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CATEGORY : ヘルスケア |女性ホルモン

Vol.3 性的同意、大人の性教育…など性についての疑問を北沢さんに聞いてみた【「性を語る会」代表 北沢杏子さんインタビュー】

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Vol.3 性的同意、大人の性教育…など性についての疑問を北沢さんに聞いてみた【「性を語る会」代表北沢杏子さんインタビュー】

FYTTEでは、2024年のヘルスケアトレンドとしてフェムテックの知識や実践を重ねるフェム・トレーニング、「みんなのフェムトレ」を提唱。「フェムテック」の原点でもある、自分の体を知る学びの機会のひとつに「性教育」があると考えています。「性教育は人権教育」のスローガンのもと約60年にもわたり日本で性教育の普及のために尽力してきた、性教育実践者の北沢杏子さんに、大人女子が抱える性の悩みや疑問についてお答えいただきました。

監修 : 北沢 杏子

性教育実践者、「性を語る会」代表、アーニ出版会長。日本放送作家協会会員として円谷プロダクションの『ウルトラQ』といった特撮作品をはじめ、演劇、ミュージカル、ドラマなどの脚本を手掛ける。1965年、法務省の依頼で少年院、特に女子の取材(売春・妊娠・中絶・性感染症で入所)の取材がきっかけで性教育の必要性を感じ、以後、性教育に関する言論、出版活動を行うようになる。性教育の学習教材なども数多く手がけ、出産シーンを撮影した映像教材『ドキュメント出産』は教育映像祭 優秀作品賞を受賞。1988年、アーニ出版から発刊された絵本『なぜなのママ?-3歳からの性教育絵本-』(作・北沢杏子/絵・やなせたかし)が、2021年「復刊ドットコム」から再発刊されたことが近年話題に。年齢94歳。
性を語る会「性を語る会」トップページ (alpha-prm.jp)
アーニ出版Ahni Publishing House

Contents 目次

Q:性行為の誘いを断りにくい。パートナーだととくに言いづらいです
A:女性に求められるのは「性的自立」。嫌なときは「NO」というのはあなたの権利です

性的行為のとき「ムードを壊したくない」、「結婚しているから応じたほうがいいのかな…」などの理由で「今日はしたくない」「避妊して」のひと言が言えない女性もいます。これは「女性がこうあるべきという固定観念、すなわちジェンダーバイアスがからんだ可能性がある」と北沢さん。しかし「望まない性行為、それによる妊娠で傷つくのは女性です」(北沢さん)

「自分のプライベートゾーン(ひとに見られたり見せられたり、さわったりさわられたりしてはいけないところ)を守るのは、自分の基本的人権を守ること。だから嫌なことは「イヤ!」って言っていいんです」(北沢さん)

男性に言われたからと、流されるようでは「性的自立」をしていないと北沢さんは語ります。「1人の人間として自立していないと、自分の立場が弱いものになってしまいます」(北沢さん)。
「自立には経済的自立、精神的自立、生活的自立、性的自立がありますが、このうち性的自立とは性交について主体的に考え、自ら選択し、責任をもつことを意味します」(北沢さん)

嫌われたら女性としての価値がなくなってしまう、彼と結婚できないんじゃないか、応じないと夫に離婚されてしまうかも…と思うのは性的自立をしていない可能性があります。
「嫌なことはイヤ!と断る勇気を。性行為をしたいのか、したくないのか、自己決定権はすべて自分にあるのです」(北沢さん)

プライベートゾーンを学ぶ教材。「わたしのからだはわたしのもの」。あなたは、「あなたのからだの権利」を持っているのです。
北沢杏子さん作のプライベートゾーンを学ぶ教材。「わたしのからだはわたしのもの」。あなたは、「あなたのからだの権利」を持っているのです。

 

Q:月経やPMSのつらさをパートナーがなかなか分かってくれない
A:パートナーと一緒に性について学びましょう

「今からでも遅くないから、大人も性教育を学ぶべきだと思います。性教育を学び、男女で体のしくみの違いをまずは知る。お互いの違いを知れば、お互いを思いやる関係性を作ることができます」(北沢さん)。Vol.2でもお伝えしたように「男女一緒に性教育を学ぶと、クラスの雰囲気が変わり、思いやりの行動が見られるようになるんです。男子が『月経って大変だな』と、女子のかわりに給食を運んであげるようになったり」「女子が『夢精って大変ね』とパンツは水で洗ってから洗濯機へ」と教えたりして…と。これは大人でも同じだと北沢さんは語ります。

今のフェムテックブームは、女性の今後にとってプラスになるはず

今回、貴重なお話を聞かせてくださった北沢さんに、いま話題のフェムテックについて考えを伺いました。
「ニューヨークに行ったときに、バイセクシャルの人にセルフプレジャーグッズを見せてもらいました。これらを使うことは、全然恥ずかしいことではありません。自分の体、性に対して興味を持つのは、人としてあたり前のこと。自分の体は自分のもの―それが基本的人権なんですから」(北沢さん)

「私は『性交』のイメージを、いいものに変えていきたい」という北沢さん。
強い信念のもと聞かせてくれた看護学生を対象にした性教育のセミナーでは、最初は性交や妊娠について「親とは話せない」と性の話題に対して消極的だった学生たちが、最後には「私が親になったら性について子どもと話したい」「性交は愛があっての行為。将来、子どもにはパパとママが愛し合ってあなたが生まれてきたんだよと伝えたい」と前向きになり、「性」に対して大きく意識が変わっていたのが印象的でした。

自分が心と体の性教育を学んでいれば、パートナーとよりよい関係が築け、ライフステージごとに訪れる体の変化に柔軟に対応できるのではないでしょうか。また、性教育は、将来自分が親になったとき、思春期の子どもに正しい知識を教えたり、悩みを聞いてあげたり、例えば10代で妊娠し困った子どもに寄り添える助けにもなります。

性教育は、自分が親になったときに役立つ知識。1972年発刊当初、賛否両論を呼び話題になった3歳から性教育を学べる日本最初の性教育絵本『なぜなのママ?』(絵・やなせたかし)など子供向けの本も北沢さんが手掛けています。
性教育は、自分が親になったときに役立つ知識。1972年発刊当初、賛否両論を呼び話題になった3歳から性教育を学べる日本最初の性教育絵本『なぜなのママ?』(絵・やなせたかし)など子供向けの本も北沢さんが手掛けています。

 

『なぜなのママ?』が発刊当時、新聞にも“評価は真っ二つ”とセンセーショナルに取り上げられました。
『なぜなのママ?』が発刊当時、新聞にも“評価は真っ二つ”とセンセーショナルに取り上げられました。

 

フェムテックのブームで女性のヘルスケアについて意識が高まりつつある中、様々な場所から性搾取・性暴力の問題が明るみになり、性について考える機会も増えました。隠されていた「性」の問題が「見える化」してきています。

日本の性教育実践者として半世紀以上も活動を続けている北沢杏子さんの話を3回にわたってお届けしました。北沢さんは様々な角度から性差による問題をあぶりだし、性教育を通して人間の性的自立を促し、基本的人権を守る必要性を訴えてきました。性教育は「性=生」を知る人権教育。性を学ぶことは、「生」そのものを考えることにつながるのではないでしょうか。

 

FYTTEが提唱する「フェムトレ」は、私たち女性がよりよく生きるために、自分の体や性の知識と学びを重ねるトレーニングです。性的自立とは何か、避妊や妊娠、出産、妊活をどう考えるか。北沢さんのお話をきっかけに自身の行動を振り返ったり、パートナーと考えたりしてみてはいかがでしょうか。

 

撮影/我妻慶一
取材・文/平川 恵

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