CATEGORY : ヘルスケア |睡眠
寝起きに体がだるいのは何が原因? 専門医が教える睡眠で体をリカバリーする方法とは?
「睡眠負債」が注目されるなどこれまでも睡眠や休息は関心の高いテーマでしたが、免疫力やメンタルヘルスへの影響などコロナ禍が相まって一気にメガトレンドに。「FYTTEヘルスケアトレンド2023」では今年注目の8つのトレンドワードのひとつとして「リカバリータイム」を掲げています。ベストコンディションの自分でいるためにも睡眠・休息といった“リカバリータイム”を重視する流れは今後も強まるでしょう。
暑くて寝苦しくなる季節には、たっぷり寝たのに体の疲れが全然とれていない……、寝る前よりも疲れている……なんてこともありがちです。今回は、睡眠の専門医の坪田聡先生に、睡眠が体の疲れをとるメカニズムや、寝ても疲れがとれないときの対処法などを教えていただきました。
Contents 目次
成長ホルモンが欠かせない⁉ 睡眠で体がリカバリーされるメカニズムとは?
睡眠で体がリカバリーされるには、大きく分けて2つのポイントがあるといいます。
「ひとつは、体のクールダウンです。体温を下げて深い眠りにつくことで、日中に疲れた体を休ませます。もうひとつは、体のメンテナンスです。その役割を担っているのが、成長ホルモンです。『成長』という言葉がついているのは、成長期の“身長を伸ばすホルモン”だからですが、大人にとってもとても重要なホルモンです。その働きは、筋肉や骨の成長を促すだけでなく、日中に傷ついた細胞の修復や再生、疲労回復、脂肪の燃焼、紫外線による皮膚のダメージの回復のほか、免疫機能や認知機能にも作用するのです」(坪田先生/以下同)
この成長ホルモンの分泌は思春期をピークに、20代前半から急激に減少するといわれています。「そのため、年をとるにつれ、疲れがとれにくく、60歳以上になると深い睡眠自体がとりにくくなってしまいます。たくさん寝たはずなのに疲れがとれていないというのは、成長ホルモンの減少が大きく影響していると考えられます」
成長ホルモンが減っても良質な睡眠でリカバリーは可能
とはいえ、成長ホルモンが減っても、睡眠の質を高めることは可能だとか。
「成長ホルモンは、睡眠中に多く分泌され、とくに最初の深い眠りのときに大量に放出されます。人の睡眠は、人によってばらつきはありますが、約90分周期で“脳の眠り”のノンレム睡眠と、“体の眠り”のレム睡眠をくり返します。このくり返しの2回分、約180分の睡眠中に深く寝ることがとても重要なのです。というのも、このときに成長ホルモンが大量に分泌されるからです」
では、入眠の180分に深く眠るにはどうすれないいのでしょう?
「それには、寝室の環境と生活習慣の改善がポイントとなります。寝室の環境とは、夕食後は部屋を暗くして体をお休みモードにし、エアコンの設定は、夏は25〜28度、冬は15~18度。寝床から出たときに衣類を1枚はおってちょうどいいくらいの温度が目安です。また、寝床の中の環境は、温度33度・湿度50%ほどが理想です。
年齢を重ねるとつい寝具を増やして温かくしたくなりますが、寝床内と外の温度差が大きいと、血圧が上がりやすくなるので要注意です。また、ジャージなどの部屋着ではなく、パジャマで寝るようにしましょう。吸水性・速乾性・通気性が高く、柔軟性があって体をしめつけないパジャマで寝ることで、リラックスができて寝つきが早くなり、中途覚醒の回数も15%減ったという研究結果もあります。ぜひ着心地のいいパジャマで寝るようにしてください」
一方、生活習慣の改善とはどんなことをすればいいのでしょう?
「まず、睡眠時間は一般的に6〜8時間は確保してほしいです。とくに若い人は8時間近く、高齢者は6時間くらいといわれています。そして、寝入りに深い眠りをとるために、眠る1〜2時間前に入浴し、寝る前の1時間前くらいからスマホなどのブルーライトを見ないようにしましょう。ブルーライトの光刺激を浴びることで、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌低下が起こり、体内時計を狂わせてしまうので、眠れなくなってしまいます。それから、平日は同じ時間に起きるようにし、布団から出たらすぐに太陽の光を浴びることです。明るい光を見ることで、睡眠ホルモンのメラトニンが減るので、眠気がとれやすくなります。またこうした習慣で、夜になると眠りやすくなるので、ぜひ今日から習慣化しましょう」
起きたときに感じる体の疲れをとる解決策とは?
朝、起きたときに体の疲れを感じたときに、おすすめの解決策はあるのでしょうか?
「睡眠の質が悪くて体の疲れがとれない場合は、明るい太陽の光を浴びて、カフェインをとって眠気を減らすほか、体を動かして血行を高める方法があります。最初は体が重いでしょうが、ムリにでも動かしていると体が軽くなってくるので、だまされたと思ってやってみてください。もうひとつ、おすすめするのは二度寝です。二度寝は1回20分までなら浅い眠りで目覚められるので、疲労感が軽減されるのです」
このほか、自分の睡眠リズムを知るために、睡眠トラッキングもおすすめだとか。
「疲労感とひと言にいっても、本当に体が疲れている場合と、頭がぼーっとして疲れていると思っている場合があります。睡眠が深い、ノンレム睡眠のときに目覚ましなどで起きてしまうと、頭がぼーっとして目覚めが悪い状態になってしまいます。そこで、すっきり目覚められるレム睡眠で起きられるように、自分の睡眠リズムを知りましょう。一般的に90分といわれるサイクルが、人によっては80分だったり、110分だったりするので、そういったことを知るために、睡眠管理ができるスマートウォッチや、スマホのアプリなどを利用してみてください。
最後に、お手軽に睡眠の質を高められる2つのサプリメントを教えていただきました。
「アミノ酸の『グリシン』は、入眠をサポートし、ノンレム睡眠の時間を増加させる効果があります。ノンレム睡眠の時間が増えると、体の休息はいつも以上に進みます。さらに睡眠が深くなるので、成長ホルモンが出やすくなるといわれています。また、アミノ酸の『GABA』には、興奮を抑え、気持ちをリラックスさせる効果があります。睡眠薬はこのGABAの働きを増強しているものなので、寝つきの悪い人におすすめです」。
どちらもサプリメントとして手軽に入手できるので、睡眠の質を高めたい人は試してみては。
次回は、睡眠が心(メンタル)の疲れをとるメカニズムや対処法についてお届けします!
取材・文/奥沢ナツ
ヘルスケアトレンドの詳細は下記をご覧ください。
*FYTTEヘルスケアトレンド2023特設サイト:https://fytte.jp/trend2023/