々⽊彩華さん(株式会社ファムメディコ取締役CVO)
岡本真澄さん(神奈川県⽴保健福祉⼤学イノベーション政策研究センター研究員)
司会:井上友美さん(三菱地所株式会社まるのうち保健室プロデューサー)
※記事は2022年10月27日に開催されたトークセッションの内容をまとめました。
取材・文/番匠 郁