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アルコール・タバコ・睡眠不足…骨を壊す生活習慣に要注意! 骨密度低下のスピードと怖い骨折の連鎖とは?

女性ホルモンが低下すると起こる、さまざまな不調、骨密度の低下もそのひとつ。「私は大丈夫…」と思っていても、自覚症状がないのが骨の老化(骨密度の低下)。整形外科医の矢吹 有里(やぶき ゆり)先生に女性の骨の健康「骨活」について伺いました。今回は「骨の老化と変形、骨の再生プロセス」や「男女間の違い」についてです。
Contents 目次
骨の老化や変形、どんなふうに進行するの? 骨の再生メカニズム
「まだ大丈夫…」と思っていても老化と共に体はいろんな不具合が出てきます。あまり考えにくい骨の健康ですが、骨の老化や変形はどのようなプロセスで進行するのでしょうか。骨の再生機能についても教えてください。
「骨の変形や骨折が起こりやすくなるのは、骨の新陳代謝(リモデリング)がうまくいかなくなるからです。通常、骨は古い部分を壊して新しい骨に入れ替わるサイクルをくり返していますが、更年期以降は女性ホルモンの減少により壊すスピードが速まり、作るスピードが追いつかなくなって骨がスカスカになってしまいます。
さらに老年期になると、逆に代謝の回転そのものが遅くなり、古い骨も壊せず、新しい骨も作れない“停滞した状態”になってしまいます。すると骨密度が低いまま保たれ、変形や骨折のリスクが大きくなります」(矢吹先生、以下同略)
治療後に、骨密度が回復して骨折してしまった場合、骨の代謝はされるのでしょうか。
「そうですね。骨折をした場合には、骨を修復する働きがゆっくりと起こりますが、骨粗しょう症そのものが治るわけではありません。とくに多い骨折部位は、手をついたときの手首、肩の骨(上腕骨)、背骨の圧迫骨折、そして太もものつけ根(大腿骨頸部骨折)です。このうち寝たきりにつながりやすいのが背骨と大腿骨の骨折です。背骨や大腿骨の骨折ってものすごく痛いのです。
大腿骨の骨折はほとんどが手術となり、その後の生活の質を大きく下げたり、死亡率が高まったりする危険があります。また、一度骨折した人は“骨折の連鎖”といって、次の骨折を起こしやすくなります。
たとえば、片方の大腿骨を骨折した人は、1年以内に反対側を骨折するリスクが2倍以上になるといわれています。こうした背景から、骨粗しょう症による骨折を経験した人は、必ず継続的な治療を受けることがとても大切です」
どこかの骨が折れていると違うところでカバーしようとするので、別の部位に負担がかかり、その状態で転んだりしたら、悪循環に陥りそうです…。気をつけたいですね。
骨の健康、男女間の違いは? 男性は、ホルモンの影響は受けるの?
続いては、男性の骨の健康について教えてください。男性の骨は体格がまったく違うので女性よりは丈夫だとは思うのですが、男性はホルモンの影響を受けるのでしょうか?
「男性はもともと骨密度自体が高いため、女性のように急激に骨量が減ることはありません。ただし、生活習慣の影響を受けやすく、とくにアルコールやタバコは骨の質を劣化させ、骨折リスクを高める大きな要因です。
男性ホルモンのテストステロンは加齢と共に減少し、そこから作られる女性ホルモンのエストロゲンも徐々に低下します。ただし、閉経後にエストロゲンが急激に失われる女性と違い、男性ではゆるやかに減っていくため、骨粗しょう症の発症も高齢期に多いのが特徴です」
アルコールとタバコが骨に影響するのはなぜでしょうか?
「骨の健康には骨密度(量)と骨質(質)の両方が大切で、その比率はおよそ7:3といわれます。アルコールやタバコによる糖化(AGEsの蓄積)は骨質を劣化させ、骨密度がそれほど悪くなくても骨折する人がいます。AGEsは揚げものやファストフード、糖質過多などの食生活とも関係しています」
骨活には運動や食事が大切と教えていただいたので納得です。では、ストレスは影響しますか?
「ストレス自体が直接骨を壊すわけではありませんが、睡眠を妨げることで影響が出ます。睡眠中には骨から分泌される“オステオカルシン”というホルモンが骨芽細胞を刺激して骨を作りますが、睡眠の質が悪いとその働きが低下してしまいます。さらに、ストレスで分泌される“コルチゾール”が過剰になると骨密度を下げるリスクが高まります。
つまり、男性も骨の健康には食生活・運動・禁煙・節酒、そして良質な睡眠が欠かせないのです」
ありがとうございました! とても勉強になりました。
続いては、「骨の不調・部位別」「骨活強化のための習慣(セルフケア)」について教えていただきます!
取材・文/FYTTE編集部