
健康で長生きしている人たちはどんな生活を送り、どんな食事をしているのでしょうか? 日本のなかでも有数の健康長寿地域といわれる京都府京丹後市を対象に行われた研究結果をもとに、そのヒントが導き出されました。じつは日本では古くから食されている「豆類」が大注目だというのです。本研究に携わった京都府立医科大学大学院教授・内藤裕二先生ならびに、フジッコの豆事業部・管理栄養士の平田恵梨さんにお話しを伺いました。
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京丹後長寿コホート研究でわかった健康長寿の秘訣とは?
京都府の北部にある京丹後市。海、山、畑…自然からの多様な食材が豊かなこの地域には、じつは100歳以上の「百寿者」と呼ばれる人たちが多く暮らしています。その比率は全国平均の約3倍! しかも単に年齢を重ねて長生きしているわけではなく、元気に生活している理想的な長寿の姿なのです。
そこで、内藤先生たちの京都府立医科大学の研究チームは2017年から「京丹後長寿コホート研究」をスタート。丹後地域に住む65歳以上の人たちを対象に毎年、全身の健康状態を調べる長寿健診、食事調査などを実施しました。数年にわたり蓄積したビッグデータの分析、腸内細菌の遺伝子解析などから健康長寿の秘訣を科学的に解明するプロジェクトを進めています。この研究が終わるのは2050年(予定)のため、まだ追跡の途中ではあるものの、健康長寿の秘訣が少しずつわかってきたところなのです。
要介護の状態にならず、健康寿命を延ばすためには早めのフレイル対策が重要です。じつは丹後地域の65歳以上の人たちは、サルコペニア(加齢による筋肉量の減少、筋力の低下)やフレイル(健康な状態と要介護状態の中間の段階)の人が少なく、血管年齢も若いそう。さらに糖尿病などの生活習慣病や大腸がん、認知症の人も少ないというから驚きです。そんな元気な京丹後の人たちが食べているもの、とても気になりますよね。
食事調査によると、
・大豆、全粒穀物、根菜、いも、果物、きのこ、海藻など多様な食材から食物繊維をとっていること
・たんぱく源として肉はほとんど食べず、魚介類、豆・大豆製品をよく食べていること
・間食はあまりせず、1日3食、規則正しく食べていること
などがわかってきており、それらが、腸内フローラの多様性にもつながり、健康長寿の食事の秘訣になっているのかもしれない、と内藤先生たちは考えています。
豆商品を多く取り扱うフジッコでは、この食事内容に注目し、なかでもとくに豆類と健康長寿の関係について内藤先生たちとの共同研究を行いました(*1)。その結果、豆類がフレイルのリスクを低下させることがわかったそうです。
(*1)京丹後市在住の男女あわせて高齢者786名(年齢中央値72歳)を対象
豆類を1日60g以上とるとフレイルリスクが3分の2に
その研究によると、男女ともにフレイル群と比較して健常群は、豆類および緑黄色野菜以外の野菜(根菜や海藻、きのこを含む)の摂取量が有意に高いことがわかったそう。特に男性においては、豆類の摂取量増加とフレイルリスクの低下に有意な関連が認められましたが、男女合わせた全体でも、フレイルのリスクが2/3に低下しています。男性においては、1日60g以上摂取しているグループは、フレイルリスクが約1/5に低下しています。
ところで、そもそも豆類にはどんな栄養が含まれているのでしょうか。管理栄養士の平田さんによると、「豆類からは植物性たんぱく質と食物繊維がとれる点が栄養面で、非常にすぐれている」と言います。たんぱく質は三大栄養素のひとつで、筋肉をはじめ、臓器、血液、皮ふ、髪など体のあらゆる組織を作る材料になります。そのため積極的にとりたい栄養素ですが、どうしてもたんぱく質というと、肉や魚、卵などの動物性に偏りがちに。そのため豆類や大豆製品などの植物性たんぱく質をもっと意識してとってほしいそう。さらに注目すべき点が食物繊維の種類です。
「大豆や小豆など一部の豆類に含まれる発酵性食物繊維は、腸内で善玉菌のエサとなり、発酵することで善玉菌の増殖をサポートする働きがあることから、腸内環境の改善に期待ができると、今話題のキーワードになっています」(平田さん)
今、大注目の発酵性食物繊維を含む豆類の摂取については、さらに下記のようなデータもあります(*2)。
健康な20~40代女性14名を対象に2週間、蒸し豆70gを毎日食べてもらい、腸内環境の変化を調べたところ、便通や体調の変化を感じたという声が多くあったとのこと。
蒸し豆を食べてから便通がよくなったと感じた人は14人中13人、体調変化を感じた人は14人中12人にのぼります。
*2)フジッコと内藤裕二先生との研究による
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手軽に豆類をとるためにおすすめの方法は?
豆類を毎日の食事にとり入れるといい、ということはわかったものの、実際にはどんな風に食べればいいのかわからない、豆料理は手間がかかりそう、という声も聞こえてきます。そこで平田さんに、誰でも簡単に豆を摂取できる食べ方を教えていただきました。
「調理いらずでそのまま食べられる蒸し豆や煮豆を使うといいと思います。いつもの朝食にプラスするだけで栄養価も見た目も簡単にアップするので、一石二鳥です。とっても簡単なので、ぜひ試してみてください」
平田さんおすすめのプラスお豆の朝食レシピ
サラダにトッピングするだけ!「豆とツナのサラダ」
レタス、トマト、玉ねぎなどお好みの野菜とツナで作る定番のサラダに蒸し豆をトッピング。野菜の栄養にたんぱく質が加わってバランスアップ!
食物繊維もとれて満足感アップ!「黒豆ヨーグルト」
プレーンヨーグルト(無糖)に黒豆の煮豆を加えればできあがり。動物性と植物性のたんぱく質が一緒にとれるお得な一品。ヨーグルトだけより食べ応えもあり、豆の食物繊維がとれるのも◎。豆の甘さが気になる人はシンプルな蒸し黒豆をトッピングする方法でも。
たんぱく質の栄養が加わってバランスよく!「黒豆おにぎり」
お好みの具材(野沢菜、赤しそ、たくあんなど)と蒸し黒豆をあわせておにぎりに。糖質メインのおにぎりにたんぱく質が加わって、一皿でも栄養バランスが整います。蒸し黒豆ではなく、蒸し大豆を使ってもOK。おかかしょうゆなどとあわせるのもおすすめです。
こんなレシピならいつもの朝食に、ほんのひと手間加えるだけで栄養も、お腹も見た目も満足度が上がりますね。スーパーなどで手軽に買えるものばかりなので、ぜひ一度手にとってみてください。
おすすめレシピに活用できる豆商品セレクト
(写真左から)北海道産の大豆をシンプルに調理した「蒸し大豆」、大豆・青えんどう・黒豆・ひよこ豆・赤いんげんの5種が入った「蒸しサラダ豆」、ポリフェノールが豊富な北海道産の黒豆を蒸した「蒸し黒豆」は、すべてそのまま食べられ、たんぱく質や食物繊維、大豆イソフラボン、ポリフェノールなどがとれる栄養価も魅力。(右)ヨーグルトにトッピングした黒豆は、ほんのり甘く煮た黒豆「おまめさん 北海道 黒豆」。スーパーなどの豆コーナーにはたくさんの豆商品が展開されています。特に「蒸し豆」シリーズは、封を開けるだけでどんな料理にもそのまま簡単に使えるので便利です。ぜひストックして、こまめに豆をトッピングする習慣をつけられるといいですね。
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<監修>
内藤裕二先生
京都府立医科大学大学院医学研究科 生体免疫栄養学講座教授。京都府立医科大学卒業。長年、消化器の医師として臨床の現場に立ち、さらに研究者として腸内フローラと食事、生活習慣病などの病気、アンチエイジング(抗加齢)の関連などについて最先端の研究を行っている。講演やメディア出演でも活躍。専門は、消化器病学、消化器内視鏡学、抗加齢医学、腸内細菌叢。著書に『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP)など多数。2024年、福井県小浜市主催の第23回『杉田玄白賞』を受賞。
内藤先生の研究をもとに、元気に長生きしている人たちが食べている、腸が喜ぶ食事術を毎日の食事に活用しやすい実例とともに紹介した一冊。『100歳腸寿食』(ワン・パブリッシング)も絶賛発売中!
平田恵梨さん
フジッコ株式会社コア事業本部豆おかず事業部・管理栄養士。「Everyday Beans!」をテーマに、豆を毎日の食事にプラスすることでお客様に健康的で楽しい食生活を送っていただくべく、商品企画などに取り組んでいます。
「Everyday Beans!」Instagramアカウントではレシピや豆知識などの情報を発信中!
【公式】Everyday Beans! byフジッコ(@everydaybeans_fujicco)
取材・文/FYTTE編集部