日々の腸の状態を雄弁に語りかける「便」は、健康管理に欠かせない存在。よい「便」とはどんな便? 腸の具合を知るために、どんな点に気をつけて「便」をチェックすればよいのでしょう。「腸活 基本のキ」第3回では、健康な便のチェック法や要注意の便について、おおたけ消化器内科クリニック院長の大竹真一郎先生に伺いました。
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便は「食べないから出ない」わけではない
理想的な便の構成は、約80%が水分、約20%が固形成分。水分とは、胆汁や脾液などの消化液、酵素、食べ物を分解する過程で生じた脂肪酸や乳酸、炭酸ガスなどです。
固形成分のうち、消化されなかった食物繊維といった食べ物のカスは3分の1程度。残りは生きている腸内細菌と、その死骸。そして、はがれ落ちた小腸の内壁です。
「つまり、便の中に含まれる食事由来の成分は1割にも満たないということです。なので『食べてないから便が出ない』ということはなく、たとえ断食をして食事を抜いても、また手術等で点滴しかしていない場合でも、便通はあります」(大竹先生)
自分の便の形とニオイをチェックしてますか?
自分の便を確認することで、腸の状態を知ることができます。その基準となるのが「ブリストルスケール」。「ブリストルスケール」はイギリスで誕生した便の世界基準で、水分量によって7種類に便を分類しています。
「ブリストルケール」では、タイプ1と2が便秘。タイプ3〜5が正常の便、タイプ6と7が下痢に分類されます。理想的な便は、タイプ4です。
合わせてチェックしたいのが、便のニオイ。便の臭気は、腸内細菌の悪玉菌が肉類などに含まれるタンパク質を分解する際に、インドールとスカトールという物質を発生させて起こります。腸内環境が悪化し、悪玉菌が増殖すると、ニオイ物質の濃度が高くなり、匂いがキツくなります。
よい便について、もっと知りたい!
理想的な「よい便」は、ブルストルケールでの正常な便を基準に加えて、さらに多くの要素が含まれます。
「よい便の色は、黄褐色です。この色は、十二指腸に流れこむ胆汁が影響していて、腸の中に長く便が留まっていると胆汁色素が濃くなり、緑色っぽい便になります。ですから緑色っぽい便が出ても、それほど心配する必要はありません」(大竹先生)
正常な便の回数は、3日に1回〜1日3回まで。バナナ状の便が2本程度、合計200gほどが毎日出ていると、よい便といえます。便の重さは、排便前の体重から排便後の体重を引くことで計測できます。排便の前後に、体重計に乗って測ってみてださい。
また排便時、踏ん張り続けて出すのではなく、するりと出るのが理想。ニオイはキツくなく、トイレットペーパーでふいたときに、ペーパーに便が残らないのもポイントです。
こんな便には要注意!
気をつけたいのは、細い便。腸に腫瘍などができ、腸内が狭くなると、便が細くなる可能性があるので、細い便が続く場合は、専門医に相談しましょう。
また、赤や白、黒い便が出たときも要注意です。鮮血のような真っ赤な血が便についた出た場合は痔などが考えられます。便全体が赤い場合は、O157などの出血性大腸炎や大腸がんの可能性もあるので放置しないことが大事。
白い便は、胆汁が影響している可能性があります。脂肪分が多い食事が続いた場合は脂肪を分解するために胆汁が多く分配されて白い便が出ることもありますが、胆石やがんの可能性も否定できないので、専門医を受診するのが安心です。
ドロリとしたタール状の黒い便は、十二指腸や胃潰瘍、胃がんなどからの出血が疑われるため、すぐに受診する必要があります。
腸内環境を映すとともに、毎日の健康チェックにも有効な便。トイレですぐに流さず、色や形、匂いをチェックすることが、健康のヒケツといえそうです。
次回は、女性に悩みの多い「便秘」について、大竹先生に詳しく教えてもらいます。
取材・文/野口美奈子 イラスト/黒川ゆかり