日本人の4人に一人が患う腰痛。しかし、そのうちおよそ85%が原因不明とされています。一度かかると慢性化しやすいのも腰痛の厄介なところ。そんな腰痛を治すにはまず原因を正確につかむことから。今回は、専門家と協力しながら腰痛について研究する日本腰痛研究開発機構の『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(アスコム)から、腰痛の原因についてまとめていきます。
Contents 目次
原因不明の腰痛にもはっきりした原因がある
一度発症すると慢性化しやすく、完治が難しいといわれる腰痛。
長い間原因がわからず、どうやっても治らないケースは多々ありました。しかし治療法の研究は日進月歩で進んでおり、これまで治らなかった腰痛が新たなアプローチによって改善される例も、今では数多く報告されています。
特に近年になって新しいアプローチ方法が次々登場しているのです。
大前提として、どんな腰痛であっても、整形外科で診てもらうことが第一です。
腰痛には医学的に原因がはっきりしているものと、そうでないものがあります。
医学的に原因がわかるというのは、例えば骨折していたり、椎間板ヘルニアが発症していたりする場合の腰痛です。
これらについては、正しく医者の診断を受けて、しっかりと治療しなければなりません。
それ以外の、医者がはっきりとした原因を断定できない腰痛の原因を探っていきましょう。
具体的には以下の4つの原因が考えられます。
腰痛の原因となる4つの問題
(1)生活習慣の積み重ねが腰痛の原因となる
生活習慣というのは、食事や睡眠や仕事、歩き方や座り方、運動習慣などをひっくるめたすべてを含みます。これらのこまごましたこと、ひとつひとつの長年の蓄積が腰痛の原因の一つとなります。
マッサージなどで一時的に痛みが緩和することはあっても、悪い生活習慣を続けていれば、腰への負担が直接蓄積していき、状態は徐々に悪化してしまいます。このケースでは、腰に悪い生活習慣を見直すことが非常に重要です。
(2)慢性腰痛の原因は「腰以外の体の硬さ」にある
「腰以外の硬さ」とは具体的に何かというと、足首や胸椎、股関節など、腰以外の部位の硬さのこと。
人の体は各部位が複数の関節によって密接につながり、すべてが連動して初めて機能します。その理論をよく理解せずにストレッチなどをすると、体の各部位が正常に作動せず、反対に腰に負荷をかける場合があるので注意が必要です。
くり返し再発する腰痛に悩んでいる人も、もしかすると足首や股関節の硬さを解消することで、腰への負担を軽減し、痛みのない毎日を取り戻せるかもしれません。
(3)痛みを理解できていないから痛い
自分の感じている痛みが何をきっかけに、どんなときに、どのように生じるかを把握できていない人が少なくありません。これが「何をしても治らない慢性痛」のひとつの原因ではないかと考えています。
痛みを理解できれば、痛みを軽減できる可能性があるのです。
(4)慢性腰痛は「脳の不調」に原因がある
腰に異常がないのに、痛みが出る場合、「脳の不調」(脳の機能不全や脳の勘違い)が痛みの原因である可能性があります。
脳の不調とは具体的にふたつあります。
ひとつには「痛みに対して脳が過敏になっている(過敏脳)」状態があります。
もうひとつには「ストレスが体に出てくる(ストレスの身体化)」状態です。
(5)睡眠環境で腰はよくも悪くもなる
慢性的な腰痛に悩んでいる人の中には、朝、起き上がるときに痛みを感じる人が少なくありません。 例えば日中、マッサージを受けたりして腰をケアしているものの、寝て起きるとまた痛む。この場合、寝ている間に腰に余計な負荷がかかってしまっている可能性が考えられます。
睡眠と腰痛は、密接に関係しています。睡眠のとり方が悪いと腰に悪影響があり、また腰の痛みのせいでよく眠れないと、体にさまざまな二次的な被害が起こる可能性もあるのです。
慢性的な腰痛が日常生活に及ぼす悪影響は計り知れません。本書が人生をよりよくするきっかけのひとつになれば幸いです。
文/庄司真紀
著者
日本腰痛研究開発機構著『あなたの腰痛が治らないのは治し方を間違えているから』(アスコム)