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なぜ同じ環境でも感染する人・感染しない人がいる? 医師が解説する免疫システムの基本
寒い季節や季節の変わり目になるとよく聞く「免疫力を高めよう」という言葉。でも、免疫はただ強ければいいものなのでしょうか? じつは、免疫にとって本当に大切なのは“強さ”ではなく、過不足なく働く「バランス」。免疫が過剰でも不足しても、私たちの体には不調が起こります。感染症にかかる人・かからない人の違いや、季節によって体調を崩しやすくなる理由も、免疫の仕組みを知ることで見えてきます。今回は医学博士で総合内科専門医、腎臓内科専門医葉子クリニック院長の内山葉子先生に、「免疫システムの基本」と、いま注目される「免疫レジリエンス」について教えてもらいました。
Contents 目次
免疫ってなに? 知っておきたい「免疫システムの基本」

とくに寒い季節や季節の変わり目になると「免疫力を高めよう」「免疫を整えよう」という意識が高くなると思うのですが、免疫とは何か。免疫の基本やシステムについて教えてください。
「免疫とは、ひと言で言うと“自分と自分じゃないもの”を見分ける私たちの体のシステムです。
私たちの体は、ウイルス、細菌、カビ、毒素といった異物を排除しようとしますが、一方で食べものの栄養や呼吸のための酸素など、体内に受け入れなければならない異物も存在します。そのため、免疫はただ高ければよいというわけではなく、異物を許容する“寛容”さとのバランスが非常に重要です。
免疫が過剰に反応するとアレルギーや自己免疫疾患(リウマチなど)を引き起こし、逆に働きが鈍すぎると感染症にかかりやすくなったり、がんの原因になったりします。どのような状況にも柔軟に対応できるバランスの状態を“免疫レジリエンス”と呼びます。
免疫の仕組みは、体全体のネットワークで成り立っています。大きく分けて『皮ふ・粘膜免疫』『自然免疫』『獲得免疫』の3つの防衛ラインがあります。
1.皮ふ・粘膜免疫:鼻や口の粘膜、腸内環境など、異物の侵入を物理的にブロックする最初の砦です。
2.自然免疫:異物が侵入した際、マクロファージやNK細胞などが真っ先にかけつけて攻撃する反応です。
3.獲得免疫:一度侵入した病原体の情報を記憶し、次に同じものが来たときに効率よく抗体を作って対応するシステムです。
これらの細胞は、まるでオーケストラのように脳や腸からの指令を受けて調和を保ちながら働いています」(内山先生、以下同略)
どうして、感染する人と、感染しない人がいるの?

人はそれぞれ違うし、住んでいる環境や年代でも違ってくると思うのですが、まったく同じ条件・環境でウイルスに感染する人と、感染しない人がいるのはなぜでしょうか?
「そうですね。外出しているか、していないかで変わってきますが、まったく同じ条件・環境にいても感染の有無や症状に差が出るのは、その人が持つ『免疫調整力』や『バリア機能』の違いによるものです。これは当然、年齢でも変わってきます。赤ちゃんのころから母親の母乳で育つことで抗体を持ち、だんだんと自分で免疫を作る力がついてきて、10代半ばでいちばん元気な状態になります。高齢になれば低下していきます。
具体的にはまず、物理的バリアの差があります。
例えば、口呼吸の人は感染源が直接のどや肺に入りますが、鼻呼吸の人は鼻腔でキャッチされ、加湿・加温されることでブロック機能が働きます。
次に、粘膜の丈夫さです。
栄養状態が悪く粘膜が薄かったり、唾液などの分泌液(IgA抗体)が少なかったりすると、ウイルスが侵入しやすくなります。
そして、体内の代謝状態です。
体内に慢性的な炎症があったり、腸内環境が悪かったりすると、免疫システムがその対応に追われ、新しい感染源を阻害する力が弱まってしまいます」
季節の影響を受けるのはなぜか?
最近は温暖化などの影響により、日本の季節が四季から二季と言われるようになっていますが、人は季節の影響を受けやすく、とくに季節の変わり目に体調を崩す人が多いです。どうして季節の影響を受けるのでしょうか?
「私たちは地球や宇宙という自然環境の中で生きており、気圧、温度、湿度の変化と体は常に連動しているからです。だから、重力があり、私たちは重力に逆らって立つことができるんです。
例えば、心臓から上に血液を送らないと脳に酸素が届きませんし、夜は横になって寝ます。夜に立って仕事をすると交感神経が高くなり、体にとっては大きな負担になります。温度変化や気圧もそうです。
気圧が高いときは体に圧がかかり(サポーターをしているような状態)動きやすいのですが、低気圧ではそのサポーターがはずれたようになり、体が重く感じたり痛みが出やすくなったりします。季節の変わり目(土用)や朝晩の寒暖差が大きい時期は、体温や血圧を一定に保とうとして自律神経や免疫がフル稼働するため、負担がかかりやすくなります。冬は日照時間が減ることでビタミンD活性が低下し、寒さによる自律神経の乱れも加わって感染症のリスクが高まります。
自律神経や血圧、脈、血糖値も一定に調整しているのが私たちの体です。この調整を自力で行うのは難しいので、洋服を着たり、暖房の力を借りたり、薬膳や旬の食材の栄養をとり助けてもらうことが大切です」
次回は、「免疫は進化するのか。話題の腸管免疫」「免疫の対策」についてお届けします。

参考著書:『免疫力を整える薬膳酵素ごはん』~医師が教えるアンチエイジングレシピ~(ユサブル)
本文イラスト:本書より
【監修者】内山 葉子(うちやま ようこ)先生
関西医科大学卒業。大学病院・総合病院で腎臓内科・循環器・内分泌を専門に臨床・研究を行った後、福岡県北九州市で『葉子クリニック』を開設、院長を務める。医学博士、総合内科専門医、腎臓内科専門医。全人的な医療に基づき、自然医療や漢方・機能性食品などの補完・代替医療と西洋医学、心のケアなどを統合的に行い、さまざまな分野の難治性の疾患の診療を行う。
葉子クリニック:http://www.yoko-clinic.net/
取材・文/FYTTE編集部



